一対の光

□第3話 目覚める“ヒカリ”
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02 ??? Side翔

ルィソウ「紹介がまだだったわね。 ウチは<水竜>のルィソウ……。 あなた達の言葉で“川”を意味するわ。 声から分かると思うけど、性別は♀。 歳は12。 属性は水・光で波長はγ-@よ。 よろしくね!」

ルィソウと名乗った水竜は大きな口の端を緩ませ、揚々とした様子で言った。
彼女は右手……?前足……?
……4足で立ってるから、右前脚をさし出した。

翔「…うっ、うん。」

僕も半ば促されるように同じ側の手をだした。

……真っ新な空間で、二つの伊吹が一つにつながった………。

翔「…あれ? 君も右手に包帯を巻いてるんだね?」

ん?

さし出された右手を見ると、僕のそれと同じように白い布が巻かれていた。

ルィソウ「そうよ。 ウチは翔がいないと生きていけない……だからかもしれないわ。」
翔「僕が!? どういう事なの?」

えっ!?
なんで!?

僕は彼女のいう事の訳が分からずに首を傾げた。

……そういえば、ここがどこなのか分からないし……。
…あと、何でルィソウの言葉が分かるんだろう……。

……<アクアドラゴン>……、いや、<水竜>のはずなのに……。

ルィソウ「話せば長くなるわ…。 聞いてくれるかしら?」
翔「? いいよ。」

…見た感じ何もないしね……。

ルィソウ「……じゃあまずはここの事を話すわね?」
翔「ここの? うん。」

僕はこくりと頷いた。

ルィソウ「……ここは翔、あなたの中……、“精神世界”って言ったほうがいいわね。」
翔「“セイシンセカイ”……?」
ルィソウ「そうよ。」
翔「なら何で君がここにいるの?」

僕の中なら、いないはずだよね?

ルィソウ「それはウチらに“光”の“龍牙の呪縛”がかけられてるからよ。」
翔「光の……?」
ルィソウ「そう。 根本から言うと、ウチら<ドラゴン>は幼少の頃にどの属性を捕食したかによって種族が変わるのよ。」
翔「種族が……?」

……知らないことが多すぎて全然整理できないんだけど……。

ルィソウ「ウチらはどの種族もただ一つの種……、<幼竜>として生まれてくるの。 属性は光でね。 <幼竜>は生後一週間で今後の種族、属性が決まるの。 例えば、炎属性を多く捕食すれば炎・闇属性の<ファイアドラゴン>に。 氷属性なら氷・闇属性の<スノウドラゴン>に。」

……あっ、そうそう。
群れのボスや<ドラゴン>みたいな強い獣は“魔物”って呼ばれていて、必ず闇属性を持っているんだよ。
…何で強いのかは「はじめに」を読んでいたら分かるよね?

ルィソウ「その期間にただ一つの属性しか捕食しなかった<幼竜>は、闇属性にならずに光が副属性として残るのよ。 “変異種”と考えてもいいかもしれないわね……。」
翔「……って事は……。」

ルィソウは確かさっき「水・光属性だ」って言ってたから……。

ルィソウ「思った通りよ! ウチの場合生まれてから水属性しか捕食しなかった……、いやできなかったから、闇じゃなくて光属性なのよ。」

そっか……だからね。

……でも、待って!

翔「だったら、僕の中にいる君は何で水属性を…? 生まれてからそれしか捕食してないって言ってたけど…?」

もしそうなら矛盾してるよね?

ルィソウ「…さっきチラッとはなした“光”の“呪縛”の影響よ。」
翔「……そういえばそんな事言ってたね。」
ルィソウ「普通の“呪縛”の効果は知ってるわよね?」
翔「うん。」

そんなの、当たり前でしょ?
僕は12年もそれと向き合ってきたんだから!

