□第2幕
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 幸せな日々というのは長くは続かない。
阿修羅はそれを身を持って体験する事となっていた。
少し前から予感はあった。
だが別れまでは考えていなかった。

 捲簾達が軍の上層部から煙たがられているのは知っていた。
かつて親交があり、今も春嵐が阿修羅である事を知る数少ない人物である、捲簾の現上司・敖潤の兄であり、元上司でもある敖広から話を聞いていたからだ。
しかしまさか、天界を揺るがす様な事を起こすとは予測していなかった。
そして李塔天の企みも薄々気づいていた為、捲簾達が反乱の道を選ぶしかなかった経緯から、罪悪感ばかりが募っていた。
上手く下界へ逃げてくれればと祈っていた。
生きてさえいれば、また会える事もある。
その可能性に賭けていた。
だがその願いが破れた時、阿修羅は絶望の淵に立たされた。
己の存在意義をまたも奪われたのだ。
それを知った時、阿修羅は狂ったように笑っていた。
友人でもある敖広ら春嵐の正体を知る者たちが『春嵐』の姿を見たのは、それが最後だった。
そして封印された肉体は、まるで怒りを吐き出す様に熱を持ち、それが長らく天界を歪める事となっていた。
自分が封印されていなければ助けられた命の重みと、捲簾との別れに対する悲しみとで、阿修羅の肉体は血の涙を流し続けたという。
大地を焦がし、揺るがすものとなって――
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