短編集

□摂政と妖精
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 プロローグ

「なんでこうなったんだろう」
 水面に浮くアタイは何度も思う。
 アタイは幻想郷サイキョ―なのに、全身傷だらけ。挙句にこの醜態。幻想郷とまでは言わなくても妖精の中ではサイキョ―。
 アタイたちをイジメてくる奴らをイジメ返してやったのも少なくもない。
「あんな、ヒトごときに」

 あいつは突然やってきた。
「この湖こんなに広かったかしら? 霧で見通しが悪くて困ったわ」
 いつも通り迷い込んだヒトをアタイの罠に引っかけた。
「もしかして、わたしって方向音痴?」
「道に迷うは、妖精の所為なの」
 アタイはヒトの前に姿を現す。
 アタイが立つ湖ほどに青い髪をなびかせる。氷の羽をいつもより大きくして、アタイをより強く見せる。
「あらそう? じゃ、案内して。ここら辺に島があったでしょ」
「あんた、ちったぁ驚きなさいよ! 目の前に強敵がいるのよ!」
「標的? こいつはびっくりだぁね」
「ふざけやがって! アンタなんて、イギリス牛と一緒に冷凍保存してやるわ!」
 アタイは短気だからこんなふざけた奴に簡単にキレる。キレて戦ってもどうせ勝てるのだから問題ない。
そのはずなのに――
「一応、名乗っておくわね。わたしは博麗神社の巫女、博麗霊夢」
 霊夢と名乗る人はアタイが放った氷の矢を軽快にかわし、その数を上回る札を、たしか夢想封印とか言う、アタイに放たれた。アタイはそのほとんどを避けきれず、その度に傷を負った。
「やばい、これ以上は!」
「じゃあ、道案内よろしく」
「マルキュー!」
 霊夢が放った札はアタイを湖の底まで飛ばした。
 アタイは気を失った。体の傷は死んでいなければ、すぐに治るからどうでもいい。それ以上にアタイのプライドが強く傷つけられた。
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