第五章【奴が来た(下)】

□第二十話【下準備?】
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グツグツと鍋の中身が煮立つ音がする






『〜ふふ〜ん〜♪〜』

「......」




吉良はキッチンからちらりと丁を見る。
...体育座りをし、顔をうずめていた

何があった





『もうちょっと待っててねーすぐできるから』


「...はい」





吉良は現在今までのような、【簡単】にできる卵焼きやお味噌汁とは全く比べ物?にならないきちんとしたおかずを作っている。と本人は思っている





『んー...こんな感じかな?...いやもう少し塩分が欲しいな。いや砂糖か?』

「...あの、何を作っておられるのですか?」





丁は首を擡げたまま、こちらを見ようともせずボソボソと問いかけてくる





『え?朝にぴったりのコーンスープとシーザーサラダとー...まあそれに見合うおかずだよー?』

「...そうですか。楽しみです」






丁は更に足と脚のあいだに顔を埋めた。

なによ、なんでそんな拗ねてるのか落ち込んでるのか分かんない態度してんのよ






『......よしっ丁くんー!!机の上片付けてくれるかなー?』

「あ......はい。分かりました」





鍋を真剣に見ていると、少ししてからモノを片付けているであろう音がする。

本当、あの子はちゃんと言うこと聞いてくれるから助かるよね〜
それに比べてあの甥っ子は...わんぱくやったでほんま。






「あ、吉良。此方は片付けたので、何か他にお手伝いすることはないでしょうか?」

『あっ早かったねーそうねえ、じゃあマグカップとスプーン二つずつ持ってってもらおっかなー』





丁はいつの間にか吉良の傍まで来ており、手伝ってくれるようだ。
...何やらすんすん、と臭いを嗅ぐような音が聞こえる気がする






『あ、食器の場所わかるかな?...届かなかったらそこの台使ってねー』

「あ、はい!!大丈夫ですよ。吉良がいない時に、色々確認済みですっ」


『さ、さよか...(好奇心旺盛だなほんと...)』






なんて思いながら、吉良は鍋に目を落とす

うん、我ながら美味しそうにできてると思います。はい



どうやら今日の朝食は、ベーコン(ちょい焦げ)とレタスとトマトとピクルス(吉良の好物の為、一杯作っている)をパンでサンドしたものと例のコーンスープと目玉焼きのようだ

...一体どの辺が、手の込んだものなのであろうか
おそらく鍋はコーンスープであろう







「言われたものを、持って行きました!!後はなんでしょうか?」

『そうね。深めの小さいお皿とーあ!あと野菜挟むの!!』


「...あっあれですね。いつも使っている便利なものですよね?」






今更だが何故丁がマグカップを知っているかというと、2日目の時購入しているからである

そしてアレで通じる二人の阿吽の呼吸。






『そうそう!!あっ鍋持ってくからちょっと離れててねー』

「あ、は、はいっ」






二人は着々と朝食の支度を済ませる。
そして準備を終えると、吉良はコーンスープを二人分カップに注ぎ分けていく





「......」

『よし、じゃあそろそろ食べよっか!!』


「あ、はい!!」





丁は何やら、コーンスープをじいと見つめているようだ。
そんなに気になる?
かぼちゃスープなら何度かあるでしょうが、





『それでは!!...いただきます!』

「いただきますっ!!」





丁は湯気をモクモクと立たせているコーンスープに真っ先にありつく

そして、ひと掬いしたスプーンを口に含む





『...どうかな?』

「......」






丁はむぐむぐと口を動かしている。
どうやら味を堪能?しているようだ

そして、丁の目はカッと開かれた―――――






「...とても甘いですっ」

『あれ、嘘...?牛乳入れて味まろやかにしたはずなんだけどなー...』





吉良も口に含む
あっま...砂糖だ。奴が主張しているっ

調味料間違えたかも...






「......」

『...あれ?どうしたの丁くん。』







丁はスプーンを置く。
あれ?口に合わなかったかな?






「...非常に、非常に言いにくいのですが、」

『え?どうしたのそんな畏まって??』






丁は背筋をただし、カップの中身を見つめている






「...とうもろこしが苦手なのです。」

『.....ええええええええええぇぇっ!!?』









まさかの丁の嫌いな食べ物を見事運悪く引き当てた吉良であった――――――――――――
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