第三章「三日目」
□第十二話【今日からお仕事です(社畜の目)】
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ようやく午後の部が終わる。
現在PM 6:30
『(おっ今日は早めに終わったなー!じゃあ帰るとしますかね)』
吉良はテキパキと机の上を整理していく。
かなりウキウキのご様子だ
〔あれ?先輩もう帰るんすか?これから一緒に飯行きませんか!!?〕
『却下で。てか君、友人と食べに行くんじゃなかったの?』
吉良は首を斜めに傾け、秋夜を見る
〔あーいやほら...き、急にアイツ残業になったっぽくて、一人になっちゃったんすよー〕
『ふーん...彼女でも作ったら毎日2人で食べれるわよ?是非作ってみたら?』
〔い、いやあの......〕
秋夜は口篭る。
しかしその間にもテキパキと片付けていく吉良
〔お、お願いしますっす!!!この通りっ行きましょう!?〕
『無理。却下、私早く帰らないと行けないから、』
秋夜はそんな〜と嘆き、肩を落とす
〔...じゃあせめて、家まで送り届けたいっす。ダメっすか?〕
『んーまあ、それくらいならいいけど。どうせ今度の日曜日に来るから道教えとけるしねー』
秋夜は急にパアと顔を輝かせる
〔じゃあさっそく行きましょう!!わくわくが止まらないっす!!!〕
『...てか君、仕事はもう終わった?ノルマまだみたいだけど』
〔それなら問題ないっすよ!!この束で終わりっすから、提出したら今日は終わりっす!
じゃあちょっと行ってきますんで、待っててくださいっす!!!〕
『はいはーい頑張ってらっしゃーい』
吉良はひらひらと手を振る
その手はどこか脱力気味だった
PM 7:02
吉良と秋夜は2人で並んで帰っていた。
〔いやー申し訳ないっす。まさかミス続出するなんて思ってもいなかったんで、びっくりっすよ〜〕
『はあー...ちゃんと確認の1つでもしときなさいよねー』
〔ほんと申し訳ないっす...〕
吉良は、はあと溜息をつく。
丁のことが気掛かりなようだ
すると、ふと思い出す。夜何か買わなくちゃ
『ちょっとそこのスーパーに寄ってもいい?夕食の何も買ってないの忘れてたのよねー』
〔あ、いいっすよー俺も付き合うっす!!!〕
吉良と秋夜は帰り道にあるスーパーへと足を運ぶ
〔そーいや先輩って、普段料理とかするんすか?〕
『んーほとんど冷食かな?たまに簡単なもの(卵焼き)を作るくらいかなー』
秋夜はへえ〜と相槌を打つ
若干目が死んでいる気がする
『今日は...生姜焼きと(焼くだけのあれ)お味噌汁とご飯とーほうれん草のお浸しかな』
〔そんな日本食、あの子供が食べるんすか?...今時のガキって食わず嫌いが多いっすからねー〕
『食べるに決まってるでしょ。てかむしろ洋食系あの子苦手っぽいもの』
吉良がそう言うと秋夜が驚愕の顔をする。
足は若干一歩引いている
〔い、今時のガキが洋風の無理って...すごい子っすね〕
『そうね〜それにラーメンとかまだ食べたことないみたいなのよね〜』
そう言うと秋夜は更に後ずさる
〔う、うそだ...俺でさえ、ちっさい頃から食ってたんすよ!!?昔一体どんな過去もってるんすか。その子!!!〕
『さ、さあ〜?私の遠い親戚なだけだからね。私にも分かんないわよ』
と言うのは嘘話で。本当は朝起きたら、何気ない顔で布団に潜り込んでいました。
なんて言えるはずもない
そうしている内に吉良は会計を済ませ、袋に詰めていく。
そこで、近所のおばさんがあいさつをしてきた――――
{あらぁ!!吉良ちゃんじゃないのー。今お仕事の帰りなの?}
『あっこんばんわ〜美智代おばさん。そうなんです。今晩御飯買って帰ってるところなんですよ』
すると、ひょっこりと秋夜も割り込んでき、挨拶をする
〔あっこんばんわーっす!!初めまして俺、秋夜って言います。よろしくっす〕
あら!!いい男じゃないの。吉良ちゃんの彼しか何かかしら?
おばさんはにやにやとしながら言う。
しかし、その問いかけを吉良は全力で否定をする
『ち、違いますよ!!この人は私の会社の後輩の人なんですよ!決してそういうのじゃありませんから』
{あらー残念ねえ。凄くお似合いだと思ったのに}
〔お、お似合いっすか!!?本当っすか!!〕
何故かお似合いという単語に興奮している秋夜。
それを見た吉良は若干引いている様子だ
『じゃ、じゃあ私支度がありますので、これで失礼しますね!!』
{あら、ごめんなさいね〜引き止めちゃって。またお話しましょうね?}
『はい。ではまた』
〔さようならっす〜〕
二人はおばさんに会釈をして、帰り道のルートに戻る
〔いや〜まさかお似合いって言われるなんて驚きっすね!!〕
『....』
秋夜はにやにやと気持ち悪い顔で言う
しかし対する吉良はかなりの嫌悪感が走り、距離を取っている
しばらく沈黙して歩く。
すると、昨日丁と遊んだ公園が見える
『(あっ...昨日丁くんと遊んだ公園だ。...あっ同い年くらいの子達が遊んでるな)』
吉良は思わず足を止め、公園の方を見る
〔マジ俺嬉しいっす....先輩?どうしたんすか?公園の前なんかで足止めるなんて。誰かいるんすかー?〕
『...ううん。ちょっと考え事してただけよ、行きましょう』
〔??〕
何かを考えついた吉良は再び歩く
その後ろ姿を秋夜は追いかけた――――
『ここが私のマンションよー今日は上がらせないからね?』
ドキッ
〔そ、そんな無遠慮なことしないっすよ〜見送りはここまでっすよね!!〕
すると、たいぶ上の辺りから子供の声がする
何か言ってるが、うまく聞き取れない
〔あれ...もしかしてあの子が言ってた子っすか?〕
『ええそうよ。さすがに上過ぎてみえないでしょうけど』
丁はじーっとこちらを見下ろしている
『丁くーんただいまー!!』
「.......」
丁は一度声を発しただけで何も言わず、部屋の中へと戻ってしまった。
『ありゃ、朝から機嫌悪かったもんなー仕方ないか』
〔我が儘いうガキは俺が叱りに行きましょうか!!〕
どさくさに紛れて部屋に入ろうとする秋夜。
どこまでも貪欲である
『別にワガママでも何でもない素直な子なんだけどね〜...ちょっと寂しがり屋というか、甘えん坊?なのかな』
吉良はあの時の――――初日の日を思い出す。
淋しがりで甘えん坊なのはきっと孤児だからなのかもしれない
もしかしたら、もっと別の何かかもしれない
〔ふーん...先輩に甘えられるのか..〕
『ん?何か言った?』
〔いやー結構、可愛いところあるんすね〜〕
どうやら秋夜の独り言は聞こえなかったようだ
『じゃあまた明日。今度はミス連発しないようにね?』
そう言って、吉良は手を振りマンションの中へと消えていった―――
それに応えるように秋夜も手を振る
〔また明日っす〜おやすみなさい!!〕
(ライバル)二人の火蓋が切って落とされたのであった――――――――――