絆の軌跡〜導かれし光〜

□その1 再会
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01 ギルド

7001年 夕方 海岸 sideシルク

シード「……よし、[時渡り]成功っと。 シルクさん、ライトさん、着きましたよ。」

目を閉じていた私は、彼の言葉と共にゆっくりと開けた。

ライト「……ここが、そうなの? 見た感じ普通の海岸だけど……。」

私達の目前には、雄大な景色が広がっていた。

……まず、真っ先に目に入るのが、朱い夕日に照らされ、温もりをも感じさせる広大な海原……。

一定のリズムと共に、波が寄せ……退いていく…。

私達の時代ではリゾート地として賑わっていてもおかしくない場所に、私達は降りたった。

どの時代でも変わることのない光景を目撃したライトは、まだ実感が湧かないみたいで、首を傾げながら辺りを見渡した。

シルク「…何も知らなかったらね……。 実感が無いかもしれないけど、今私達がいる年代は西暦7001年……、でいいのよね?」
シード「はい。」
シルク「7001年で、私達にとって5000年後の[未来]に来たのよ。」
シード「その証拠に…、僕が[時渡り]を発動させた時は既に暗かったですよね?」
ライト「ええっと……、うん。」

……そうだったわね。

話しているうちに日が沈んだから、時間的にずれてる事になるわね。

ライトはついさっきまでの記憶を探りながら頷いた。

シード「…でも、見てみてください。 夜だったはずが、今は夕方ですよね?」
ライト「言われてみれば、そうだったような……。 ……なら、そうなのかな?」
シルク「現実的に矛盾してるでしょ?」
ライト「……って事は、わたし達、本当に[未来]に来たんだ……。」

ライト、やっと実感できたみたいね。

彼女はその事にようやく気づき、圧倒された。

シルク「そうよ! ……ところでシードさん? ここは[トレジャータウン]の海岸であってるのよね?」
シード「あってますよ。」

……なら、話が早いわね。

シルク「……なら、急がないといけないわね。」
ライト「{急ぐ}? 急ぐって、どういうこと?」

あそこには門限があるからね。

……確か日没までだったから、あまり余裕はないわね。

シルク「私が前にお世話になった所はいわゆる[門限]があって、それまでに行かないと後々面倒なのよ……。」

見張りはいないし、手続きがたくさんあるしで、何かと手間がかかるのよ……。

私は少しトーンを落として言った。

ライト「……なら、すぐにでも行かないと!」
シルク「そうよ! ……だからシードさん、私達、そろそろいくわね!」
シード「はい。 僕もたまにここに来るので、帰りたくなったらいつでも言ってください。」
シルク「分かったわ!」

……その時は、また頼むわね!

私は彼と、握手を交わした。

シルク「ライト、この時代の事は走りながら言ってもいいかしら?」
ライト「いいよ!」
シルク「なら、ついてきて!」
ライト「うん!」

走りながらだから聞き取りにくくなるかもしれないけど、そこは勘弁してくれるかしら?

私は心の中で平謝りしながら駆けだした。

ライトも、私の問に頷いてくれたわ。

……そして、私は手短にこの時代の事を話しながら、目的の施設………[プクリンのギルド]を目指した。


………


数分後 sideシルク

シルク「………と、大まかにはこんな感じね。」
ライト「……うん、何となく分かったよ。」

ギルドへの長い階段を中腹位まで登ったぐらいに、とりあえず大事なことは伝え終えた。

……まず、{この時代には人間は存在しない}事、それと{この時代のポケモンは二種類に分類される}こと……。……そして、{不思議のダンジョン}のこと……。

細かいことはその時に話すとして、私達の時代と明らかに違うことだけ伝えたわ。

ライトも何とか理解してくれたみたい……。

シルク「まだまだ細かいことがたくさんあるけど、着いたからまた後で話すわ。」
ライト「…じゃあその時にまたお願いね!」
シルク「ええ!」

……そうこうしているうちに、登りきったわね。

私達の目前に、その建物……、

ライト「……これが、そうなの?」

[プクリン]の姿をそのままかたどった、設計者のセンスを疑うテントが姿を現した。

……久しぶりに見ると、やっぱり奇抜なデザインね……。

シルク「そうよ。 あれは入り口にすぎないわ。 本館はここの地下にあるのよ。」
ライト「へぇー。 ……ねえシルク? 道の真ん中にあるあの格子は何なの?」

彼女はそう言いながら、例のモノを目線で指した。

シルク「……いわゆる、簡易的なセキュリティーシステムって言った方がいいかしら? 足形で誰なのかを把握するためのものなのよ。」
ライト「…そうなんだ……。 わたしの場合、足と呼べるものは有るにはあるけど、小さすぎるから苦労するかもしれないね。 ……人間の姿でするわけにはいかないし……。」

……そうよね。

ライトは浮遊する種族……。

歩く必要がないもの…。

シルク「でも、大丈夫よ。 ライトの場合、種族名と名前さえ言えば入れてもらえるわ。」

私はそう付け加えながら、例の格子の上に乗った。

A「ポケモン発見!!」
B「誰の足形!?」
ライト「!!?」

……やっぱり、ビックリするわよね?

ライトは突然の声に驚いて、言葉にならない声をあげた。

A「足形は……[エーフィ]!」
シルク「ホール君、正解よ!」
ホール「えっ!!? もしかしてこの声は……シルクさん!?」
シルク「ええ、そうよ! 久しぶりね!」

……この感じ、久しぶりだわ!

……やっと、7000年代に来れた実感が湧いてきたわ!

