Sugiyama & Tamae
□世界に見下されても……
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とある国、そこは国民のみんなが仲良く、穏やかに暮らしている。
暇さえあれば好きなことがいくらでもできる。
紛争も全くないので、その国は世界一平和な国と云われていて、皆は幸せいっぱいの生活を日々送っていた。
ところが、ある町に、それとは真逆の生活を送っている少女が住んでいた。
彼女の名は、タマエ・アスパイク。
茶色の三つ編みと眼鏡が可愛らしい少女で、彼女も前までは皆と同じように幸せいっぱいの日々を過ごしていたが、ある理由で辛い日々を送らなければならなくなってしまった。
なので、今日も辛いことが始まった。
「おい、酒買ってこい!」
いつものように父に怒鳴られる。彼女の父親も、前まではとても優しい人だったが、ある日のことを機に、暴力的な性格へと変貌を遂げてしまった。
タマエは素直で純粋な性格なので、いつもなら言われたことは従うのだが、彼女は指定の年齢に達していないので、お酒を買うことは禁じられていた。それを理由に、今回に限っては従おうとはしなかった。
「でも、私、まだ二十歳じゃない……」
「俺に口答えするな!!」
案の定、ぶたれてしまったが、仕方のないことだった。
タマエは現在12歳。お酒を買える年齢にはまだまだ達していない。変装してもすぐにバレるだろう。
次に、父親が口にしたのは、信じられない言葉だった。
「俺の言うこと聞けねえなら、さっさとこの家から出ていけ!!」
タマエはもう暴力的な父親と暮らすのは嫌だったので、素直に受け入れた。
行き先は、母親がタマエのためにこっそり残しておいてくれた別荘。ちなみに父親はその別荘があることを知らない。
そこなら、少しでも辛い日々から逃れられるが、お金がない。母親の金は父親が全て使い切ってしまった。なのでお金は自分の得意料理でもあるお菓子を売って貯めることにした。
その別荘の庭には、木の実が幾つか実っているので、食事はそれほど困らないだろう。
別荘の冷蔵庫を開けてみると、なぜか母親の得意料理であるパイの生地が。タマエもパイ作りは得意なので、売るものはそれに決定。
明日から実行することを決心した。