絆の軌跡〜導かれし光〜

□その5 本領発揮
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31 遅れてきた考古学者


三日後 朝 ギルドB2F Sideシルク

フラット「……それじゃあ、今日もいくよ♪」

……この場面、久しぶりね!

 いつものフラットさんのかけ声と共に、また新たな一日が幕を開けた。

……ええっと、[星屑の洞窟]から帰った後の話をしないといけないわね。
 まずは[イーブイ]のルアン君と[ラクライ]のコスモ君。
 {穴抜けの玉}で脱出したらもう日が暮れてたから、とりあえずって事でライトに乗せてもらって[トレジャータウン]に戻ることにしたのよ。
 …もちろん、私が彼女の背中に乗ってあとのふたりを[サイコキネンシス]で浮かせる、いつもの方法でね!
 で、戻る最中に偶然[ウォーグル]の姿のウォルタ君に会ったのよ。
 どうやら連盟の本部から帰ってきたところだったみたいで、ふたりの事を紹介しながら一緒に戻ることにしたのよ。
 …最初はルアン君、警戒してたけど、ウォルタ君の能力が分かった途端に心を開いてくれたから凄く嬉しかったわ!
 ……そもそも、ルアン君は12歳、ウォルタ君は14歳で歳も近いから自然な流れなのは間違いないんだけど……。
 その時のコスモ君はというと……、多く語らなくても想像できるわよね?

……それから、ルアン君が「もっとウォルタとも話したい!」って言ってたから、そこで一端別れたわ。
 
……で、一夜明けてからウォルタ君の家にお邪魔する事になって、それぞれの世界の事について話し込んだわ。
 ……それも知らない事ばかりで、新鮮だったわ。
 ルアン君が言うには、向こうの世界では護身用に刀を使ってるひとがいるそうだわ。

……そっちも気になるけど、行くのは無理かもしれないわね……。

……最後に、その日の夕方に2人が元の世界に帰る事になったのよ……。
 別れは辛かったけど、仕方のない事よね……。

………えっ?
 そもそもどうやって帰ったのかが分からない?

……そうね、それも話さないといけないわね……。
 ……でも、案外簡単に説明できるかもしれないわ。

…話してる間に、ウォルタ君が「知りあいに{次元}をも超える[チカラ]を持っているひとがいる」って言ってたのよ。
 私の調査不足でどんな種族なのかは分からないけど伝説だそうよ?
 きっと[レシラム]のシロさんを通して知り合ったのかもしれないわね。

フラット「……おおっと、言い忘れた事が一つある♪」
フレイ「…? 言い忘れた事? 何なんっすか?」
ライト「フラットさんが忘れるって珍しいね」

…ん?
 …確かに、フラットさんが伝え忘れるなんて滅多にないわね。

 ギルドの情報屋の一声で散り始めていたギルドのメンバーがまるで一時停止のボタンを押したかのようにピタッと立ち止まった。

……ここまで全員がシンクロするのも、珍しいわね。

フラット「ウォルタ君の紹介であの“チャームズ”と共同で遺跡の調査をする事になった♪」
ブラウン「あの、“チャームズ”とでゲスか!?」
リル「さっ、流石に僕達も知ってますよ! 先輩たちとハクさん達のチームよりも凄い探検隊ですよね?」

シルク・ライト「「ラテ君達よりも!?」」

…えっ!?
 ハク達もかなりの実力なのに、それ以上って事!?
 …でも、知らないわ……。

 ギルドの地下に今度は別の声が共鳴した。

シャイン「本当にキャーですわ!!」
スズネ「………でも、どうしてそのような人たちが私達と共同で………?」
シルク「私も気になるわ…」

……きっと2000年代では考古学会会長でシンオウリーグチャンピオンのシロナさん(詳しくは〜kizuna〜参照)と同じテーマを調査する事と同じかもしれないわね。

 辺りの空気で何となく状況を掴んだ私は首を傾げるスズネさんに続くように質問した。

フラット「“チャームズ”の皆さんと親方様は以前、共同でダンジョンを調査したことがあるそうだ♪」

ギルドメンバー「「「ええーっ!!?」」」

……「まさか、こんなところで繋がっていたのか!?」って感じね……。

ライト「……そんなに凄い事なの?」
シルク「ええ! 私達の時代ではある地方と別の地方のリーグチャンピオンが共に旅してたっていう事と同等だわ!」

…そういっても過言ではないわ!!
 シャインさんやリル君達の反応を見る限りでは、最低でもそのグループはダイヤモンドランクかそれ以上……。
 それよりもさらに上のグループは滅多にないわ!!
 ラテ君達のプラチナランクでも上位に位置するから、尚更……。

ライト・フラット「えっ!? そんなに凄い事なんだ!」「意外かもしれないが、そういう事だ♪」

シルク・フラット「そうよ!」「ちなみに、予定は明日だ♪ だから今日は仕事は無し♪ 各自明日の準備をするように♪ いいな?」

…ライト、どうやら分かってくれたようね?

