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□キス1
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洗い物を終え、水道の蛇口を閉めた途端、大和に後ろから抱きしめられる。
驚いて顔だけ振り返ると、身体もくるりと回転させられ、間髪入れずに唇を奪われる。
「ん……!」
焦るように舌が入り込み、戸惑う私の舌を絡めとる。
唇を少し離して口内から外へ連れ出すと、幾度か擦り合わせ、また深く咥え込まれた。
(…もう、すぐベロ入れる……)
大和の身体の勢いに押され、腰がシンクに押し付けられる。
まるで見上げるような角度で、大和のキスを受け入れる。
ふと、唇が離れる。
「……?」
腕を取られ、忙しなくソファーまで連れて行かれる。
ソファーに座った大和に腰を引かれ、向かい合わせになり、膝の上に跨がる格好で座らされた。
(この姿勢…ちょっと恥ずかしい…)
それでも、私の胸元から見上げる大和の視線に誘われて、再び唇を合わせる。
今度は私が大和を見下ろすような角度で、舌を絡め合う。
大和の指先が、背骨をゆっくりと上から下へなぞっていく。
(…でもちょっと、コレ……)
恥ずかしさに耐え切れなくなり、吸い付く大和の唇を引きはがすように、顔と顔の間にムリヤリ両手を差し込んだ。
突然キスを遮られた大和は、眉間に皺を寄せ露骨に私を睨む。
「だ、だって……」
必死で弁解をする。
「この角度じゃ、よだれが、いっぱい入っちゃうよ…」
少しの間を置いて、大和が真顔で言った。
「それが欲しいんだけど」
「!」
顔がかあっと熱くなる。
それを見た大和が口角をあげてにやりと笑う。
「ほら」
薄く開いた唇から、赤い舌が覗く。
その赤に目を奪われ、私はもう、まわりが見えない。
顎を軽く掴まれ、顔を寄せると、唇が重なる。
ベロの下にたまった生温かい唾液を掬い上げ、舌にのせると、
それを受け取った大和が気持ち良さそうに甘く声を漏らした。
(…もう、知らない)
換気扇も、お風呂の保温も、付けっぱなしで。
メイクだって落としてないし、シャワーだって浴びてない。
大和の明日の朝の時間だって聞いてないのに。
(…もういい。このままここに沈んじゃうから)
何もかも放り出して、溺れるように、大和の唇を求めたーーー。