BL

□ずっと
1ページ/1ページ




呼ぶ。
繰り返す。
しつこいって言われるまで。

触れる。
握る。
何度も、何度も。



「ンウっ…」

薄暗い部屋の見慣れた天井。
普遍的な箱の中だけど、乱れた息、ベッドの軋み、淫猥な水音。
それらが響くだけで、この場がまるで舞台の上みたく錯覚する。

煌く照明も目を見張る衣装もないけれど、俺のケツの中に指突っ込んでるこの男によって、俺は夢を見て、希望を得る。

「平気?」
「う、ンっ」
「ふーん」

平気?と訊ねながらも、俺が平気でないことを高橋は知っている。
だって聞いている本人が俺をこんな体にした張本人で、いまなお俺の腸の壁を這いまわしているんだから。

平気なわけがない。
熱を知る体はビクリとはねて、火照りを増し、穴はぐつぐつと潤いを求めてしまう。

「ほんとに平気なの?」
「平気、痛くねから、早くシろっ」
「口悪りぃー」

そう楽しそうに笑うと自分の高ぶった熱を不恰好に取り出し、俺のケツにあてがった。
ヒクヒク動いていた穴がピタリと塞がれた。それだけでめちゃくちゃ興奮してしまう。

(俺、いろんな意味でだめかも)

「あっ、アァ」

ゆっくり、じわじわ。焦らしながら俺の中に高橋が入ってくる。直に触ったらヤケドするんじゃないかってくらい熱いソレに体はビクビクと震えだす。

「あっ、はぁ、あっ、隆治」

俺の名を呼びながら体を揺らす。
熱いチンコが中で擦れるたび涙がしんから流れていく。

嫌だからじゃない。
嬉しいんだ。

名前を呼ばれることも、強く求められることも。
けれどあまりの激しさと快感からまともな言葉は出てこない。
だから、高橋の首に手を回した。

もっと、もっと。
離れないで。






何度も繋がって、ようやくお互い満腹になって寝る準備を整えた。

「あーやっばい。今日マジでヤリすぎた」
「ほんと、ヤられすぎた。明日仕事大丈夫かな」

途中は気持ちよくてすっかり失念していたけれど、明日はいつものデスクワークだけでなく少し営業みたいなこともするのだった。歩けるのか俺。

「あー悪い悪い」
「謝り方チョー軽りぃ!」
「中出ししてねーじゃん。それにほら、俺掘られたことねぇからよくわかんない」

でしょーね!
そりゃナマでしないっつー意外にも律儀なところは高橋を見直したけどさ。

ゴム有りかなしかってだけじゃなくて、経験者でも排泄器官にモノ突っ込むのはあとあと違和感が残って仕方ないんだよ。
っていっても経験ないんだから、わかんない、の一言で済ましちゃうんだろうねコノヤローは!

「あ、じゃー今度高橋に突っ込むか」
「はぁ!?」
「うそだよ。お前のよがってる姿とかぜってぇ気持ち悪いもん」
「お前、言いたい放題だな…」
「あ、宿題にしよう!ひとりでなんか突っ込んでみといて、あとで感想聞かせろよ」
「ひとり野菜プレイ!?」
「なんで野菜!?お前普段どんなAV観てんだよ!」

普通突っ込むっつったらちゃんとしたオトナのオモチャだろってつっこんだら、高橋はあぁそっちねと納得した。
…いやいやお前持ってねぇくせになに納得してんだよ、と言おうと思ったけど、持ってるから今度使う?とか言われたら取り返しがつかないので、とりあえずこの話題はここで終わりにしておこう。そうしよう。

「隆治?眠いなら寝ろよ?」
「…別に、眠くない」
「はは、嘘つけ。目、とろんとしてる」

高橋の手が俺の頬を包み、目の下をそうっと親指で撫でる。
確かに眠い。
でもまだ寝たくない。
セックスの後の高橋はなぜかいつもより優しいから、まだしばらくそれに甘えていたいんだ。

「…高橋…」

名前を呼んで、背中に手を回し、首元に顔をうずめる。
嗅ぎ慣れた匂い、いつものあたたかさ。夢じゃないって思えることの、幸せ。

「…隆治…」

ぽんぽんと、子供をあやすように頭をなでられる。
恥ずかしくて、気持ちよくて、嬉しくて、ちょうど目の前にある高橋の肌にちゅうっと吸い付いた。
離してみれば淡いピンクになっているその後が可愛くて、調子に乗っていくつもつけてしまう。

「んッ、隆治…」

肩付近にキスしているだけだから感じるはずなんてないのに高橋の声は妙に艶っぽく、それに興奮している自分がいた。

「もっとシて。口にも、ほかんとこにも」

高橋のいつもよりずっと艶かしい声にすっかりあてられた俺は誘われるまま上にのり、額や唇にキスを繰り返す。

「気持ちいいの?こんなんが」
「すげーキモチイイ。隆治がいろんなもん俺に与えてくれてるって思うし」
「…意味わかんねぇ」
「隆治に好きだって言われてるみたいだからキモチイイんだよ!」

高橋はくしゃっと、ふやけたように笑って俺の体を引き寄せる。
俺の方が細いとはいえ重くないのかな。

「隆治が俺のことすげぇ好きなのはまぁ知ってんだけどさ。言われれば言われるだけ、示されれば示されるだけ、やっぱ嬉しいもんだし」

高橋の長い髪が首元をさらさら撫でる。くすぐったくて、でも不思議と気持ちよくて。

まぶたが重い。
嫌だな、まだ寝たくないな。

朝になったら準備して仕事に行かなくちゃ。
だから今日のうちに甘えとかなきゃ、確認しとかなきゃ、幸せ溜めておかなきゃ−…。

「おやすみ」
「高橋…」
「うん」
「俺、…」

高橋が好きだ。
すげぇ好きだ。
下の名前で呼べないくらい。

もっと一緒にいたい。ずっと抱かれてたい。
笑顔も、拗ねた顔も、何か企んでる顔も、全部好き。
恥ずかしいし、ぜってぇバカにされるし、…さめちゃったら嫌だし、普段は口には出さないけど。

「明日もがんばれよ」

いつも願ってんだ。お前は知らないだろうけどさ。

(夢がさめないように、って)




END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