□第1章
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逆に真実は既にその状況に馴染んでしまったように話しだす。
「あの、信じてもらえないのを承知で言いますけど、私達どこから来たという前に、この世界の住人じゃないので帰る場所がないんです。なので、近くの村で降ろされても困るので…一緒に連れて行ってもらえませんか?!」
断られる事は漫画の流れ上解っているので、あえて最後の頼み事を強調して言ってみた真実。
当然ながら、悟空、八戒、悟浄は困った顔を見せた。
三蔵はブチキレ中なので当然却下といった顔。
そこで申し訳なさそうにまずは悟空が口を開く。
「悪ぃんだけどさ。俺らと居ると危ねぇし、何が起こるか解んないし、連れてく訳には行かないんだよね。」
「加えて、ふつーに野宿とか、餓死しかけたりとか、女の子にはオススメ出来ない旅をしてんのよ。」
「帰る所がないというのには同情しますが、知らない村でも留まっておいた方が身の為だと思いますよ?僕達と一緒にいると、命の保証は出来ませんから。」
やんわりと、けれどハッキリと拒否を口にした八戒。
だが真実は引かなかった。
「それでも付いて行きたいんです!どんな目に遭っても構いません!どうしても、一緒に居たいんです!」
まるでストレートな告白にも聞こえたそれは、しかし三蔵の一言でバッサリと切られる事になる。
「足手まといなどいらん。そもそも重量オーバーだ。」
確かにジープの負担は計り知れない。
それを思えば引き下がるべきなのだろうが、突然舞い込んだ幸運を、そう簡単に手放す事など出来なかった。
悟空と共に居られるなら、どんな苦労にも耐えられる気がした。
だからこそ、真実の頭の中には既に、彼らと離れるという選択肢など存在していなかった。
「何かあったら見捨ててくれても構わない!だから一緒に行かせて!」
必死に懇願する真実に、悟空達は困った顔を見せたが、何となく放って行けない気分にさせられていた。
ただ三蔵は、自分の膝を占領している久美を睨むように見ながら、久美に対して聞いた。
「お前はどうする気だ?」
それまで硬直していた真実だったが、我に返ってハッと三蔵を見やると、
「私も連れて行って。」
と、どこか決意を固めたような顔で返答した。
三蔵はその答えに対し、何も言わなかった。
拒否された訳ではないが、許可された訳でもない。
けれど何故か連れて行ってくれるような気がした。
きっと拒否するならばはっきりと口にするはずだ。
三蔵が何も言わなかった事で、他の三人もあえて何も言う事なく、黙々とジープは近くの村へと走っていた。
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