第七章【秋の季節は冬の始まり】

□第三十五話【どうやら辛いものがダメみたいです】
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『...はあ。』






吐く息が白い、
雲がどんより...というよりも、もう夜に近い

私は現在仕事を終えて帰宅途中。

ついでに今は11月手前
寒い!!







『んー...そろそろ雪でも降りそうだなー』






かなり寒い。
今は流石にマフラーにコートにタイツにと防寒は万全だ

...だが寒い






『あ!!...洗濯物乾いてるかな?ちょっと電話してみるか』







電話の相手はもちろん、家で留守番しているはずの自由奔放なあの子。

...外出てたらどうしよう



プルルルルル
プルルルルル

プルルルルル




『(ドキドキ...)』



プルルルrガチャ


「"はい。要野です"」

『あ、丁くん?』


「"吉良?どうされたのですか?"」

『えっとね、洗濯物乾いてるかなーって思ってさ』

「"空をご覧の通り、乾いてるわけないでしょう?"」


『あはは...だよね。』







まあ予想通りではある
乾燥機の仕方、教えておけばよかった...

と今更後悔である

そして最近思うのだ、...何故私が休みの日は大概雨と曇りが多いのだろうか、と







『うん、そっか。ありがとう!!...あ、何か食べたいのとかあるかな?今丁度真横にお店あるからさ』

「"...そうですね。大福"」


『え?』


「"吉良が先日買ってきて下さった雪見大福?とやらが食べたいです"」


『寒くない!!?』


「"この台の中で食べるので然程寒くはないかと?"」

『そ、そっか...分かった。じゃあ買ってくるね。じゃあまた後で、』


「はい。吉良はあまり遅くならぬように!!」

『あ、はい』






そういうと、此方から電話を切る

...最近思うんだ、丁くんがお母さんになってきている気がする
気のせいかな?






『あ!!...今日の晩御飯何がいいか聞けばよかった。まいっかー』






独り言をつぶやきながら近場のスーパーへと入る
中は外よりも暖かく、独特の匂いがする

...正直この匂いを長時間嗅いでると吐く自信があるよ





『今日は何しよっかなー...今日は一段と寒いし、おうどんにでもしよっかな』






やはり冬といえば、うどん...とまではいかないが、この季節にはちょうどいいと思う

雑炊とかもありだとは思うのだが

吉良は足早に慣れた道をスイスイと進んでいく
目指すは冷凍食品コーナー。







『あ、あったあった!!...やっぱこれよね。日持ちするしささっと食べれるからねー』





手にするは冷凍されている5食入りのうどん
寒い時期に冷たいのは正直触りたくないし、悴むから辛い

...主婦って偉大よね
年中無休水扱ってるんだもん

あ、それ考えると...丁君の手大丈夫かな






『...一応塗り薬とか保湿買っておくか』






丁は私がいないとき、家事全般をしてくれている
...服乾燥させる以外は。

実に助かっている
下手をすると、冷蔵庫の中身で晩御飯さえ作っている時もある

...泣いちゃう。私よりお母さん過ぎて泣いちゃう

そして飲み込みが異常に早い







『えっと...これとこれでいいかな。んーアロエは保湿に良いってばっちゃが言ってた気がする(言われてない)..まーいっか』





薬コーナーにくると、この季節には欠かせないマスクやらカイロやら保湿クリーム等やらが山積みにある。
積まれてはいないが






『よし、なんか色々あるけどやっぱ慣れてるのがいいよね!!毎年お世話になってるNI○EAの青缶さん』







それと手荒れを治す薬も入れ、他を回る
...帰ったら塗ってあげよう。そうしよう

次に目指すは調味料置き場

乾燥ネギに七味に天かす。後は何を入れようか?
あ、かまぼこも入れたいな






『ふふ、あ!!鍋うどんでもよかったな。キムチ鍋も今更出てきた...また今度にしよう』





ちょっと調味料を見れば、次から次へと料理が脳内に出てくる
まだ出てくる

茶碗蒸しにそばにもつ鍋、カツ丼も美味しそうだな
まあ、ナレーターが食べたいだけである







『...まあこんなもんでいいかな。あ、それと頼まれてた雪見も買わなきゃ!!』






すぐに頭の中から消えていた雪見が、脳内でぐわっと浮かぶ
物凄く主張してくる

...わかったから!!買うから!!






『...あーどの種類がいいか聞けばよかったな』




ざっと見て、4種類近く販売されている雪見○いふく。
ショコラに普通の味にチーズにイチゴ味

ふむ...あ、そうだ






『全種買えばいいんだ!!簡単なことじゃないか!!』





等と誰もいないアイスコーナーで大声をあげる奇人が一名。

別の場所で買い物をしている客の目線が一斉に集まる

...またやってしまった





『......帰ろ』





カゴに4種全て入れる(ついでにおしるこ風アイスも)と、そそくさと客の目から逃れるようにしてレジへ向かう






チン♪


【合計金額2250円になります。】


『あ、じゃあ3000円から』






お釣りを受け取ると、颯爽と店を出る
正直だいぶ酔ってきていた所だ

...外の風が気持ちがいい






『...はあ、よし帰るか』





深呼吸を数回繰り返すと、帰路を辿る
少し落ち着くと、段々と寒くなってくる

雲は先程よりも暗くなっていた

...早く帰らないと、なんか雪が降りそうだね















自宅を目指して袋を片手にゆっくりと歩いていると、何やら美味しそうな匂いがどこからか漂ってくる




『ん〜?...何この匂い。懐かしい匂いがする』





もう何年と口にしていないが、確かに記憶にあるあの匂い

"焼き芋の匂い"だ






【"いーしやーきいもー"】


『(へえ、まだあんなふうにお芋売ってる人いるんだね)』





少し遠くに、屋台車を引いているおじいさんが自前の声を録音したものを、スピーカーで大音量に鳴らしている




『(...なんか見つけてしまったからには、買わなきゃいけない)』




何故か突然の使命感に捕らわれる吉良。
焼き芋の甘くて暖かい匂いが鼻を掠めていく

気がつけば、足は動き出し焼き芋屋に一直線に向かっていた――――――――






『...釣られたクマ』



ボソリとつぶやき、芋が入っている袋を見つめる
ホカホカと美味しそうな湯気が立ち込めている
...今食べたい。
いやだめだ。一緒に食べよう。我慢だ!!






『...早く帰ろ(本日三度目)』




再び帰路を辿る吉良なのであった。
空腹も引き連れて。
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