短編集用本棚。

なりたいんです
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彼を一目見て惚れてしまった





短い黒髪。
着物の背には鬼灯の模様

一本角。鬼神の方かな?

ハシビロコウ以上の目つき
たまにピクピクと動く尖った耳

何キロあるか分からない金棒片手に資料を読んでいる彼の姿





「素敵だわァ...」





なんて思いながら、細々とどこかの地獄の片隅で絵かきをしている女鬼が一名おりまーす

きっとあのルックスなのだから、モテるんだろうなぁ...


ちょっとどこ行けばお会いできるかな
もっとあの人を知りたい


働いている処はどこですか?

嫁(彼女)はいますか?

たくさんたくさんあの人と話がしたいな

でも深入りしたら嫌がられちゃうかな?

でも彼のことが気になる


友達――知人からのスタートでいいから仲良くなりたいな





今年の盂蘭盆祭を一緒に回りたいなー

でも流石に厚かましいよね
だって一目見ただけなんだから

あー好きです

好きなんです。鬼灯の君〜なんちって。









今日は一段と地獄も冷えましたね


彼に一目惚れしてからかれこれ、3ヶ月です
なんの進展も御座いません


いや、あるにはあった


彼が私のお店に来てくれた
名前は鬼灯くん

古株の鬼神さん

とっても怖い顔で迫力もあるけど、そこがまた素敵っ

だってその怖い顔でさえ、優しい一面を見せてくれたんだもの



彼はどんな人が好きなのかな?

髪の長さは?
私は今、肩くらいまであるボブだよ
どうかな?


あの時、彼と出会ってから私の右腕(筆)が止まりません
何も欲しくなくなっちゃった。あるとすれば、画材


君の似顔絵や似合いそうな風景やあの時見せてくれた表情を描く事が今の私の楽しみです


でもやっぱり物理的には進展はないんです
盛大で派手な恋じゃなくていいので、あなたの恋人になりたいんです


この恋心ばかり膨れて落ち着かない心臓をなんとか寝かしつけて、今日も終わります

こんな寝る寸前でも君のことを、想ってしまうんだ



今のこの時間、何してるかな?

まだお仕事中かな?閻魔様の補佐官って言ってたから

ご飯はちゃんと食べてるかな?

寝てたら風邪ひかないようにして寝てないかな?



あれ?後半オカンじゃん









桜が舞う季節頃



彼がまた来てくれた

と言うか、よく来てくれるようになったんだ
これ程まで嬉しいことはないよね!!



沢山たくさん質問しなくっちゃ!!





鬼灯くんは好きな人がいるみたい
でもその人は、記憶喪失?今までの記憶がないんだって

...ふーん。そのままずっとなくて、私に振り向いてくれたらいいのに



なんて!!野暮なことは思っちゃいけないよね

その人は今、鬼灯くんと一緒にお仕事してるんだって



羨ましいな...

いいなぁ...




私ももう少し頭が良くて

美人で

ソツなく仕事がこなせる敏腕秘書になれたらいいのになー









今日は盂蘭盆祭。



三人でお出かけしたんだよ?


私と――鬼灯くんと、あと一人は鬼灯くんの好きな人

え?修羅場?
な訳ないじゃん


私が一歩身を引いて、二人をサポートする祭りだったよ
これはこれで、楽しかったな...うん










――――沢山たくさん絵を描くの。

想いが届かないって知ってるからいっぱい描くの


そうしないと、心が張り裂けるかもしれないから。
いっぱいいっぱい大粒の塩の味のする粒を瞳から流しながらいっぱい描くの



好きなのに、好きなのに想いが届かないなんて辛いよね
でもこの想いをどこかにぶつけないと、私が私でなくなりそうで怖いの


だって、彼の知っている私が壊れるのは嫌だもの
彼がせっかくお店に足を運んできてくれてるのに、それがぱったりなくなるのは嫌!!!!

でも溢れそうで辛いの――――――――













思い切って告白してみちゃった



凄く不思議そうな顔で私を見てた鬼灯くん。
かわいかった

でも撃沈しちゃった
辛かった


だって彼、もう彼女と入籍してたんだもの
流石に既婚者相手はできないよ




彼が仕事のためにお店に来てるのは知ってるよ
でもね勝手に脳内変換しちゃうの

私のために来てくれてるんじゃないかって
でも違くて




彼が帰ったあと、思いっきりお店を飛び出し行く宛もなく駆け出しちゃった



地獄はいつも、空は少しどんよりしていて茜色な感じ
でも今日は雨が降ってたみたい


雨が降るなんて有り得ないのに、降ってたの
なんでかな?

その雨はね、ぱくっと食べてみると塩っぱくて...でも美味しかったの





...あーあ!!

やってらんない!!
でもすっきりした!!


だって彼がお店を出る際に、優しく微笑んでくれたんだもん





『貴方のお気持ちだけ、貰って帰ります。有難うございます』




だって!!

ここで謝られたら、私絶対泣いちゃってたよ
本当、つくづく紳士的で素敵で益々惚れちゃった
どーしよー








今日はやけ酒に決定!!

下戸予備軍の神獣とモモたろくんとお香ちゃんを呼んでヤケ酒だーーーーーー!!!









きっと私の人生の中で一番輝いてた時期かな
鬼灯くん、私は今もこれからもずっと貴方が好きです

例え私が別の人と結ばれても、きっと君への気持ちは変わらないと思う

だって、最初の初恋の相手だったんだから。


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