絆の軌跡〜導かれし光〜

□その4 星屑に奏でる旋律
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24 迷える4分音符


2日後 午前 カフェ Sideシルク


シルク・ライト「「……新しいダンジョン?」」

ウォルタ「うん。 ゴールドクラスみたいだから特訓には丁度いいんじゃないかな〜?」

[ミズゴロウ]のウォルタ君の提案を聴いたわたし達は、時間的にも空いているオシャレなカフェの広間に疑問符の混ざった声を反響させた。

その空気の波に2〜3種類の木の実をブレンドして作られたミックスジュースの仄かな香りが乗り、波紋を描くように広がっていく……。
その波が描く波紋の先にはゆったりとした時が流れ、私達を含めた来客に穏やかなひと時をもたらした。

……何回来てもこの店は落ち着けるわね。
[パッチールのカフェ]もいいけど、今私達が来ている店……、[カンフォルテ]のほうが気に入ってるわ。
前者が{探検隊の交流の場}に対して、後者は{音楽と癒しの空間}をコンセプトにしているのよ。
ここのオーナーで[シャンデラ]のシャンテさんの好みでゆったりとしたテンポの音響が流れていて、店の中に造られている特設ステージでは時々ショートライブを開いてるらしいのよ。

……{癒しの場}としては最適ね!

そのシャンテさんも落ち着いた雰囲気で、歌も上手いらしいのよ。


……あっ、そうそう。
今この場にいるのは私とライト、休暇をとっているウォルタ君だけ。
勘違いしている人もいるかもしれないけど、彼はラテ君達の“悠久の風”のメンバーじゃなくて探検隊連盟公認の考古学者。
…だからこの場にはラテ君達はいないわ。

ウォルタ君の話しによると、昨日から{閉だされた海}へ調査に行ってるそうよ。

……えっ?
何で本人から直接聞かなかったのかって?

……実は私、あの後丸一日眠り続けてたのよ……。
理由は、言わなくても分かるわよね?

……そう。
[従者のチカラ]の[代償]の影響……。
そのせいで昨日の夕方まで起きられなかったのよ。

シルク「ゴールドクラスなら丁度いいかもしれないわね」
ウォルタ「でしょ〜? {星屑の空洞}って言って、エスパータイプとかフェアリータイプの種族とかが中心なんだって」
ライト「へぇー」

その属性なら、遠距離攻撃が中心の私達にとっては籠るのに最適ね!

私はドリンクの入っているカップを右前脚で持ち、二口ぐらい飲みながら彼の言葉に答えた。
ライトとウォルタ君も皿に盛られている料理に手をのばしながら呟いた。

シャンテ「{星屑の空洞}ねぇ。 {水晶の洞窟}よりも綺麗な洞窟だって聞いたことがあるわぁ。 はい、{マカロン6色盛り}。」
ウォルタ「ありがとうございます。 ぼくはまだ行ったことないんだけど、そこの奥地に凄く大きな宝石があるんだって〜!」
ライト「何か凄そうだね! シルク、今日はそこに行かない?」
シルク「いいわね! ライト、そうしましょ!」

ライト、私は賛成よ!

私達3匹が話している所に追加で注文した料理を持ってきたシャンテさんも加わった。
彼女の持ってきた皿にはオレンジ・水色・黄色・ピンク・黄緑・紫の丸いお菓子が綺麗に並べられていた。

…見栄えも良くて、いい感じね!

それに「大きな宝石がある」って聞いてますます行きたくなったわ!

……誤解されないために言っておくと、「アクセサリーにするため」、じゃなくて「化学的な研究のため」。
理系女子としては嬉しい機会だわ!

私は期待の高まりと共に半ば興奮しながら大きく頷いた。

ライト「なら決まりだね! ウォルタ君もどう?」
ウォルタ「うーん……、ぼくも行きたいんだけど明日から忙しくなるからやめておくよ〜」
シャンテ「そういえば連盟から呼ばれてるって言ってたわねぇ。」

……そうなのね。

シルク「…なら仕方ないわね」

連盟からの呼び出しがあるなら、そっちを断るわけにはいかないわね。

ウォルタ君は申し訳なさそうに俯きながらオレンジ色のそれを口に放りこんだ。
その彼に私は「だからそんなに落ち込まないで」って付け加えて(なだ)めた。



…………


昼前 星屑の空洞 入口 Sideシルク

ライト「……ここがそうかな?」
シルク「ええ、そのはずよ」

会計を済ませ、[カンフォルテ]を後にした私達は簡単に準備を済ませて目的のダンジョンに辿りついた。
[トレジャータウン]は晴れていたけど、この場所はあいにくの雨……。
灰色の空からもたらされる恵みの水によって私の短毛は湿り、火照った身体を徐々に冷ましていく…。

全身が濡れている私は目前に(たたず)む土色の壁に目を向け、彼女の問いにゆっくりと頷いた。

シルク「洞窟の中も明るいって言ってたから間違いないわ …さあ、行きましょ!」
ライト「うん!」

もう昼前だから、入り口でのんびりしてられないわね!