ルィソウ「本来なら例えウチらのほうが光属性でも“闇”の“呪縛”になってしまう……。 …それをかけられると一週間以内に必ずかけられた側は命を失ってしまうわ…。」
翔「えっ!!? なら何で僕は生きてるの!!?」

実はルィソウの言う通り、父さんは“呪縛”をかけられてから一週間で死んじゃったんだよ…………。

ルィソウ「……でもごく稀に両方の“波長”が一致すると別の効果………、“光”の“呪縛”が発動するのよ。」
翔「“波長”が!?」
ルィソウ「もう一度言うけど、ウチの波長はγ-@。 それに対して翔もγ-@……。」
翔「…って事はもしかして……。」
ルィソウ「そういう事よ!」

僕には“光”の“呪縛”が…!?

ルィソウ「“光”のほうは死なずに済むの。 …それが、あなたが12年間も生き続けた理由よ。 …同じ“呪縛”と言っても効果は全然違っていて、かけた側はウチみたいになる……。 逆にかけられた側は主属性が光になって、元々の属性は副属性になるの。」

えっ!!?
属性が二つも!!?

僕は何度目か分からない驚きに打ちひしがれた。

ルィソウ「もちろん、光属性の魔法も使えるわ。 ウチが唱えるように言った{earth}……、あれも光属性なのよ!」
翔「えっ!? そうなの!!?」
ルィソウ「そうよ!!」

あの、凛が一瞬止まって見えたあの魔法……、光属性だったんだ……。

………ん?
…………凛………?

………!!!

翔「あっ!!! 凛!!!」

凄く大事な事…、忘れてた!!
あの時、僕は凛と渓谷の激流に落ちてたんだよね!!?

“呪縛”で死なないってわかってもそれだと意味ないじゃん!!

僕はふとしたことで忘れてはいけないことを思い出した。

ルィソウ「彼女なら無事よ! もちろん、翔もね!」
翔「えっ!!? でも僕は人だよ!? あそこに落ちたら絶対に助からないのに!?」
ルィソウ「ええ。 人ならね。」

なら、どうして!!?

僕は目線だけで彼女を問いただした。

ルィソウ「…言葉にしづらいから……、あなたを今の状態状態に“戻す”わね。」
翔「!? “戻す”!? どういう事!?」

……ルィソウ、全く意味分からないんだけど………。

ルィソウ「理由はさっきの通りよ。 ……翔、準備はいいかしら?」
翔「ちょっ…、ちょっとルィソウ!? 理由になってない……」
ルィソウ「{rilechangert}!!」
翔「よ……!!?」

待って!!
まだいいって言ってないよ!!

ルィソウは僕の言葉に構わずに魔法を唱えた。
すると僕と彼女の足元に魔法陣が出現……えっ!?

それから突然光が発せられ、それが僕達を包み込んだ。
僕は思わず腕で目を覆い、咄嗟に閉じた。

…どういう事!!?

ルィソウ「……もう目を開けてもいいわよ!」
翔「……?」

しばらくすると、斜め下のほうから彼女の声が聞こえた。

……ん?
下?

……確かルィソウのほうが頭の位置が上だったよね?

翔「!!? 嘘でしょ!?」

ゆっくりと開かれた瞳の先には、思いもしなかった光景があった。

翔「何で“ぼく”が目の前に!!?」

そこには、僕が誰よりもよく知る人物……、“翔”が悪戯を成功させた子供のような笑顔を見せていた。

……もう、訳が分からない!!!

僕は“ぼく”だよね!!?
なのに何で目の前にいるの!!!?

ルィソウ「そう。 現実での今のあなたの姿……、それはウチの<アクアドラゴン>よ。 人の姿ではどうしようもなかったから、こうさせてもらったわ。」

………誰か……、この非現実的な事を言う青年を止めてくれるかな……?

ルィソウ「……あっ、そうそう。 言い忘れてたけど、翔が光属性の魔法を使いすぎるとウチが唱えなくてもこうなるから、気を付けてね! ……ついでだから、あの後の事を話すわね。」

………誰か……、ガムテープ持ってる?
あの口に貼って黙らせたいんだけど……。

“ぼく”の体で喋るルィソウは僕に構わずにペラペラと事の結末を語り始めた。
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