Other
□sadness→happinessへの跳動
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猫娘は、泣いていた。
ただ一人、妖怪横丁のどこかにある湖で……彼女は泣いていた。
鬼太郎に好きな人ができたからではない。長年の一番の相棒であるクロが、今朝、人間界で車に跳ねられて亡くなってしまったからだ。病院に行ったものの、既に手遅れだった。
確かに猫娘にはクロ以外にも仲間はいたが、中でもクロは常に猫娘のそばにいたとても忠実な猫で、猫娘にとっては、とても大切な存在であった。そんなクロが……亡くなってしまったのだ。悲しまないわけがない。
「クロ………クロ……!」
何度猫娘が呼んでも、遺体化したクロは応えない。だが、猫娘は、どうしてもクロの死を受け入れることができずにいる。だが、受け入れなければ、クロは安心して成仏することができない。
「ねえ…私はこれからどうすればいいの…?」
応えられないのは、わかってる。でも、何よりも大切な相棒が亡くなってしまったことだけはどうしても受け入れたくなかった。
しばらく猫娘が泣き続けていると、背後から声が聞こえた。
「泣いてるけど、何かあったのかい?」
声の主は猫娘の想い人でもある鬼太郎で、今だけは自分の悲しみを一番知られたくない人物だった。彼の前では、常に元気な自分でいたかったから。だが、鬼太郎は気にせず猫娘の隣に座る。そして、猫娘が抱えているものに気づいた。
「あ、その猫死んでしまったんだ……」
「うん……今日の朝、バイトの帰りに車に跳ねられたんだ。病院に行ったんだけど、もう……手遅れだって…」
話しているうちに、あの記憶が蘇ったのか、涙が溢れてくる。
「だけど…私はどうしてもクロの死を受け入れることができないの……」
「君の一番の相棒だったからね。」
「うん………」
クロがいつも猫娘と共に行動していて、いつでも猫娘に情報提供などをしてくれていたことは、鬼太郎自身も知っている。
「猫娘。」