□忘れた記憶
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あの後、
無事宿でご飯にありつけた一行。
紅は皆の食事量に驚きを隠せなかった。
みるみるうちに机が皿で埋まる。

その大半が悟空なのだが、皆よく食べる。


蒼は早々にお腹一杯になったのか、机で眠っている。

早々にっと言っても、まぁ、彼女もそこそこ食べていた。



食事が終わっても、蒼が起きず、
悟空が蒼がおんぶして部屋に戻った。

蒼は1度寝るとなかなか起きないらしい。

紅と蒼が同室で、隣が男組、4人。


隣の部屋からは悟空と悟浄の声が常に聞こえていた。


それが、夜の9時頃、三蔵の怒鳴り声と共にシーンっと静まりかえった。






翌朝、
出発の準備の為、色々買い出しをしていた途中。


ナイフを売っている店を見つけて立ち止まった。





「……わぁ…すご…!!」


その言葉に皆が立ち止まって、
並んでいるナイフをまじまじと見た。



「これなんかいいんじゃね?」


悟空が1本手に取って私に見せる。



「いーんや。これだろ。」


悟浄も同じように手に取る。



「えぇっ!?!?これの方がカッコいい!!」


蒼も見せてくる。





「3人とも。選ぶのは紅ですからね。」



八戒が後ろから3人に声をかける。




「でもね。これカッコいいと思わない??」


蒼が今度は八戒に見せて、目を輝かせる。



「これいいと思うけどなー」


悟空がナイフの刃に太陽の光を当てて、キラキラ輝く刃を見て呟く。




「だ〜か〜ら〜。選ぶのは私なんだって…」



ナイフをじっと見つめ、悩む。




「あ、そうだ。三蔵はどう思う??」


後ろで立っていた三蔵に意見を求めようと声をかけると、あからさまに面倒くさそうな表情になって、




「……どうだっていい。早くしろ。」


っと言った。







「……あぁそうですか。」


私は少しカチンっときて、プイッとそっぽを向いた。



すると、三蔵が


「はぁ…」


っとため息をついてから、ナイフを1本手に取った。




「…これだ。これなら刃の長さやグリップの太さがお前に合う。」


三蔵に渡されて、手に取る。



「……ほんとだ…丁度いい」


驚くほどしっくりくる。




横から蒼が手元を盗み見て、



「うんうんっ!!それもカッコいいっ!!」


と、笑う。




「これにしようかな。」



早速、購入して、腰にナイフをさす。




「これで出発できるなっ!」





「食料なども買い込みましたし、出発しますか?三蔵。」




「あぁ」





それを聞いて、
蒼が拳を振り上げて、楽しそうに叫んだ。



「よーし!出発だー…あ。」


蒼が何かに反応して辺りを見渡す。




「何?」





「来る。」



悟空も同じように何かを感じ取っているようだ。




「何が?」






「さっそくだけど、そのナイフの使う仕事ができたぜ。」


悟浄が私の肩に手を置いて、そう言う。




「まさか」




「そのまさかですよ。どうしますか、三蔵」




「さっさと街を出る」




「こんなとこで戦えねぇもんな」





「そうですね。行きましょうか。ジープを呼んできます」



八戒が、ジープを迎えに走っていった。


妖怪との戦いが
始まってしまうのかと思うと…覚悟していたはずなのに…迷いと怖さが出てくる…。



「………あ、あのさ…」



思わず、出してしまった声が
不安を含む声だと言うことに気づいた時には遅かった。




三蔵が振り返って、私を見て


「自信がねぇなら引っ込んでろ。だが、昨日のお前は足手まといじゃないと宣言したはずだ。あの威勢はどうした?」

っとバカにするように笑った。



そのセリフと、態度にカチンっときた私は、




「…やってやるわよ。全国一位舐めないでよね。」


っと高らかに宣言した。





「力入りすぎだ。バカかてめぇは。」





「なっ!?!?バカとは何よ?折角気合い入れて…」




「それがいらねぇっていってるんだ」



…確かに。そうかもしれない。
いちいちイラつく言い方なのに言ってること間違ってないから、余計にイラつく。


でも、私の心は晴れやかだった。
不安も恐怖も消え、心が軽くなった気がする。

やっぱり、三蔵ってすごい。



「何がだ…?」


三蔵が迷惑そうな顔を私に向ける。

あ、声に出てたのだろうか…?



「…何でもないっ!」







少し後ろでは、悟空、悟浄、蒼の3人が、



「……何あれ。」




「…喧嘩…かな?」





「三蔵サマも素直じゃないね〜」



っと2人に聞こえない様に、こそこそと話していた。




しかし、



「何がだ。クソ河童。」




の声と共に、銃が突きつけられた。



「聞こえてんのかよ…」





そうこうしていると、八戒がジープに乗って現れた。
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