第三章「三日目」

□第十三話【丁くんの嫉妬?】
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ガチャッ






『ただいまー丁くん』






シーン...

一切返事が帰ってこない、静かな空間。
まるで丁がいなかった時のいつもの日常のようだ





『...(昔に戻ったみたいな感覚ね)』





そう思いながらリビングへ向かう




『丁くん?いないのー?』





リビングを見渡してみると、すぐに見つかる
丁はソファに座り、脚をパタパタと揺らしていた

吉良はダイニングテーブルに荷物を置く






『もー居るならお帰りの一言くらい言ってよー!!』

「...おかえり、なさい」




丁はポツリと吉良の顔も見ずに言う





『...なんでこっち見ないのかな?』

「.........」





吉良は丁の目の前まで行き、身を屈め目線を合わせる
しかし丁は何事もないかのような素知らぬ顔をして、目を合わせようともしない





『昨日も言ったと思うけど、言葉で伝えてくれなきゃ人には伝わらないよ?』

「......」






丁は顔を俯かせた
無表情から少しだけ、感情が込もる




「...何でも、ありません。お気になさらず」

『ダメ。言わないと許さないから』

「許さないとは具体的にどう許さないのですか?」

『今はそんなこといいの。話はぐらかそうとしないで』


「....」






丁は沈黙する。


少しの間が開く
その間、吉良は静かに丁が言うのを待つ





「...正直な話、私にもわかりません」

『...え?』




唐突な丁の言葉に吉良は素っ頓狂な声をあげる




「私にも分からないのです。何故自分がこんなに苛立ってるのか不思議なんです。昨日の...あの時の感覚に似てます」

『昨日?』




吉良は疑問符を浮かべ、天井を仰ぐ





「はい。吉良さんが甥っ子さんの話を少しだけ話された時のことです」

『甥っ子...あーあの時か。買い物に行った時のことだね。その時の感情に似てるの?』


「...はい」





二人はうーんと悩み、頭を捻る






『(そういえば丁くん、買い物に行く前の支度してる時もちょっとピリピリしてたな...)』


「なんな、のでしょうか...」





すると吉良は、ピーンと何か思いついたような顔をする





『じゃあこうしよう!!私が質問するから〈はい〉か〈いいえ〉で答えてね?』

「え?は、はい」


『じゃあ第一問目!!』





吉良はじゃじゃんっとどこからともなく音を出し、質問する




『(これで試してみるか)もし、私がこの家に男性をあげたら拗ねる?』

「はい」



(あっ秋夜君ダメかもしれない)





どこかで秋夜がくしゃみをしているとかそんなのは、また別のおはなし




『次、第二問目!!丁くんと私と私と同じ年くらいの人が仲良く歩いてます。男性が丁くんと仲良くしたそうな目で見て、手を繋ぐよう言ってきます。怒る?』


「はい。付け加えるなら、手を叩いて吉良のみ連れて何処かへ行きます。正直その方邪魔です」



(ぐはっ完全な嫉妬ですやん丁くん!!)





吉良は心の中で鼻血と吐血をした。
心の中なのでセフセフ。





『じゃあ最後の質問ね。私のこと、どれくらい好きー?』

「どれ、くらい...」


『身体で表現してもいいよ?』





丁はしばし考える。

吉良はわくわくとした目で待っている
正直、最後の質問は完全に自己満だ
そしてまだ3日しか経っていない




「じゃあ、これくらい?でしょうか」





丁はそう言うと、吉良の腰にしがみつきぎゅうと締め付ける




『わわっびっくりしたー』

「身体で表してもいいのでしたら、これくらいです」




丁はそう言ってさらにぎゅうっと抱きつく





『...計りようがないね。じゃあ言葉で言えばどのくらい?』

「...好きに大が2つ程つくくらいです」



(はい死にましたー私丁君の可愛さに死にましたー)






丁は頬を赤らげに染めて、ポツリと言った
そして吉良は丁のその行動で逝った。


丁は吉良の身体に顔をうずめて、服をぎゅっと掴む





「...あの人は何方だったのですか?凄く気になります」





丁は顔を必死で見せないよう吉良の服で隠す




『あの人はね、仕事での仲間で部下っていうものなんだよ。下っ端とでも思ってくれてたらいいかな?』

「下...」





丁は顔を隠したまま、ポツリと繰り返す




「...あの人と私、吉良の中ではどちらが下ですか?」

『アイツに決まってるじゃん!!私は何より誰よりも丁くんが一番大事なんだよ?』





吉良はそう言うと、丁を服から離させ同じ目線にまで屈む
そして優しく頭を撫でる




「...本当ですか?」





丁は頬を染めたまま、不安そうな顔で見つめる




『本当だよ。私は丁くんがだーい好きなんだもん!』

「んむぐっ」





吉良はそう言うと、丁をぎゅっと抱きしめた
丁はそれに応えるように恐る恐るといった感じで短くて細い腕を吉良の首に回してくる
力強く、でも怖々といった感じで





『だから、嫌な気持ち――もやもやした気持ちになったらちゃんと私に言うんだよ?私までモヤモヤしちゃうから、さ』


(めっちゃ可愛かったけどな!!)



「...はい」





丁はそう言うと、吉良の肩口に顔を埋める
完全に二人だけの空間が出来上がった。



しばらく二人はそのまま沈黙する――――








『よしっじゃあもうご飯食べよっか?』

「...もう少し、もう少しだけ」


『もー甘えん坊さんめー』





丁は肩に顔を埋めたまま、一向に動く気配がない
吉良はそれに対しあははと笑いう。
そしてふいに丁を持ち上げ何処かへと歩き出した




「わっ!!?な、何するんですかいきなりっ!!」

『丁くんを強制連行(ソファに)しまーす』




吉良はそういうとスタスタとソファまで行き、丁を下ろす
が、丁は中々離さない




『ちょっそ、そろそろ離そうね?』

「まだ嫌です、離れ等ありません。」


(くっそ。くっそ可愛いけど負けてなるものか!!)




吉良は丁が離れないため、身を屈めたまま動けずにいた。
このままだと、腰をやりそうな状態だ





『(最終手段を使うしかないな...)丁くん覚悟!!!』

「えっ...っ!!!??」





吉良は丁の脇腹をこちょこちょする。
丁は慣れていないと言うか、初めての出来事で、瞬時に脇腹をガチッと閉じた

もちろん吉良の肩から手が離れるわけで、





『ふいーやっと離してくれた。効果てきめんですな!!』

「なっ!!ず、狡いです!!卑怯ですっ」





丁は自分の身に何が起きたのか瞬時に理解し、ブーイングを飛ばす
対する吉良はふふんと鼻を鳴らし、キッチンへ向かった




『ソファに座ってて?ご飯作るからー』

「...はい」





丁はムスっととした顔で言った―――――――――










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『あれ?丁くんお昼何食べたのー?』


「そのれいぞうこ?に入ってる、名前は確か...よーぐると?と言うものを食べました」




(まじか...私の○-1食われたんか...)









赤が特徴のカップのヨーグルト。今日は吉良の腸に届かず。
 

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