Ohno & Maruco

□No Family Christmas
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冬といえば、クリスマス。

クリスマスといえば、家族のみんなでケーキとかチキン食べたりクリスマスプレゼントもらったり……。子供にとっては楽しみな行事の一つでもあると思う。

でも、もうあたしたちは高校生。人によっては友達とか彼氏と過ごしたりする者もいるけど、あたしはその例外だ。女友達はみんな用事が入ってるし、男子とは……話す相手すらあまりいない。

商店街を見渡せば仲良さげなカップルとかわいわいはしゃいでる女子高生とかいるから余計に羨ましくなる。因みに今日はクリスマスなのに何故か両親がいない。明日の夜には帰るっぽい。お姉ちゃんも彼氏と過ごしてる。


「クリスマスで1人とかありえないよ〜…」


これじゃあ俗に言う『クリぼっち』じゃないか。彼氏とかならわかるけど家族誰もいないって!おかしいでしょ……

小さい声でボソボソ呟いてたら、誰かに腕をつかまれた。


「ねえ君1人?小っちゃくて可愛いねー。俺とどっか行こうよー?」


え?これって……ナンパ?
可愛いって言われたのは嬉しいけど……。


「い、いえ……そういうのは」


無理だと言いたいけど、怖くて言えない。抵抗したくてもできない。


「いいじゃーん。行こう行こう!」


その人はあたしの話を全く聞いてくれず、無理矢理にでもどこかへ連れていこうとする。


「やめて、やめてよー!!」


いくら叫んでも男は怯まない。


『もう終わりだ……』


そう思った。でも、次の瞬間


「ぐはっ!」


視界がガラリと変わってなにが起きたのか分からなかったけど、どうやら助かったらしい。

目を開けるとそこには……


「大丈夫か!?しっかりしろ!」


大野君と知らない男性がいた。なんで?


「くそっ!覚えてろよ!」


殴られたせいか、あたしをナンパ?した男性はいなくなった。


「2人ともありがとう!でもなんでここがわかったの?」


「暇でぶらぶら歩いてたら、途中であの男がお前を引っ張ってるのを見たんだ。だからこりゃ危ねえなって思って。」


大野君って普段の人には冷たいのに、こんなに優しいときもあるんだよね……嬉しいけど。ところで隣りの背の高い人は誰なんだろ。優しそうな人だね。


「お前、優しいところあんじゃん。」


「賢人さん!こんなとこで言うのやめろよ!」


賢人って呼ばれた人が大野君をおちょくってる。仲いいんだな。


「ははは!ごめんごめん。ところで君、大野麻璃弥って知ってるよね?」


もちろん知ってる。大野君の親戚で名字は一緒だけど実姉じゃないんだよね。


「あの娘、実は俺の彼女。」


賢人さんの……この人の…彼…女?


「えええええ!?!?そ……そうなの!?」


驚きだよ!麻璃弥さんに彼氏がいるっていうのは知ってたけど、よりによってこんなに素敵な人だったなんて!


「うん。だから、けんいちとか麻璃弥から君の話をよく聞いてるんだ。まるちゃんっていうんだよね?俺もそう呼んでもいい?」


「もちろんいいよ!よろしくね!」


嬉しい!初対面なのに仲良くなれた!


「ところでさくらって今1人なのか?俺ら今から姉さんの家でクリスマスパーティやるんだけど、もし1人ならお前も来るか?姉さんも喜ぶと思うぜ?」


「うん!行きたい!明日の夜まで家には誰もいないから何しようかなって思ってたんだ。」


「じゃあ決定だな。」


良かったー。クリスマス終わるまで暇だから何してようかなって思ったけど、よりによってパーティに参加できるって。というか久々に麻璃弥さんに会えるって!




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数分歩いて、漸く麻璃弥さんの家に着いた。

ピンポーンと呼び鈴を鳴らせば、麻璃弥さんが優しく出迎えてくれる。


「いらっしゃい!まるちゃんも久しぶりだね!あがってあがって!」


やっぱり麻璃弥さん美人だなー……


「さくら、なにぼーっとしてんだよ。大丈夫か?」


あ、やばいやばい。さらに綺麗になってたから見とれてた。やっぱりあたしとは全然違うな。


「準備ももう完了してるから、めいいっぱい楽しんでってね!」


「おっ!さすが麻璃弥。用意周到だな!」


「ちょっと賢人!大袈裟なこと言わないで!」


部屋に入ればテーブルにはチキンとかケーキとかいろんなものが。こりゃすごいね。早く食べたい!


