桜物語への扉

□私の宝物‐平助×千鶴‐
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‐私の宝物‐

とても、暖かい…。私は、心地よい日なたの中にいた。
頬に日なたとは別の心地よい温もりを持った何かが触れた。

「千鶴……」

その声に返事するように、私は閉じていた瞼を開く。

「へい…すけ君…」

そこには、優しく微笑む平助君の姿があった。

「寝てたな。そんなに、ここは気持ちよかったか?」

平助君は、そう言うと、私の頬に置いた手を離して私の頭を撫でた。
それは、良い心地で、とても安心する。

「うん…、それも、あるけど…」

「ん?何だ?」と平助君の返事がくる。



あぁ――…、なんて幸せなんだろう。
つい最近まで、様々な恐怖と戦ってきた。
何人も私の目の前で亡くなった。
毎日、己の死という恐怖、大切な人達の死という恐怖で怖くて怖くて震えていた。

『千鶴―――』

だけど、その恐怖に私は立ち向かえれた。

『大丈夫…俺はお前の傍にいるよ…』

あなたのおかげで、私は戦えた。だから、今がある。

そんな、あなたの傍にいれる。とても、幸せでいっぱいだった。



「どうした?」

平助君は、私を心配するように私の顔を覗き込む。

「ううん、幸せだなって……」

「え?どういうこと?」

平助君の問いに、私は「何でもないよ」と微笑む。

「何だよ、それ?まだ、寝ぼけてんのか?」

「ふふっ、違うよ」

私は、寝ていた体を起こし、隣で座っている平助君の肩に頭をそっと置いた。

「っっ?!///千鶴っ?!///」

「平助君といると、とても心地良いよ」

「は?」と平助君は声を出し、私に目を向ける。

「えっとね……太陽の日差しも気持ちいけど、私は、それよりも、平助君…あなたの傍にいることが、一番心地良いんだ。幸せすぎて、これは幻じゃないかって不安になるときもあるよ…」

私は、平助君の肩から頭を離し、平助君の顔を見る。そして、平助君の膝に置かれた彼の手に自身の手をそえる。

「千鶴………」

平助君は、不安そうに私の目を見る。

「でもね、どんなに、不安になっても、平助君が私をさっきのように起こしてくれる。だから、きっと大丈夫。私はあなたといられるこの幸せが…あなたが私にくれたものと見合うようなものを自分も届けていきた――っ」

私の唇に平助君の唇が重なっていた。
突然のことに私は驚いていると、平助君は私の口元から自身の口元を離し、真剣な…そして優しい眼差しを私に向ける。

「きっと、じゃないさ。絶対大丈夫だ。なんたって、俺と千鶴がいるんだからな!」

平助君は、そう言うと、いつもの明るい笑顔を見せた。

「うん、そうだね」

胸の奥が熱くなった。そう…大丈夫。大丈夫、あなたと私なら…。
瞳に涙が浮かぶ。流れ落ちていく涙を平助君は指で拭ってくれた。

「それにな…、もう届いてるぜ?俺だって、千鶴からいろんなもん貰った。いつ、この体が消えるかもわからない恐怖で震えていた時でも、お前は俺を見守っててくれた。傍にいてくれた。共に生きていきたいと言ってくれた……。俺の方がお前にいっぱい大事なもん貰ってんだぜ?」

「平助君……」

平助君は、私の腕を掴み自身の胸へと私を引き寄せる。

「なんだか、俺たち似てるな」

「ふふっ、そうだね。………平助君、私…とても幸せだよ」

「俺もだ」と平助くんは言うと、また、私に口付けた。

すると、お腹の下の辺りでに何か違和感を感じた。何かが動いた気がする。
これって…‥まさか?

「どうした?千鶴?驚いた顔して?」

「ううん、何でもないよ。ふふっ」

「んだよっ?!教えろよ、千鶴」

「何でもないの、本当に」

「はぁ?意味わかんねぇ」

平助君は、すっきりしないというように
頭を掻く。

私は、まだ小さな新しい宝物の存在を感じながら、平助君の様子に思わず笑ってしまう。

「千鶴ー、何、笑ってんだよ!何か隠しているんだろ?!教えろって!」

「平助君には後で教えるよ。楽しみにしててね?」

「は?今日の千鶴やっぱおかしいって」

平助君は、私が今教えてくれないことに、どこか、不安な顔をする。

私は、お腹をそっと撫でながら、平助君の様子に笑みがこぼれた。



それから、私はちゃんと医者に見てもらい、そん新たな存在を確信にして、平助君に教えるのは、また別の話。

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