第七章【秋の季節は冬の始まり】

□第三十六話【今日は会社休みます(風邪)】
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――――吉良。吉良







『ぶえっくしょいっ!!!...はあ..何?』


「......なんてことをしてくれたのですか。」



『え゛ー?何が?へっくしゅい!!?』

「.........」








私は今現在鬼灯くんの隣で、書類の不備がないか点検をしています
いやー字が小さい上に達筆(笑)な奴が多いから困っちゃうよ







「......書類に余り唾を掛けないで頂けませんか?それと私にも」

『えー?...べっくすん!!..そんなこと言われましても、止まらないものは止まりません』



「......はあ、ではせめて対策の一つでもしなさい」

『んー...じゃあマスク頂戴!!』


「そのようなもの、持っているわけがないでしょう。自分で買ってきなさい」








ブーブーと鬼灯くんに抗議するも、ワンコイン渡されるのみで目で"はよいけ!!"と言ってきている
人使い...じゃないな。鬼使いの洗い鬼神さんですこと!!






『もー...ぶっくしゅん!!はあ..なんか頭ふわふわしてきた』

「吉良?どうしたのですか?」


『なーんで、も...御座いま せんよ』

「吉良?」







頭がぼーっとする
あれ?閻魔殿ってこんなに寒かったっけ?
暖房入ってるはずなんだけどなー

かと思ったら少し暑い?
もう訳分かんない







『あ゛、ツバかけちゃった書類 は どうしたら、いいか な?』


「待ちなさい。吉良」


『何よー?私は平気、平気だって!!』


「お待ちなさい!!」








なんか鬼灯君が騒いでるな。珍しいこと
べちゃべちゃの書類を持って閻魔殿を出る。

これドライヤーで乾くかな?
まあ、まずはマスクでも買いに行きましょうかね。







『へっぐしっ!!...うえーまた 掛かっちゃった』

「吉良!!」


『な によ私は 忙しいのっこれ乾かさなきゃ いけない の』






鬼灯君が此方に向かって走ってくる
あれ?鬼灯君があんなに必死になって走ってくるの初めて見る!!

...今日は、珍しい こ とだら けね







「...それくらいならば、私がやりますからっ」

『......やるから?』


「今日はもう早退なさい。顔色が優れませんよ?」


『そ、そんなこと...わっ』







鬼灯君が私の前髪をぐっとあげ、オデコをくっつけてくる
待って!!おい待て!!ここ廊下!!人通りの多い廊下!!みーてーるー!!!!
めっちゃ見られてるから!!






『や、やめっ公衆の面前で何して――――』

「...熱がありますね」


『へ?』

「貴方、こんなに熱があるのに仕事を続行する気なのですか?」


『ね、つ?...私、熱 なんか』


「吉良っ!!!!」







"熱" その単語を言われただけなのに、何故かいきなり全身の力が抜ける
手にも足にも筋肉全てに力が入らない

ガクッとその場に崩れる
ちょ、まだこの書類乾かしてな――――








「吉良!!?吉良!!!しっかりなさいっ!!」


『あ、わ たしは大丈夫 だから...心配しないで』

「なにが大丈夫なのですか!!」







周りがドタバタと慌ただしい
どうやら廊下に居た皆が慌ただしく動いてるみたい
何?誰か事件でも起こしたの?
茄子くん辺りがまた、貞子 逃がした?

あー眠い...まだ仕事中なのに眠いよ
眠気に勝てそうにないよ







「吉良!!吉良っ―――――――」

『...お休み なさ い』








ふうと鬼灯くんの腕の中で眠りにつく
鬼灯くんのいつもの臭いに包まれながらほわほわした脳を静かに眠りに付かせた――――――ー




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『――――――――はっ!!』








起きるとそこはいつもの部屋
隣のベッドには丁くんがすやすや眠っている

...ブルッ寒い!!







『ぶえっくしょい!!?』

「ん...吉良?」


『あ、ごめんね。起こしちゃったね』

「いえ...どうされたのですか?」







丁が私の大きなくしゃみで閉じていた目を薄らと開ける
あちゃー...ごめんね丁くん








『う、ううん!!ちょっと寒くなってきたなってぶえくしんっ!!!!』

「風邪、ですか?」


『かなー?...ぶえっくしょい!!』

「......」







あ、丁くんの顔にかかっちゃった
ごめんね。


すると、無言で丁が此方のベッドに移動してくる

うおっちょ!!?近いぞ!!どうした丁くん!?
ちょい待った!!まさかの今丁くんに押し倒され―――――




こつん。







「......――――熱、あるみたいですよ?」


『へ?』


「それに先程から声がいつもより可笑しいですし、」








丁はそっと私から離れると、眉を下げ心配げな顔で見てくる
熱かー...まじかー..
って、なんか無駄にドキドキしたな。
危うくショタコン認定されるところだったわ







「今日はお仕事休まれた方が宜しいのでは?」

『そ、うねー...(まあ私が休んでも仕事はアイツに回るだけだしな)』


「他の方に風邪を移されても、アチラは迷惑でしょうし」

『(グサッ)』







仕事人間にその言葉は辛い
グサリと心臓に矢が(心を射抜く矢)一突き刺さった

...仕方ない、そんなこと言われたら休むしかないな
初めてかもしれないな。休むなんて








「では、今日はゆっくりお休みください。ご飯や家事は私がやりますので、」

『うーん...ごめんね?何でもかんでも押し付けちゃって』


「何を言ってるんですか。病に伏せっている方に働けなど言えるはずないでしょう?それに別に好きでさせて頂いてるので、」



『うーーーん...ありがとっ』








ぎゅっと丁を抱きしめる
しかしなぜか丁は腕の中でもがいている
まあ、当然ではある
風邪ひいている人間に抱きつかれたら移るかもしれないのだから。






「...と、とりあえず今日は!!安静にして下さいね!!」


『はーい』








丁はそれだけを言うと、慌ただしく動き出す
洗濯物を干したり、洗濯機を回したりキッチンへ向かったりと大変そうだ。

...へえ、私がいない間は丁君は毎日こんな風に慌ただしく動いてたんだね
全くそんなこと感じさせなかったからびっくりだよ


よーし!!今日は丁くんの一日の観察も含めてのんびり過ごしますかね!!

あ、会社に連絡するの忘れてらぶえっくしょい!!






丁と病人の一日のおはなし。
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