夜が朝に染まるまで

□きなこ味A
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4月

桜が満開の日。
私は累と同じ時間を過ごしていた。

「だから言ったでしょ、ユメさんは今の代表に必要だって。キラさんも戻って来るって」

合宿に呼ばれたと聞いた時、それはそれは嬉しそうなドヤ顔でそう言った。
私は、涼しい笑みを送っただけなんやけど。

チョコレート事件(2月)と飴玉事件(3月)から私たちは何もなかった。
どっちもアクションしなかっただけなんやけど。

なんて言うか、私がはぐらかしたから、曖昧になってるところは否定できない。
だから付き合うとか、好きとか、そういう形式的なものはないし、大人のお付き合いと言うには私たちはちょっと子どもな気もする。

言うなれば、仲間以上恋人未満?

「なんかユメ、雰囲気変わった?」
「そうですか?」

合宿中の食堂で、正面に座っていたテンさんがふとそんなことを言った。

「うん。なんか…綺麗になった」
「はぁ…そうですかね」

そういうテンさんだって幸せオーラが出てますよ。
とは言わず、ここは笑って流しておく。

「ユメさん、しーたけ残しちゃだめですよ」

そんな私の隣に座ってた累。
何を思ったのか、突然私のお皿のしいたけ(別に避けてたわけではない)をお箸で掴んだ。

「なによ急に」
「テンさんにラブラブっぷりを見せつけようかと」
「あほなん?」
「え〜、あーんしてくださいよー」

分かりやすく、見えない耳と尻尾を垂れ下げた累。
可愛いから食べてあげたいのは山々やねんけど、場所をわきまえようか?

「ユメさん〜」
「なんや…そういうこと?」
「え。いや待ってくださいテンさん」
「ゆ〜め〜さ〜ん〜」

累は隣でしいたけしいたけうるさいし、テンさんは何故かとっっても優しい顔をしてるし、どこをどうしたらこうなったんかな。

「あーもう!」



結局、累が掴んだしいたけを食べた私は、とっても気分が悪くなりました。




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