短編集用本棚。

□君の煙管
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私は一人、地獄のどこかをふらふらと歩いていた。

火の光に照らされたら、なんだか自分が無理している気がしてきてならない





この気持ちがあの人に届く気がしない

だから私もあの人と同じように煙管を吹かす
彼の気持ちになれると思ったから



でも、夜の月明かりに照らされたとき...悪事を働いている気分になる
惨めだ




あの人の好きな煙管の煙、苦い味だ

私よりも好きで、手放さない煙管



なんであの人は私を見てくれないのだろうか
本当はあの人の手伝いとか、したいのにお払い箱。
正直な話、ただ傍にいたかっただけだし
彼が何をして何で終わり眠るのかを知りたかった。
分かりたい


また遠くからプカプカプカと煙管が焚かれる煙が見える

それが嫌だ。苦い 辛い 苦しい

















あれ?
今日はもう煙管は吸わないのかな

彼が煙管を吸うときはいつも、機嫌がいい


じゃぁつまり機嫌が悪くなったのかな
煙管魔法も解けちゃうのかな



彼と二人だけの空間なのに、火が消えて彼は部屋を出て行く

なんでよ...まだ何も話してないじゃん。



彼の残り香の白い煙が霧散する
また一人で真っ暗な夜と過ごす私



どこであの人とすれ違ったかな
私が地獄勤務で忙しくなった頃あたり?

そんなにいつも傍には居れないのに、


でも、それが原因で疎遠になった
もう少し会いに行ってたら、今の状況変われたかな
マシだったかな....





















そういえば、とか細く消え入りそうな声で言うと色々と走馬灯が駆け巡る


彼が言ってくれた言葉は、結構正論だったのかも。


私だって多忙なんです

私はこれから貴方に会いにいく時間はもうありません

貴方は私に何を求めているのですか?

殴られたいのですか?


私は補佐官です。閻魔大王がサボるとこっちに全て伸し掛ってくるんです″



今思えばだいたい愚痴だった気がするわ...

つか後半閻魔大王のせいだわ




ありゃ、私なんで血なんか流してたんだっけ
走馬灯駆け巡ってたせいで混乱してきたわ



なんで彼私を抱きかかえてるんだっけ
なんでそんなきつく抱きしめてんの?



今日は煙管は吹かないの?機嫌が悪いのかな




未だになんでこうなったのか思い出せないわ

まぁ、こういうのも悪くないよね
彼が今私を見てくれてるんだし


でも眠くなってきたかな
正直、毎日彼のことしか考えてなかった日々だったけど、いい日々たちな気がする


ねぇ鬼灯さん。私がいなくなっても

こうなった私を嫌わないでね
私が居なくなったからって、忘れないでね





「ねぇ、またいつもみたいに私の目の前で煙管焚いてよ...」





そしたらちゃんと焚いてくれた

空を見ると、プカプカプカプカ
煙が空へと舞い上がる


そして雲になって霧散する




案外地獄の景色も悪くはなかったのかもな...―――――――――――

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