短編集用本棚。

5000hit企画小説
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かれこれ入籍して早1年目。
何か色々変わると思っていたのだが、一切代わり映えのない日常。




『その書類作成、あとはよろしくお願いします』

「あ、はい。あ、鬼灯く―――」


【鬼灯さま!!これにお目通しお願いします!!】





彼は相も変わらず、忙しい日々。
そのせいか、最近私達の間に溝が出来てきた気がする

私たちを繋ぎ止める大切なものもない、
ましてや今日が結婚記念日だなんて、きっと覚えては居ないはず



「...これ終わったら終わりだし、さっさと済ませよ」




私は一人自室(執務室)へ戻る
執務室と私室は別々。
彼と私には仕事部屋が一つずつ与えられている

私と鬼灯くんは一応、一緒に暮らしてはいる

..のだが閻魔殿の中にだが、




「はー...(せっかく今日は特別に現世からケーキ買ってきておいたのに...)」



ケーキを持ってくる際、牛頭さんと馬頭さんに持って帰っていいかを聞いた。
もちろん快く頷いてくれた

本当は生ものだし、ダメみたいだけど特別にって。
...でも、これじゃあ二人に顔向けできそうにない




「...今日も帰り遅いのかな、..やだな」



なんて思っても、彼は閻魔大王の第一補佐官。
多忙で帰って来れないのは仕方ない

正直たまに浮気も疑い始めている

...こんな邪念だらけでは、筆に感情が移ってしまいそうだ




「はあ...やめたやめた。もう今日は一人でケーキ頬張ってよ」




手料理を振舞おうと思ったが、それもやめた。
あ、そういえばあのお薬切らしてた




「んー...まだ時間あるし、これ終わらせたら白澤様のとこにでも行きますかねー」




あの人はちょっと症状を言えば何でもわかるスケコマシ変態優しい神獣だ。
私の日々の愚痴を何度も聞いてくれる




「...ちょっとくらい、いいよね。」




鬼灯くんと白澤様は、本当に仲が悪い。
でも、その様子を見ているのは本当に楽しい。




「...よし、後はこれをー...今顔見たくないなー」



嫌だなー見たくないなーあのハシビロコウよりも鋭い眼光の人。





「...これは仕事これは仕事これは仕事これは仕事これh『何呪文唱えてるんですか』ほぎゃあ!!?」



び、びびびびびっくりした!!いつの間に私の後ろにいたの!?





『そろそろ書類作成が終わる頃かと思い、取りに来たんですよ』

「え?あ、うん今行こうとしてたの。ごめんね遅くなっちゃって」






書類を渡す際、少しだけ指先が触れる
ふおっなんかドキドキしてきたぞ。

久方ぶりの初々しい感じ!?





『......』

「...鬼灯くん?」




彼が書類を受け取るが、そのまま固まっている
おいおい、そこで固まると腰にきちゃうよ?





『希和さん。』

「はい?あ、何か書類に不備でもあったかな?」


『そうじゃありません』

「え?じゃあどうし――――」





いきなり彼が私を見つめたかと思うと、
彼の手が私の顎を捉え、上を向かせてきた

そして訳も分からぬまま見つめていると、自分の唇に何やら柔らかくて、それでいてちょっと鋭利な何かが当たる感触がした

...え?うわ顔近っ




「んっ...ふ、」




くちゅくちゅと腔内から音がする
待って待ったいきなりキスって...何年ぶり!?


なんて考えていると、リップ音を立てて彼の濡れた唇が離れる




「は...あ、いきなり何をっ」

『何とは、接吻――キスですが?』


「いやそれはわかってるよ!!なんでっいきなりしたかってことよ!!」





ふうふうと息切れをする
私はなんで彼に怒鳴っているのだろうか。
本当は嬉しいはずなのに、
頬が熱をもっていくのがわかる




『なんで?何故夫婦なのに、してはいけないのですか?』

「〜〜〜〜〜っい き な り !! なんでしたの!?」


『......』



彼が黙って見つめてくる
どうしようどうしよう。自分でも、もう訳わかんないよ
だいぶ触れてないから?嫌悪?緊張?




『...申し訳ございませんでした。次からはきちんとお知らせしてします』

「...あ、」




鬼灯くんは私の頭を優しく撫でるとその場を去っっていった
待って行かないで。謝りたいの。貴方は悪くないの!!



「ほお、ずきく...ん」




自然と涙が溢れてくる。
本当は触れたかったもっとして欲しかった。
もっと傍にいてほしかった
...やってしまった。



「ごめ...ひっ、ごめんね..」



嗚咽が止まらない。
今日はもう、極楽満月へ行くのはやめよう。

それとも出張でもしてもらおっかな
...それと今日はここに泊まろう。




「せっかぐ...の、ひっ記念日ふぐ..が」




彼からもらった鬼灯の彫刻が裏面に施された指輪を指から外し、握り締める
これが贈り物として2つめにもらった指輪。
最初にもらったのは鬼灯の飾りと鈴がぶら下がった簪をもらった
今でも重宝している




「...私完全に、鬼灯くんに負担..かけっぱなしじゃん」




居る意味がない。無駄。
邪魔しかしていない。支えになってさえいない
支えるって約束したのに。

彼にとってきっと、私は重荷で邪魔で...






「...もう、別れよう」




きっとそっちの方が、彼の為。
きっとそっちの方が彼は自由になる
きっと...好きな人と一緒に居させてあげられる
...私なんてもう、彼の目には映ってないはず




懐かしいな...最初の頃を思い出すよ
罵詈雑言、いろんなこと言われたな
でも、それでも愛していた。

今も好き。
そっと瞼を閉じれば思い浮かぶ。
...このまま寝てしまおう。どうせ明日は休みだし
...疲れた――――――。











――――金目当てなんでしょ?
あんたと鬼灯様じゃ、不釣合なのよ。
なんで貴方が鬼灯様の嫁なの?


ねねっ鬼灯様の何目当てなの?
脳みその味噌汁飲んで見せてよ


どうやって鬼灯様口説き落としたの?私にも教えて!!
今度は私が落とすから。


不倫って楽しそうよねー。特に硬派な鬼灯様とだったら――







やめてやめてやめてやめて!!!!!!
そんなんじゃない!!口説いてない!!お金なんかいらない!!
脳みそ飲めない!!
不倫知らん!!
不釣り合いで嫁らしくないのなんてわかってる!!


わかってる...だから、あなた達に従って別れる。

どうせ結局は、こうなる運命だったと思うし


頭と心が全く逆のこと考えるから、混乱しちゃう

好きなのに嫌いにならなきゃ。

嫌いになるにはどうしたらいい?

心の中で唱えたらなれるかな?

お願い、私の心。言う事を聞いて


彼をもう苦しめないであげて


...


嫌いにならなきゃ嫌いにならなきゃ嫌いにならなきゃ嫌いにならなきゃ...――――――
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