一対の光

□第6話 梁唯奮闘記
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02 朝 梁唯 Sideフォクル

莉奈「…みんな揃ったわね?」
エメル「全員僕の家に泊まってるんだから、当たり前でしょ?」

何か頑丈そうな建物に連れてかれて、莉奈とか言う<人間種>の女の人が場にいる全員を見渡した。

……この人、ちゃんと起きてるのだろうか……。

<ドゥシャトレ>の<獣人種>であるエメルはその人から距離をとり、冷ややかな目で見ながら言った。

…何故かはわからんけど、おそらく何かしたんだな?
あの人の顔、所々に引っ掻き傷があるから。
翔が「莉奈さんはエメルにうっとおしがられていてね…」って苦笑いしながら言ってた。
だから、エメルが爪でしたのかもしれないな。


………おっと、肝心の俺の挨拶がまだだったな。

俺は変異種で<ユレナード>のフォクルだ、よろしくな。
俺の見た目は………、薄黄色の狐だな。
尻尾の先端は白いが、それ以外は普通だろう?

…っと、忘れるところだった!
俺、首に白いマフラーを巻いてもらったんだよなー。
どうやらエメルが小さい頃に使っていたものらしい。
その証拠に、マフラーに木の香りとエメルのにおいが染みついている……。

<レナード種>は比較的鼻が利く種族なんだ……。

…さすがに<ロウプ>には負けるがな…。


……さあ、俺の事はこのくらいにして話に戻ろうか。

朝の風に2本の尻尾を靡かせて、エメルは呆れ顔であの人の言葉に答えた。

フォクル『だよな。』

一晩で翔達に馴染めた俺はエメルに対して伝わらない声で答えた。

…翔はまだあの魔法を使ってないからな。

翔「……ハハハ……、そうですね。 …莉奈さん、凛に霜も、{parler}使いたいから召喚してくれますか?」

昨日とは違って2本の短剣を携えている翔は苦笑いを浮かべてからその3人に促した。

……「召喚」?
…何だ?それ?

聞いたことないな…。

俺は首を傾げた。

凛「ええ。」
霜「翔、頼んだ!」

凛・霜・莉奈「「{fairle}」」「{refairle}」

…何が始まるんだろうか……。

彼らは何かの魔法を唱え、その目の前に灰色の魔法陣を出現させた。

フォクル『!!? 嘘だろ!?』
フェニックス「クァーー。」
ロウプ「ウォーン。」
ラピュール・ドフィーネ「「キューン」?」

その模様からは………!!?
何が起きたんだ!?

どんな魔法なのか知らんが4匹がどこからともなく姿を現した。

おまけに、俺ら<レナード種>の天敵である<フェニックス>まで……。

俺は警戒レベルをマックスまで高めた。

翔「{parler}。 フォクル、ビックリしたでしょ?」
フォクル《……翔、これは一体……。》
フェニックス《これが噂の…》

…翔、本当にびくりした……。

翔は例の呪文を唱え、俺を含めた全員の足元に白い紋章を描いた。

…言い忘れていたが、いくら俺が獣でも種族が違うと言葉も分からなくなる…。

…もし分かったら作戦が獲物に聞かれて逃げられるだろう?

凛「彼らは召喚士である私達と契約しているのよ。」
エメル「身の安全が確保される代わりに、群れを離れて人と苦楽を共にするのにゃ!」
翔「でも僕は術士だから、フォクルとは契約できないんだけどね。」

…術士?召喚士?
……何なんだ?

ドフィーネ《そういうこと〜。》
フォクル《……? 違いが全然分からないんだが……。》
ロウプ《召喚士は武器を使わない代わりにわたし達、召喚獣と魔法で戦って、術士はその逆で召喚獣は連れずに武器と魔法で戦うっていう違いがあるのよ。 …知らないという事は、新入りね?》
フォクル《……はぁ…。》

……何か饒舌だな……、この<ロウプ>……。

俺は♀の<ロウプ>のトークに圧倒され、から返事しかできなかった。

……<ロウプ>っていう種族はここまでおしゃべりなのか……?

ロウプ《なら自己紹介しないといけないわね! セリエという名前よ。 よろしくね!》
フォクル《…フォクルだ。》
セリエ《フォクル君ね? …ほら、せっかくお互いの言葉が分かるんだから<フェニックス>のあなたも名乗ったら?》
フェニックス《!? オレ? …言われてみりゃあそうだな。 お前とは長いつきあいだが聞けねぇからな。 オレはイクェイトだ。 お前を襲わねぇから安心しな!》

………召喚獣、口が軽すぎだろ!?
群れにもここまでの奴はいなかったぞ!?

セリエは溌剌とした様子で喋り倒し、イクェイトという天敵は「敵意はない」とでも言いたそうに翼を羽ばたかせた。

セリエ《彼の事はわたしが保障するわ! <ロウプ>にとっても<フェ二ックス>は天敵…。 だけどこうしてわたしがいるでしょ?》
フォクル《……仲良さそうだから、そうなのかもしれない……な……。》

どんな関係かは知らんが、補食関係にあるならセリエは捕えられてるはずだよな……?

俺は半信半疑ながらもこくりと頷いた。

翔「…フォクル、そろそろ行くよ。」
フォクル《…ん?》
凛「イクェイトって言ったわね。 私達もいくわよ。」
イクェイト《んぁ? ああ。 んじゃあセリエ、また後でな!》
セリエ《ええ! その時は翔にまた{parler}をかけてもらいましょ!》
イクェイト《おう!!》

……本当に、仲がいいんだな?
種族の壁、完全に超えてる……。
…野生では絶対にあり得ないな。

俺は翔に呼ばれ、彼のあとを追いかけた。
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