「さくら、食いすぎて太るなよー?」


美味しいものがいっぱいあるなと思ってたら大野君にからかわれた。


「なっ…わかってるよ!失礼な人だねえ!」


食べすぎないようには気をつけてるつもりだけど……美味しいからつい食べすぎちゃうんだよね。トホホ、


「まあまあ。そんなこと言わないで食べようよ。せっかく用意してくれたんだから。楽しまないと!」


「そうだよ。クリスマスなんだから嫌なこと忘れようよ。とりあえず座って?」


さすが2人!わかってるねえ。
あたしの隣は……大野君だ。


「Merry Xmas!1年間お疲れ様!」


スパークリングを持った麻璃弥さんが掛け声をあげたら、あたしと大野君が持ってるコップと、賢人さんと麻璃弥さんが持ってるグラスがチャリンと音を立てる。なんかお洒落だねえ。

乾杯の後に、ケーキ、チキンとかの豪華な食べ物を取り分けていく。


「美味しそう!早く食べたいよお!」


「おいおい、落ち着けって。焦んなくても食いもんは逃げねえから。」


あたしたちがおかしなやり取りをしている間にすでに取り分けを終えていた。やっと食べれるよう!


「よかった。まるちゃんいてくれて。チキンが一本余ってたから取り合いになってたかも。じゃあ食べるか。」


ってことは……あたしゃ運がいいねえ!こんな美味しそうなもの食べれるんだから、大野君に感謝だね。

早速あたしはチキンに頬張る。


「うーん、美味しい!大野君、誘ってくれてありがとう!あたしゃ幸せ者だよー。」


「ったく大袈裟だなあ。」

呆れた顔をして笑う大野君。やっぱりいいやつだねえ。他の人には意地っ張りなのに。

そんなこと考えてたら、賢人さんがバッグの中から細長い箱を取り出した。これはもしや……


「麻璃弥、これ。」


「え……嘘でしょ?」


突然のことに麻璃弥さんが絶句している。


「嘘じゃないよ。今日は聖なる日でしょ?それ、開けてみて?」


言われるがまま箱を開ければ、小さな雪の結晶がついたブルーのネックレスが輝いている。
やっぱり付き合ってる人はこんなもんなのかな?


「賢人……ありがとう!すっごい嬉しい!でもなんで今なの?」


「それはね……」


賢人さんが麻璃弥さんに耳打ちした。


「ああ、納得。そういうことね。」


2人がニヤニヤしてる。しかもこっち見てる!
なんか怖い。


「姉さん、何でこっち見てんだよ。」


「なんでもないよー?」


絶対そうとは思えないけど……とりあえず食べよう。まだ美味しいものいっぱいあるし。

そして、あたしたちは再び食べ始めてあっという間に皿にあったものを平らげてしまった。


「ああ美味しかった!」


楽しかった!ケーキもチキンもすごい美味しかったし、今日みたいに楽しい日はいつまで続くんだろう!

ちらっと大野君を見てみると、顔が赤くなっていた。なんでだろ。


「なあ、明日の夜まで両親いねえんだろ?姉さんの部屋だけど……泊まっていかねえか?俺も両親いねえから。お前さえよければの話だけど……」


え?ここ麻璃弥さんの家だよね?


「え……麻璃弥さん、大丈夫なの?」


「別にいいよ。まるちゃんの家族今日は家に誰もいないんでしょ?ずっと家に1人とか寂しいじゃん?うちでよければ歓迎するよー?賢人もここに泊まるし。明日の夕方までみんなでいようよ。服とかもあたしが貸すから。」


「じゃあ……そうしようかな?」


そう言ったら、賢人さんと麻璃弥さんがまたこそこそ話を始めた。成功だなとか聞こえる。どうやら大野君も聞こえたようで。


「姉さんたち……さっきのはまさか…」


賢人さんと麻璃弥さんが再び笑い始めた。


「けんいちって鈍感すぎるから賢人が近くでクリスマスプレゼント渡すことで勇気出してもらおうとしてたんだって。」


「そういうことだよ。けんいち。まるちゃんの前となるとお前は……」


そんなことだったのかと思っているあたしとは対照に、大野君は「最悪だー」と嘆いている。


「もうみんな食べ終わったみたいだね。あたしはもう入ったから、みんなお風呂入んな?」


「そうだな。けんいち、入ろうぜ!」


「さくら、風呂から出たら俺んとこ来い。」


一体何が起こるんだか。大野君がそう言った後、お風呂場へ行ってしまった。
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