短編集用本棚。
□君の煙管
1ページ/1ページ
私は一人、地獄のどこかをふらふらと歩いていた。
火の光に照らされたら、なんだか自分が無理している気がしてきてならない
この気持ちがあの人に届く気がしない
だから私もあの人と同じように煙管を吹かす
彼の気持ちになれると思ったから
でも、夜の月明かりに照らされたとき...悪事を働いている気分になる
惨めだ
あの人の好きな煙管の煙、苦い味だ
私よりも好きで、手放さない煙管
なんであの人は私を見てくれないのだろうか
本当はあの人の手伝いとか、したいのにお払い箱。
正直な話、ただ傍にいたかっただけだし
彼が何をして何で終わり眠るのかを知りたかった。
分かりたい
また遠くからプカプカプカと煙管が焚かれる煙が見える
それが嫌だ。苦い 辛い 苦しい
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|
|
|
|
あれ?
今日はもう煙管は吸わないのかな
彼が煙管を吸うときはいつも、機嫌がいい
じゃぁつまり機嫌が悪くなったのかな
煙管魔法も解けちゃうのかな
彼と二人だけの空間なのに、火が消えて彼は部屋を出て行く
なんでよ...まだ何も話してないじゃん。
彼の残り香の白い煙が霧散する
また一人で真っ暗な夜と過ごす私
どこであの人とすれ違ったかな
私が地獄勤務で忙しくなった頃あたり?
そんなにいつも傍には居れないのに、
でも、それが原因で疎遠になった
もう少し会いに行ってたら、今の状況変われたかな
マシだったかな....
・
・
・
・
・
・
|
|
|
|
|
|
|
そういえば、とか細く消え入りそうな声で言うと色々と走馬灯が駆け巡る
彼が言ってくれた言葉は、結構正論だったのかも。
私だって多忙なんです
私はこれから貴方に会いにいく時間はもうありません
貴方は私に何を求めているのですか?
殴られたいのですか?
私は補佐官です。閻魔大王がサボるとこっちに全て伸し掛ってくるんです″
今思えばだいたい愚痴だった気がするわ...
つか後半閻魔大王のせいだわ
ありゃ、私なんで血なんか流してたんだっけ
走馬灯駆け巡ってたせいで混乱してきたわ
なんで彼私を抱きかかえてるんだっけ
なんでそんなきつく抱きしめてんの?
今日は煙管は吹かないの?機嫌が悪いのかな
未だになんでこうなったのか思い出せないわ
まぁ、こういうのも悪くないよね
彼が今私を見てくれてるんだし
でも眠くなってきたかな
正直、毎日彼のことしか考えてなかった日々だったけど、いい日々たちな気がする
ねぇ鬼灯さん。私がいなくなっても
こうなった私を嫌わないでね
私が居なくなったからって、忘れないでね
「ねぇ、またいつもみたいに私の目の前で煙管焚いてよ...」
そしたらちゃんと焚いてくれた
空を見ると、プカプカプカプカ
煙が空へと舞い上がる
そして雲になって霧散する
案外地獄の景色も悪くはなかったのかもな...―――――――――――