私は懐かしさと共に、溌剌とした声で言った。

B「何っ!? シルクさんか!?」
シルク「ええ。 ヘルツさんも、相変わらずね。」

ちょっと、安心したわ。

ヘルツさん、声が大きいからよく聞こえるわね。

へルツ「いっ、今開けに逝きますから!」
シルク「頼んだわ。 ……と、こんな感じね。」
ライト「……いつもこんな感じなの?」

ライト、圧倒されてるわね……。

突然の賑やかな光景に、ライトは言葉を失ってる様子……。

私も、初めて来たときこうだったわ…。

懐かしいわ……。

絶句しているライトとは対称的に、

シルク「ここまでじゃないけど、大概はそうなのよ。」

私は笑顔で彼女に言った。

ライト「そうなんだ…。 …でもシルク?この建物は何なの? ホテルにしては警備が厳重過ぎる気がするけど……。」
シルク「そういえば、ここの事については何も話してなかったわね。…」

あっ、うっかりしていたわ。

ギルドについては言ってなかったわね。

首を傾げてるライトの言葉で、私はハッと思いだした。

シルク「ええっと、ここはいわゆる役場みたいなもので、各地で困っている人とか要注意人物とかの情報が集まる場所なのよ。…他にも、未開拓の場所への探検の拠点になっていたりするから……、一言では語れないわね。…あっ、とにかく、入り口も開いたみたいだから続きは中でいいかしら?」

まず、探検隊について話さないといけないから、結構時間がかかるわね……。

……だから、今はちょっと勘弁してもらえないかしら?

私が彼女に話している最中(さなか)、堅く閉じられていた扉が、鈍い音と共にゆっくりと開き始めた。

ライト「えっ、あっ、うん。それでいいよ!」
シルク「じゃあ、行きましょ!」
ライト「うん!」

ライト、ごめんなさいね。

私は彼女に心の中で謝りながら彼女を見上げた。

エスパータイプらしく私の考えを読みとったのか、{気にしなくてもいいよ!}とでも言うように、ライトは私に笑顔を見せた。

なら、心配ないわね!

私も、彼女に笑いかけた。

……前からだけど、同じエスパータイプとしてどこか分かり合えるところがあるのかもしれないわね。

私は彼女との[絆]の深さを再確認しながら、奇抜なデザインのギルドの門をくぐった。


………

夜 ギルドB2F sideシルク

シルク「みなさん、久しぶりね!」
A「シルクさん! まさかまた会えるなんて夢みたいですわー!」
B「元気そうで何よりです。」
C「シルクさん……、あっしは……。」
ライト「シルク? この人達は?」

みんな、本当に久しぶりね!!

いつも通りで安心したわ!

込み上げる気持ちを抑えきれず、私の声のトーンは自然と高くなった。

シルク「まず彼女は[キマワリ]のシャインさん。 次に[チリーン]のスズネさん。隣が[ビッパ]のブラウン君。」

{それから順番に[ドゴーム]のヘルツさん、[ディグダ]のホール君、[ダグトリオ]のガッツさん、[ヘイガニ]のシザーさん、[グレッグル]のフログさんよ!}

私は順番に、彼らに視線を送りながら紹介した。

みんなも、軽く会釈をしながら応えてくれたわ。

シルク「……で、最後に、ここのギルドの副代表で[ペラップ]のフラットさん。 他にも知りあいはいるけど、この場にいる人はこのくらいよ。 ……ところでフラットさん? ラックさんの姿が見当たらないけど、お出かけ中かしら?」

……そういえば、いないわね……。

どこかに行ってるのかしら?

フラット「親方様なら今日出かけたばかりで留守にしてるんです♪」

やっぱり、そうだったのね?

あの人、自由奔放だから……。

ライト「シルクって、この時代でも有名なんだね?」
シルク「有名と言っても……、ただ顔が広いだけかしら?」
ライト「へぇー。」
スズネ「……ところでシルクさん? 仲が良さそうですけど、この人とはどういう関係なんですか?」

……あっ! ライトの紹介がまだだったわね!

シルク「彼女は私の親友で、同じ2000年代の出身なのよ!」
ブラウン「この辺りでは見かけない種族でゲスね?」

……なにしろ、ライトは伝説の種族だからね。

この時代の[ラティアス]の事は知らないけど、少なくとも人前には姿を現さないのは確かね。

体勢を起こしているライトに、私は視線を移した。

ライト「うーんと……。 はじめて、[ラティアス]のライトと……」
フラット「 [ラティアス]なんですか!?
ライト「い………えっ、あっ、はい。 わたしの種族、知ってたんですね?」

フラットさん?驚きすぎじゃないかしら?

彼は彼女の種族名を聴くと、フロアの誰もが驚くほどの大声をあげた。

シャイン「フラットさん……? 彼女の種族って、どういう種族なんですの?」
ブラウン「あっし、知らないでゲス。」
シルク「知らないのも、無理はないわね。 彼女の種族は人数が極端に少ないからね……、一生かかっても出逢えない人が殆どなのよ。」
フラット「……噂でしか聴いたことがないが、別の種族に姿を変えて自らの身を守ってる……、伝説の種族らしい……。…おそらく、[セレビィ]のシードさんやチェリーさんと同等の存在だ♪」
ライト「正解です!」

………この後、ギルドのメンバーが驚きの声をあげたのは、言わなくても分かるわよね?

……私が知らない子がふたりいたけど、みんなライトの事について興味津々で、彼女の話で盛り上がり始めたわ。
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