魔法の世界
□10年
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2ヶ月がたち、今年も一年が終わった。僕は、この日が来るのが正直怖かった。
「卒業おめでとう、セシリア」
「ありがとう」
セシリアがホグワーツを卒業した。
「ほらリーマス、そんな顔しないで」
「……うん」
「手紙は送るから。あと2年、頑張って」
「リーマス、セシリアを困らせちゃダメだよ」
「らしくねーぞ」
ジェームズとシリウスに言われ、引き止めるように握っていた彼女の手を名残惜しく離す。
「じゃぁ、ふたりともリーマスのことお願いね」
「うん。セシリアも頑張って」
列車に乗り込もうとしたセシリアが戻ってきた。
「リーマス、手だして」
「?」
言われた通りに手を差し出すと、その手を包み何かを握らせた。
「今、あげられるものこれしかなくて」
手を開いてみると、小さな石が散りばめられたシルバーのリングが乗っていた。
ホグズミードで見つけて、お気に入りだからとセシリアがいつも身につけていたものだ。
「これ、君のお気に入りだろ」
「だからあなたに持ってて欲しい。お守り」
「……」
「ずっと会えなくなるわけじゃないんだし、休暇の時は会いに来てよ」
「……わかった。ありがとう、大事にする」
頭一つ分小さい彼女は、背伸びをして、触れるようにキスをしてくれた。
「……またね」
「うん、また」
列車に乗り込んだ彼女を見送って、また僕は、学校での生活に戻った。
◇
数ヶ月も経てば、セシリアがいなくなった学校生活にも慣れてきた。もちろん、寂しさはあるが、いたずら好きな友人がいるから退屈しない。
「セシリアとはまだ続いてんのか?」
「勿論。フクロウも欠かさない」
「フクロウが可哀想に思えるくらいやり取りしてるからね」
「そんなにしてないよ。セシリアも忙しいみたいだから」
「今、何してるの?」
「マグルの街で、小さなブティックを開いてるって」
「なんでまたマグルの街で……」
「ご両親の故郷らしい」
「へぇ、そういえば、マグル生まれって話してたな」
「ご両親も一緒に?」
「いや、彼女の両親、もう居ないみたいだから、ひとりじゃないかな」
「……そっか」
「次の休暇には逢いに行くのか?」
「もちろん」
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