第七章【秋の季節は冬の始まり】

□第三十三話【まだまだ暑い残暑さん】
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「そういえば、明日からでしたっけ?お仕事が始まるのは」


『え?う、うんそうだよ。でも急にどうして?』






丁がゲームに目を向けておきながら、声だけで聞いてくる
明日からまた仕事が始まる...実に嫌なことだ





「いえ、大したことではありませんよ。お気になさらず」


『(え?...そんなこと言われると、逆に気になるんですけど!?)』






丁の背中をじっと見つめるも、当の本人には一切気づいてもらえず。
はあ、溜息を付きながら冷蔵庫と冷凍庫をそれぞれ見る

...何しようか何も考えてなかったわ







『うん?.........あれ?』





吉良は気づく。
いや、気づいてしまう

...冷凍庫の中にずっと放置しっぱなしだったはずの"アレ"がない





『GO○IVAなくね......?』


「......いたいっ」





丁の方を見ると、何故かコントローラを足に落としていた
...動揺している?





『......たべ「食べてません。」――本当に?』

「ホントウデス。兄上に誓って食べてません」







何故そこで翔命くんがでてくる?
まさか、とは思う

...私が留守番頼んだ時、食べたな?

確かにあの子が来る前までは存在していた。
しかし、その間からは一切冷凍庫を開いてはいない





『正直に言わない子は、ほっぺたひねり回しの刑だからね?わかってるよね?今度は本気だからね』


「食べました。兄上と一緒にサクッと食べました」



『(翔命くんとの約束を守ったのはわずか数秒!!?)』






あっさり自白した丁。
そんなに抓られるのが嫌だったのだろうか...

...まあなんにせよ、素直な子ではあると思うよ。うん






「さ、最初は...私があいすの存在を思い出してしまって、それで..冷凍庫を見ようとなりまして、」

『うん、うん』


「そ、それで二人分ちょうどあったのですが...最初は!!最初はお止め致しました!!」


『うん、(うん?なんか誘導尋問してるみたい)』






丁がどんどん自白していく
まあ別に怒ってる訳じゃないんだけどね

忽然となくなってるのにビックリしただけなんだけどね






「で、ですが..兄上が〈大丈夫だって!!アイツだぜ?どうせ思い出すのは冬あたりだろ。内緒にしとけばだがな?〉と言って...」


『......(奴め...人を馬鹿にしおって。料理するんだから、必然的に見るっての。コンビニばっかじゃないしっ)』






基本的に吉良が言う"料理"は冷食も混じえた(8割)ものになる

せいぜい丼ものやカレーにシチュー、炒め物とごく一般?の人が普通にこなせるものをなんとかこなせるレベルである

※お忘れの方は、もう一度言うので覚えておきましょう








『それで?...二人で食べたって訳ね』


「も、もも申し訳御座いませんでしたっ」



『あははっ別にいいよ?元々ずっと放置してた私もいけなかったし、まあ二人が美味しいって思ってくれたのならそれでいいかな?』


「......っ」



『あれ!!?丁くん!?どこ行くのーーー!!』







丁は顔を俯かせたかと思うと、突然玄関へ向け走り出し部屋を飛び出していった

え!!?えっ!?何、何が起きた!!?






『......あっぼーっとしてた。追いかけなきゃ!!』





自分も後を追うが、既に丁の姿はここの階にはいない
マンションを出た?
嘘...その後とか広大すぎてわかんないよ


一応手すりから身を乗り出し、丁が来ないか探す
居た!!右の方に行こうとしてる!!





『丁くん!!待って!!ちょっどこ行くの!!?』


「...吉良は中でお待ちください!!すぐ戻ります!!」


『(え、えええええええ...)』






丁はそれだけ言うと、颯爽と右の方へと走り去ってしまった...

...待っとけって、心配で仕方ないんですけど。あっち方面って確か、丘とかデパートとか..スーパー?
だめだ、色々あるぞ。分かんないぞ






『ど、どうしよう...行くべき?行くべきなの?待つべきなの?』





オロオロと廊下を行き来する
要は待つことにした

まず、丁がどこに向かったのかさえわからない始末だからだ
今行ったとして、完全にすれ違いが生じるだろう


...あー心配だわ。大丈夫かな。あ!!これが初めて子供にお遣いを頼む親の気持ちね!!





『大丈夫かな...あのまま追いかけてても、絶対追いついてなかっただろうな..年って怖いな』




なんて一人で嘆いていること数分。
マンション内に誰かが入るのがわかった

丁だろうか?

...あ、ロック大丈夫かな?合鍵一応渡してるけど



このマンションは、持ち主の場合「鍵」のみで出入りできるが、部外者はパスワードor持ち主が許可したと言う証拠にボタンを押してもらってからではないと入れない仕組みになっている

そしてエレベーターは、部外者のみ改札機からカードを受け取り乗れる。
自動で招き入れられた階まで運んでくれる仕組みだ。降り間違いなどの事例は今の所ない

階段は、扉に差し込まなければならない

住居人は鍵or指紋で大丈夫だ



...でも、お高いんでしょう?

A:はい、お高いです







『来たかな?大丈夫かな?』






ポーン♪


エレベーターがこの階で止まった






「吉良!!買って...きましたよっ」

『え?買ってきたって...なにを?』





丁は此方まで息切れしながら(何故か髪がボサボサである)此方に向かってくる
そして、右手に持った袋をずいっと手渡してきた

何があった!!?






『これ...GOD○VA?』


「はあ、ぜえ...そうです。一応、覚えていたのでっ同じなはずです」



『丁くん...でも、これ高い奴のはずだよ。どこからそんなお金を』


「先日の、お祭りのお小遣いの残りで..買いました」


『(あー...そういえば、渡してたな。そのままあげたっけ。あれ、使い果たしたものだと思ってたわ)』






ふと思い出す。

"丁くんにはお金渡しておくね?"そう言って五千円札を渡した記憶が蘇る

...確かお札お札とか言って、丁くん燥いでたなー





『...そっか。ありがとうね丁くんっ嬉しいよ(つか責任感強い子だな)』

「わっ吉良!!?...と、とりあえず、家屋へ戻りませんか?」


『あ、うんそうだね。...でも凄く嬉しいよ!!』





丁に徐ろに抱きつくと、物凄くびっくりしている
予想してなかったのかな?

そして、先程気づく
ちゃっかり二人分入っていたことに。

...ま、いっか!!












『ん〜〜〜〜...!!やっぱこのアイス美味しいね!!』

「はい!!それに、...倍美味しいです!!」



『え?何が倍美味しいの?』

「何でも御座いません!!」


『????』







そんな、突然思い出したアイス事件なのであった。


Q:冬に食べるアイスもまた格別ですよね?

A:おこたに入ってヌクヌクになった頃合で食べると美味だと思いです


夏編はこれにて終了です(ここはおまけのようなものです)
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