第三章「三日目」

□第十二話【今日からお仕事です(社畜の目)】
3ページ/4ページ







吉良はスタスタと会社への道を歩く
しかし、その顔は浮かない顔であった―――――





『......(丁くん...)』






胸の奥が疼く。


あの子とちょっと離れただけで、何故だかざわざわする。

しかし吉良は首を左右に振り、今は丁のことを頭から消す




『いけない...こんなんじゃ、仕事に影響しそうだわ』




吉良は、はあと溜息をつき顔を俯かせる




『今日は何が何でも残業しないようにしよう!!』



そう言って、こっそり拳を握る

一人ブツブツと出社したのであった――――









『はあ...』


〔あっ先輩!!!!!おはようございます〕


『あ、おはよー秋夜君。早いわねー相変わらず』




〔当たり前じゃないっすか!!朝一番にせんぱ...じゃない掃除・書類整理とか机片付けたかったんスから!!〕


『わー仕事熱心なのね...君を見ると眩しいよ』




彼は吉良の後輩、秋夜だ。

会社では常に吉良にくっついており、吉良はだいぶ鬱陶しがっている






『じゃあ、今日はこれだけのノルマクリアしといてね?』

〔ハイっす!!先輩のためなら喜んで...じゃない頑張ります!!!〕



『うん...頑張って』

〔はい!!!〕




『(彼を見ると、朝は辛いな...)』



そして続々と社員が集まりだし、開始時刻になる
現在AM 8:00


















AM 12:30



『ん゛ーーーー...疲れたー』


〔お疲れ様っす先輩。今から一緒に飯食いに行きませんか!!?〕



そう言いながら秋夜は吉良の傍に近寄ってくる

ここの会社には1階フロアの端にコンビニ、
2階に食堂がある



『え...い、いいわよ。君は友人と食べなさいよ?』

〔えーアイツは夜に一緒に食べに行くんで、昼はぜーったい!!先輩とがいいっす!!!!〕




吉良は明らかに顔を引きつらせる
しかし秋夜はそんなのお構いなしに、腕を引き連れて行こうとする




『わ、わかったわかった!!行くから腕を引っ張るのをやめなさいー!!』

〔やった!!じゃあいきましょう。今すぐ行きましょう!!!場所取りしましょうっす!!〕



『(...はあ、)』




吉良は心の中でため息をし、必死に顔に出さないようにする





2階。食堂――――――



ワイワイ ガヤガヤ

ザワザワザワ...





〔結構混んでるっすね〜。どこかいいとこは...あ!!あそこ空いてるっすよ!〕



秋夜はそう言うと、空いている席を指差す





『あら、本当?じゃああそこ取りましょっか。取られる前に、』


〔はいっす!!!俺今から取ってきますっ〕





そう言うと、秋夜はダッシュで席を取りに行った



『....はあ』





本日2度目のため息がぶはぁ...とでたのであった。







〔せんぱーい!!取りましたよー!!!〕

『ちょ...大声でよばないでよ。恥ずかしいじゃん!!』



吉良はツカツカと秋夜の元へ行く。




『あのねー大声で呼ぶんじゃなくて、呼びに行くとかメールで送るとか、何か方法はなかったわけ?』



吉良がそう言うと、秋夜は〔その手があったか〕と言わんばかりの顔をする




〔さすが先輩!!!マジ天才っすね!!でも俺、声出して人を呼びたい病気なんで、却下っす〕



『................はい?』





吉良は素っ頓狂な声を上げ、肩を揺らす




〔いいじゃないっすか!!!!〕

『あ、あのねー...』




吉良は頭を抱える。相当恥ずかしいようだ。



『まあ、もう別にいいから早く食べましょ?時間なくなるわよ』

〔あっそうでしたね!!んじゃあ食いましょ食いましょー!!〕



そう言うと二人は席に着き、メニュー表を確認する




〔やっぱいつも思うんすよねー〕

『ん?何がなのー?』




吉良はメニュー表から一瞬目を離し、秋夜を見る。そしてまた視線を戻す



〔ここの券売機って文字書いてあるだけで、見た目とかわかんないじゃないスか〕

『んー...まあ、そうね。それがどうしたの?』



〔こうやってメニュー確認して券買うのってやっぱいいすよね!!!!〕




吉良は呆れた顔をする。
馬鹿だ



『まあ......そうね。いいと思うわ、この方法』


〔あ!!俺決まったっす〕

『(おい、)』





吉良は心の中で突っ込む





〔先輩は決まりましたか?俺このホワイトソースがけハンバーグ定食にするっす!!!〕


『そ、そう(また昼によく食うな)...じゃあ私はこれでいいかなー』




吉良1は指差す。それは普通の鯖の味噌煮定食だ。



〔おっけ!!わかったっす。行ってきます!!!〕

『はーい、いってらっしゃーい...ふう』




吉良は一息入れると携帯を取り出す。

そこのトップ画には丁の寝顔があった




『.......(癒される...疲れ飛びそうだわ)』




そう心で呟くと、頬がだんだん緩んでいくのがわかる
丁は吉良の中での癒しである





『早く仕事終わらせて帰らないとね...あの子が待ってるんだから』

〔ただいまっす先輩―――ってその子なんスか?〕


『うわちょっ!?か、帰ってくるの早すぎない!!!?』





突然秋夜の声が真後ろから聞こえ、思わず野武士のような声が出る





〔ほとんどの人頼み終わった後っぽかったんで、すぐできたみたいなんすよ。理屈意味わからないんすけどね?〕


『そ、そうね...作るのが余りにも早すぎるし、まるで予測通りと言わんばかりだわ』






吉良は真剣な顔でカウンターのおばちゃんズを見る
すると、視線に気づいたのか、おばちゃんズはにかっと笑った



『.....』

〔そ れ よ り も!!その子はなんなんすか!!?〕





秋夜は吉良の意識をこちらに戻させるため、声を張る。
案の定こっちに視線が戻ってきた



『あ、あーえっと、私の家族です。』

〔か...ぞく?ってことは、既婚...?〕


『ど、独身に決まってるでしょ!!
ま、まあその...ね?あー...そう!!遠い遠い親戚にたらい回しにされてた子なの、それで見兼ねて私が引き取ることになったの。わかった?』


〔へえ...なんか可哀想な子っすね。この子男っすか?女....?〕


『男の子よ。女の子みたいな子だけど、男よ』


〔ふーん...今度その子、見に行ってもいいっすか?〕






吉良は突然のことで目を見開く。
完全に何言ってるんだこいつと言わんばかりの目だ






『な、なんで?この子を...狙ってるとか、ないよね?』


〔は?〕




秋夜は素っ頓狂な声をあげ、目をパチクリとさせる





〔ないない!!俺男に興味ないっすもん。あるのは今せんぱ....女性だけっすよ!!!〕

『ほんと〜?...なら今度の日曜日、遊びに来る?』


〔マジでいいんすか!!行きます!!是非行かせてくださいっすっ〕





秋夜は興奮して、椅子から立ち上がる
拍子で椅子が倒れる





『ちょっ落ち着きなさい。まずは座りなさい!!』

〔これが落ち着いてられる訳ないっすよ!!やっばー!!楽しみすぎるっす〕



そう言ってご飯をかき込んで行く



『ちょ、ちょっと...消化に悪いよ?』




吉良1はあたふたしながら、制止するも効かず

カウンターに食器を置いて絶叫しながら何処かへ行ってしまった。





『...行っちゃった。また変な子に遭遇したな』






秋夜は彼女の中で完全に変人認定されたのであった























【新しい人物登場。恋敵?】
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