 一足先に理解した私から遅れる事数十秒、ライトも状況を読み取れたようで驚きの声をあげた。

フレイ「もちろんっすよ!!」
シャイン「燃えてきましたわー!!」
ブラウン「楽しみでゲス!!」
シルク「私達も参加させてもらってもいいかしら? らいとも、いいわよね?」
ライト「うん! ギルドのみんなにはお世話になってるんだからここで恩返ししないとね!」

…あえて私が訊くまでもなかったわね。
 昨日ライトと一日中特訓に明け暮れたから、息抜きに丁度いいわね!

 ギルドに泊めてもらってる私達を含めて誰もがこの瞬間に湧きあがった。

…だって、そうよね?
 少し前にも言ったような気がするけど、未解の地の調査となると、誰でもテンションが上がるでしょ?
 誰も知らない事を自らの手で研究し、解き明かしていく……。
 今は専門分野が違うけど、願ってもない良い機会だわ!!

フラット「もちろんですよ♪」
ライト「やった!」
シルク「じゃあ、今回もよろしくお願いしますわね」

…フラットさん、頼んだわ!

 私は一度彼にぺこりと頭を下げ、他のメンバー達から遅れをとるまいと、上層階につながる螺旋階段へと駆けていった。

……もちろん、準備をするためにね!



…………

数分後 海岸 Sideシルク


ライト「………あれ? シルク? [トレジャータウン]に行かなくても良かったの?」
シルク「ええ」

…確かに、疑問に思うのも無理ないわね…。

 淡い潮風に羽毛を靡かせているライトは砂を踏みしめて歩く私を見下ろしながら呟いた。

シルク「ライトにはあまり実感がないかもしれないけど、私は化学者。 ある程度の物なら自力で合成できるわ」

……流石に{オレンの実}とか{ただの種}みたいな原料になるようなものは無理だけど、材料さえあれば{不思議玉}の類や{種}はいくらでも合成できるわ。
 むしろこの時代ではこの分野が私の専門……。
 研究結果を存分に発揮できるのよ!

ライト「そういえば、そうだったね」
シルク「そうよ。 それから、あそこに洞窟があるのが見えるかしら?」
ライト「うん」
シルク「あの洞窟は[海岸の洞窟]っていうダンジョンで、足りない材料の調達に最適なのよ!」
ライト「えっ!? でも、ダンジョンなんでしょ?」

…ええ、これも列記としたダンジョンの1つ…。

 ライトは私の言葉に驚いて声を荒げた。

シルク「ええ。 …でも一般のポケモンでさえ楽に突破できる簡単なのよ」

…この辺の子供たちが遊び半分で忍び込むぐらいだそうだわ。

ライト「って事は、ノーマルレベルって事?」
シルク「いや、それ以下……よ?」
ライト「……ん? シルク、どうしたの?」

…そう言っても過言ではないわ………ん?
 ……何かしら……?

 確認する様に訊ねるライトの後ろに、陽の光で見づらいけど光塊が凝縮し始めているのを私の白い瞳が捉えた。

 そんな私の様子を見たライトの頭上に疑問符がまた一つ追加された。

シルク「後ろを見てみて?」
ライト「後ろ? 後ろがどうかしたの?」

 そう言いながら、彼女もそっちに振り向いた。
 その間にも、謎の光……多分誰かの技によるものが膨らみ始めていた。

……この光……、もしかすると……

シルク「何か光が集まってるから………! いや、ただの光じゃないわ!!」

……!
 わかったわ!
 この光、[テレポート]のじゃないわ!

 事の元凶を見据えながら思考を巡らせていた私は、ある結論にたどり着いた。

ライト「…じゃあ、何なの?」
シルク「あれは[時渡り]の光……、シードさんのものよ!」

…今まで4回も見たことがあるから、間違いないわ!

 予想が確信に変わった私は午前の潮風に乗せて自身満々に言い放った。

ライト「[時渡り]……。 …あっ、言われてみればそうかもしれないよ! だって[テレポート]の光ってここまで強くないもんね!」

…ライトも気づいたようね?

 膨らんでいた光は次第に3つの影に分かれていき、それらのシルエットを形作っていった。

……3つって事は……、誰かを導いてきたのね?

 形が定まると、光は次第に……

シード「[時渡り]成功っと。 あっ、シルクさんにライトさん、まさにちょうどいいタイミングでしたね」

シルク・ライト「!!?」「えっ!?」

…!?
 まさかこの二人を!!?
 …でも、彼は用事で来れなかったはずよね!?

…彼もそうだけど、もう一人も私は知ってるわ!!

 思いがけない人物の登場に、私はもちろんライトも言葉にならない声をあげてしまった。

A・B「流石、シードさんだね」「ここが5000年後の……えっ!? ライトにシルク!? 何でここにいるの!?」

 2人目の方も、私達と同じで驚きに押しつぶされてしまった。

シルク・ライト「フライ、用事はよかったの!?」「ティル!? 何でフライと一緒に!?」

フライ・ティル「思った以上に早く片付いてね。 その時に偶然シードさんと会ったから導いてもらったんだよ」「帰る途中で偶々フライ君と会ったんだよ。 それで流れに身を任せたらこうなったって感じだな」

 その二人は、かつて私と共に7000年代に導かれたことがある[フライゴン]と、ライトのパートナーである[マフォクシー]……。

…予想外の組み合わせでびっくりしたわ……。
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