第三章「三日目」

□第十四話【今日の終わり明日の始まりと思いきや急加速します】
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PM 11:02





二人はいつも通り仲良く、食器洗いをしお風呂に入りやることを全て済ませ寝床を整えていた







『あ!そういえばこの前買ったベッドの件なんだけどね?』

「あ、はい。すっかり忘れていました」



『あはは、実はさっき電話掛かってくるまで私も忘れてたのよねー』


「でんわ...」





丁の脳内でまた〈でんわ〉がインプットされた

丁はポツリと呟く。
対する吉良はそう言うと眉を八の字にし、苦笑する





「まあ色々あったので、無理はないかと思います。...それで、どうなったのですか?」

『うん。それがね?今度の土曜日にこっちに持ってくるんだってー』



「今度...丁度吉良が仕事がない日ですね」





丁は壁に立てかけてあるカレンダーを見て言う
吉良が休みの日には丸がつけられている





『そうなんだよー正直助かったかなって思うよ。』

「?...何故でしょうか」





丁は首を斜めに傾げパチパチと瞬きする





『だってねー?もし私がいない日に持ってこられたら色々と大変でしょ?』


「...なるほど。確かに私はまだここのことをよく知りませんしね。吉良がいませんと、右往左往しなければいけなくなります」



『でしょー?』





吉良は丁に向かってダンディ○野の十八番「ゲッ○」をする

するとあははと笑っていた吉良が急に目をパチクリとさせた。





『...今私のこと吉良って言った、よね?』

「え?」




丁はキョトンとした顔で吉良を見つめる。
まるで自分は何か言ったか?と言わんばかりだ





『今呼び捨てで言ってくれたよね!!』

「...あ、そういえばそうですね」





丁はぽんと手のひらに拳を軽く乗せる





『そういえば...さっきお風呂入ってる時にも言ってくれたよね!!』

「えっ...とそうでしたっけ?」





吉良は感極まって丁の肩を掴む
しかし丁は覚えていないようだ




『そうだよ!!余りにも自然すぎてスルーしちゃってたけど、言ってましたよ丁くん!!』


「は、はあ...」




丁は眉尻を下げ困った顔をする





「何故それだけのことで大袈裟に言われるのですか?」


『何言ってるの!!大袈裟にもなりますよっなんてたって初めて呼び捨てで言ってもらえたんですから!!』




吉良はそう言うと丁を大きく揺する
丁の頭は力なく上下に振るわれている
たまにあうっやふぉ...等と言ったか細い悲鳴が聞こえた。




『やばっ凄い嬉しいよ!!もっと呼んでくれてもいいんだからね!!!』

「は、はあ...」



『ほらほら!!もっと呼んで呼んでー』




吉良は丁に言うよう嗾(けしか)ける





「吉良...?」

『あははっなに?丁くんー!』




恐る恐る言う丁に思い切り、抱きつく吉良。

かなり嬉しそうだ





『なんかやっと、丁くんに少しだけ近付けた気がする!!心の距離って奴?』

「...心の、距離」




丁は吉良の肩口からポツリと呟く。





『明日また、辞書で調べてみたらいいよ?』

「勿論そのつもりですよ。」


『ふふっだよね!!丁くんならそうすると思ってたー』




吉良は丁に向かい、あははと笑いかける。
もちろん、丁にはその顔は見えない
抱きつかれているからだ





「あの、そろそろ寝なくてもよいのですか?明日も仕事では、」

『そーなんですけど...もうちょっとこうしてたいっていうかね?』



「.......夕頃の時、私を振りほどいたのは何方でしょうかね」




丁はぼそっと吐く。その顔は邪気の隠った顔つきをしていた
勿論その吐きだけは、吉良に聞こえているわけで――――――





『い、いやほらあれはさ...ご飯の支度しなきゃだったしですね。だからほらね?』

「この期に及んで言い訳ですか。」


『ごめんなさい』

「絶対許しません」




丁は吉良の隙を見て、すぽんと身を屈めて脱出する
そしてそっぽを向く




『あっ勝手に抜けないでよ!!』

「暑いです」


『すいません。』




吉良はしゅんとして顔を俯かせ、謝る




「では、今だけ私の言う事を聞いて頂ければ許します」

『丁君の言うこと?』


「はい」



丁はこくりと頷く。
そしてごそごそと布団の中へと潜り込む
吉良はその光景をただ見つめているだけだった





「何そこで突っ立っているのですか。寝なくても宜しいのですか?徹夜でもするのですか?」

『あ、いえ寝ますはい。寝させて頂きます』





吉良はそう言うと丁の隣にもぞもぞ布団の中へ潜り込み寝転ぶ




『それで、何すればいいのか――「私が起きてる間はずっとぎゅっとしててください。と言うか今日一晩明日朝まで、」...えっ!?』





吉良は目を丸くして驚いている




『でもさっき暑いっていって抜け出したじゃん!!』

「あれは、貴方があのまま暫く動きそうにないと思いまして抜け出してわざと言いました」




丁はきっぱりと言い切る
図星なのか吉良はぐぬぬ...と唸る





「さあ早く、私はまだ起きていてもいいですが吉良は明日に響くでしょう?」

『わ、わかったよー...この甘えん坊め』



「聞こえていますよ」




吉良はぽそっと言うが、丁に完全に筒抜けである



吉良はあははーと苦笑しながら、丁を優しく抱きしめる
丁の微かな匂いとぬくもりを間近で感じる。
とても心地がいい――――






『...やっぱり丁くんを抱きしめると、落ち着くなー...』

「...私も..です」




まだ抱きしめてそんなに経っていないはずなのだが、丁の声は眠気を帯びていた




『おやすみ丁くん。』

「おや...すみ、な――――..すー」



(寝るの早いなー...)





丁は数分も経たずに深い眠りに落ちる。
その寝顔は気持ちよさそうで、穏やかな顔だ






『寝つきがいい子は好きだよ...』



吉良はそう言って、丁の頬に口づけを軽く落とし電気を消した――――――――































時は経ち、吉良の濃い2連休がまたやってくる。
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