私は高らかに宣言し、ライトも大きく頷いた。
そして雨でぬれた私達は雨宿りを兼ねて足早にその洞窟へと足を踏み入れた。

………さあ、いくわよ!!


……………


同刻 ダンジョン内 Side???

A「───! ここは俺に任せろ!」
B「うん。 ありが……」

カチッ

B「とう……!? ───!! どこにいったの!? ───!! 返事してよ!!」



…………


数分後 星屑の空洞 Sideシルク


シルク「…[シャドーボール]!」
ライト「[ミストボール]!!」

私は漆黒のエネルギーを口元に集中させ、15cm程の弾を瞬時に生成した。
その間にライトは手元に超属性の球をつくりだし、3発連続で撃ちだした。

その白い球のうち1発は洞窟の壁を捉えたけど、残りの2発は[マジカルシャイン]を繰り出した後で隙だらけの[フラージェス]に命中した。
…でも一撃では倒すことが出来ず、若干ふらつきながらも起き上った。

…さすがにゴールドクラスとなるとライトでは一筋縄ではいかないわね。

そこで私が溜めていた漆黒の大玉をその対象に向けて放ち、トドメをさした。

C「[サイコキネンシス]!」
ライト「しまった!! くっ…!」
シルク「ライト!! {群生の種}!!」

!!
私も油断してたわ!!
敵を仕留めた事で一瞬気が緩んでいたライトは新手のエスパータイプに拘束されてしまった。
その彼女を見た私は咄嗟に鞄から一つの種を取り出し、事の元凶に向けて思いっきり投げつけた。
すると標的にぶつかったそれが弾け、それと同時にそこから若草色の蔓がスルスルと伸びはじめた。

C「!!?」
ライト「解けた! [竜の波動]!!」

急激に成長を始めたそれは元凶に絡みつき、[ハードプラント]よりは弱いけどその寄生先を締め上げた。

突然の事で集中を切らせてしまった相手はライトを解放してしまった。
その隙に彼女は咄嗟に竜のエネルギーを口元に溜めてブレスとして放出した。

C「くっ……!」

身動きがとれない相手はかわす事が出来ず、まともにくらってしまった。
その後、ライトのブレスをうけた相手は再び技を使う事はなかった。

シルク「…何とかなったわね」
ライト「うん、そうだね。 シルク、さっきはありがとね」
シルク「どういたしまして」

咄嗟に使ったけど、何とかなったわね。

周りに敵がいないと分かったライトは私の前まで移動して安堵を含んだ笑みを見せた。
その彼女に答えるように私もにっこりと笑顔を魅せた。

ライト「…でもシルク? さっきは何をしたの? …種、使ってたけど……」
シルク「…そうね、この種について何も言ってなかったわね」

…実はこの種、まだ完成してないのよ。

シルク「私のオリジナルで{群生の種}って言うんだけど……」

だから、解説しないといけないわね。

私は彼女にこの種の説明をするために見上げ、歩きながら語り始めた。

シルク「…まだ試作品なのよ。」
ライト「試作品…?」
シルク「ええ。 [ハードプラント]……」

カチッ

シルク「…からヒントをもら……?」

……ん?
今、何か踏んだ?
気のせいじゃ……ないわよね?
確かに前脚に何かのスイッチを踏んだ感覚があった……!!?

って事は、{罠}!?

足元から上がった不吉な音を耳にした私は恐る恐るその部分に目線を落とした。

……!!
これは……{ワープスイッチ}!!?

ライト「…? シルク? どうかし……」
シルク「ライト!! 先に奥地まd……」

「…で行ってて!!」

瞬時に判断したことを伝える事も叶わず、私は異質な光に包み込まれてしまった。

そして、発言の途中にもかかわらず私は強制的にどこかへと飛ばされてしまった。
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