Sugiyama & Tamae

□Twilight of my sorrow
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今日の放課後も、たまえは音楽室で、先生の許可を得て完全下校時刻になるまでピアノの練習をしている。

というのも、もうすぐ今年初めての発表会があるからだ。本番で失敗したら絶対に恥ずかしいことになり兼ねない。そうなることだけは嫌なので、ピアノのレッスンの日以外は音楽室で練習するようにしている。

ガラガラ……
誰かが入ってきた。

「通りで綺麗な音色が聞こえたわけだ。」

「杉山君!」

こういう時間に入ってくるのは普通先生なのだが、自分の彼氏でもある杉山だったので、自分も吃驚している。

「いつもここで練習してるのか?」

「ピアノのレッスンの日以外はね。あっでも、発表会がまだまだのときはやってないよ。でも、その日がもう近いから……」

「そっか。てか、家では練習しないのか?」

「家で練習すると、いつもお父さんが写真撮るから、まともに集中できないんだ…」

「なるほどな……」

そう。たまえの父親は(主に自分の娘の)写真を撮るのが好きな上に、未だに子離れできない。集中できなくて当然だろう。

「今回の発表会は今年初めてのものだから、絶対に失敗しないようにしたいんだ。」

「真剣なんだな。てか、もうとっくに完全下校時刻過ぎてるぞ。」

「えっ!?本当に?」

現在18:30
完全下校時刻は18:15なので、完全に指定された時間をオーバーしている。

「送ってってやるから、一緒に帰ろうぜ?」

「うん、ちょっと待って!」

支度を済ませ、音楽室の鍵を返して学校を後にする。すると、杉山があることに気付く。

「そういえばお前、手袋は?」

「えへへ……忘れてきちゃった。」

「珍しいな。お前が忘れるなんて。なんかあったのか?」

確かにまる子ならわかるが、たまえが防寒具を忘れることなんて滅多にない。

「最近、寝不足気味なんだ。帰って勉強もしなくちゃならないし……」

「勉強は何時間やってるんだ?」

「最低3時間はやってるよ。」

「3時間!?そりゃ寝不足になるよ。ピアノの練習するだけじゃなくて、帰れば勉強って…ぜってーキツいだろ。」

「それはわかってるんだけど…」

すると、さっきまで寒そうだったたまえの手が突然温かくなる。杉山が手袋を着けている手を繋いでいた。

「杉山君!?!?」

「こうでもしないと、寒いだろ?そのままだと、風邪ひくだけじゃなくて、発表会まで出れなくなっちまうかもしれないぜ。」

もしここで風邪をひけば、きっと発表会にも支障が出てしまうだろうと杉山は予想する。このとき、たまえは杉山の優しさを感じた。

「そうだよね。ありがとう!」

「あまり無理せず頑張れよ。」

「うん!杉山君もサッカー頑張ってね!私、応援してるから。」

「おう!」

数分後にたまえの家に到着し、2人は別れ、たまえは食事と入浴を済ませた後、父親に邪魔されながら勉強をして、眠りについた。
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