□第2章
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 三蔵一行に二人の女が加わって、六人の奇妙な旅が始まろうとしていた。
しかし出発の前に一つの問題があった。
四人でも乗っているのが辛いジープに、どうやって六人も乗るのかと――
そこで真実は即座に
「私、悟空と悟浄の間に座る!」
と言って、さっさと自分の居場所を確保してしまう。
どう考えても後ろには三人でも限界を超えている。
取り残された久美はどうしたものかと難しい顔を見せていた。
すると、八戒が何か愉快そうな顔で口を開いた。
「昨日と同じ場所に座ってればいいと僕は思いますけど?」
つまり三蔵の膝の上に座れと?
と、ツッコミたかったが、その前に三蔵が異議を唱えていた。
「ふざけんな!荷台の上でもどこでも他に場所あんだろうが!」
「では三蔵がそちらに移って下さい。女性は僕達と違って繊細なんですから。」
「んなこと俺の知った事じゃねぇ。」
その答えには当然の如く、
「仕方ありませんね。ではここからは徒歩、という事で――」
と、八戒は意地でも反論の余地を与えない事を口にした。
不満たらたらながらも口を噤むしかなくなる三蔵。
だが一番困っていたのは久美であった。
「あの、私落ちなければ何でもいいので…」
三蔵の膝の上など、緊張するどころでは済まない。
むしろ死ぬ、などと考えながら、どう回避すべきか思いつかないが、何とかならないものかと八戒に目で訴えていた。
しかしそれが逆に八戒の加虐心に火を付ける。
「どうしても嫌だと仰るのでしたら、ここに留まりますか?」
ニッコリと笑顔でそう言われて、久美はウッと困った顔をする。
八戒に対しては拒否権などというものは存在しない。
 そんな訳で、移動の際のポジションが決まってしまい、いよいよ奇妙な六人の旅が始まった。
のだが、ジープを走らせながら、旅で最も重要な事をふと思い出した悟空が質問を投げた。
「ところでさ、妖怪達が襲ってきたら二人ともどうすんの?」
それに同意するように悟浄も口を挟む。
「少数なら問題ねぇけど、団体さんだと確実に守れる保証ないしなぁ…」
これに対し、真実は嬉々として答える。
「私、格闘技なら自信あるから大丈夫!守ってもらおうなんて考えてないから!」
自信満々に言える程、確かに真実は強かった。
問題は久美の方にあった。
剣術は少々覚えがあるものの、肝心の武器がない。
今頃それに気付いて焦りを感じた。
このままでは足手まといどころではなくなってしまう。
そんな心配で頭が一杯になっていた所に、間悪く、四人には日常茶飯事な妖怪一団の襲来が訪れた。
三蔵は放り出すように久美をジープから降ろすと、早々に戦闘に向かう。
悟空始め他の三人も同様で、更には真実も意気揚々と戦闘に加わっていた。
その様子をただ見ている事しか出来ない自分に腹立たしさを感じ、久美はギュッと拳を握りしめた。
だがその時、丁度木刀似た木片が目に入り、とっさにそれを手に取った。
殺傷能力など皆無だが、何も出来ないよりはマシだと、襲い来る妖怪を殴り飛ばしていた。
しかし所詮はただの木片。
数匹にダメージを与えた所で脆くも折れていまう。
しまった、と思うも、横目に自分に向かってくる妖怪が目に入り、避けなければと思った所で、間近に銃声の音が響いていた。
見れば自分に襲いかかろうとしていた妖怪を、三蔵が銃で撃ちぬいていた。
助けられたのだと理解出来たが、それを嬉しくも思いながら、しかし悔しくてたまらなかった。
確実に足手まといになってしまったという事なのだから――
対して真実は、見事な格闘術を駆使して、悟空達と見事な連携で対処していた。
「そっちお願い!こっちは私がやっちゃうから!」
「了解!」
完全に悟空達と共に戦える事に喜びを感じていた。
彼らと共に旅が出来たらと、強くなる為に努力してきたのだ。
まさかそれが役に立つ日が来ようとは思ってはいなかったが、大好きな悟空の為に何か出来る事があるのが純粋に嬉しかった。
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