短編集用本棚。

□痛いな。逢いたいな
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君と二人で寒い夜、村を抜け出す



君の手は微かに震えていて、きっと村人に見つかった後のことが怖かったんだね



大丈夫。
大丈夫だよ



誰にも見つからず、触れられない遠い場所まで私が連れて行ってあげるから。



そんな弱気にならないで?
私が何度も何度も君の小さな手を強く握ってあげるから


村人や朝日が君を見つけ出す前に
ずっとずっと遠くまで

私が連れて行くから



君のその嬉しいのか、それとも悲しんでいるのか分からない涙を止めて上げられる場所まで連れて行くから

心配しないで。
安心して。



それにいざ見つかっても、私がいるから。
大丈夫
大丈夫

私はずっと昔から、君の―――鬼灯くんの、丁くんの味方だよ






大丈夫。
また会える

遠い遠い場所でまた逢えるよ


私が君を守ってあげる
意地っ張りで博識で心配性で好奇心旺盛甘えん坊で寂しがり屋で、でも優しくて繊細で、弱い君を守ってあげるから




君だけが逃げてさえいてくれたらそれでいいんだよ
私は―――――ヒトじゃないから。



大丈夫。
大丈夫

大丈夫




私は一人ぼっちじゃない
君は私の言うとおり 逃げてくれた


大丈夫
大丈夫



あの人にもらったこの神通力で 
なんとかしてあげる




大丈夫
大丈夫
大丈夫



痛いな。
痛いな




力を使うたびどこからともなく軋む音




痛いな
痛いな。



力を使うたび 体が崩れていく




痛いな
痛いな


逢いたいな





もっと君のそばにいたかったな。
君の笑顔がまた見たいな




痛いな
痛いな

居たいな
そばに





私も君も、どちらかを探してずっと世を回ってるんだよ





ポロポロ ポロポロ




身体がポロポロ崩れてく
おかしいな。



前はこんな感じじゃなかったのに
間違えちゃったかな

君を速く救い出したくて 早とちりしちゃったかな




ごめんね

ごめんね





今の私はどうやら 君とはもう逢えそうにないよ
選択肢を間違えちゃったみたい




ポロポロ ポロポロ





ごめんね―――――――――






"お待ちください!!私はっ丁はここにおります!!"









どうして?

どうして?






君は戻ってきた
どうして戻ってきたの?

冷え切った小さな手が私の頬を撫でる
ごめんね。
もう腕 なくなっちゃったんだ

あぁ 頬もとれちゃった






"もういいんです"








その言葉が 消えそうな君の笑顔が その涙も
私の心に焼き付かれていく





行ってしまう

行ってしまう

彼が逝ってしまう







待って。
なんで私の言うことが聞けなかったの
いつも聞いてくれたじゃない

どうしてなの
待って、





徐々に崩壊する 視界と 記憶

無くなって行く 過去の 私の記憶



私は 初めて 私の世で 失敗した んだ

彼を 救え なかった 



なんのため に崩れてくの?
空が 朝が 私を 埋めていく




私は 私だけが 彼と 
会えなくなった のね


好きなの に
どうして  私だけが



私 一人 しないで





他の 私は 逢えるの に なんで 私だけ――――――





ポロポロ ポロポロ
崩れてく



顔が

足が

首が

背中が




失くなって行く




私だけがなかったことにされる



ごめんね 丁くん 神獣さん
 

私は二人 忘れないよ―――――――。







砂になって 無くなっても



















分岐ルート:BAD END

いたかった。


というか、ゲームではないので御座いません
どこか遠い昔の何番目かの誰かが
このような人生を歩んだに過ぎません
ただ、鬼灯様が補佐官をお一人で頑張る普通の道筋です。
 

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