単細胞=多細胞。

□視界暗転
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「いらっしゃっせー」


ぴろぴろぴろーん。コンビニ特有の音を聞き、小さく客を迎える定型文を口に出して、缶コーヒーを保温性のある商品棚に適当に突っ込んだ。

今入ってきた客、中々イタイな。横目に盗み見た感想。
真っ白なワンピースの上に黒いパーカーを羽織るお世辞にも綺麗とは言えないお顔の、恐らく学生かと思われる。あーあれかー中学二年生特有のあれやこれなのかな。
あんなカッコだったらナポリタンとか食べれないんろうな、服に飛び散ってさ。と言うかこの人髪の毛ボッサボサだなやら、どうでも良い事ばかり頭のなかをぐるぐるぐるぐる回っている。
仕事中になに考えてんだろう。

缶コーヒーを棚に全ておざなりに収めてよいしょ、と人知れず呟きながらコーヒーが入っていた段ボールを叩き潰す。
嗚呼、ずっと座りっぱなし腰痛いな。
次する事って何だっけ、周りをみまわす。お。


さっきのイタイ学生、レジ並んでるじゃん。と言うかアレ手に何も持ってねえんじゃねえの……。
何なの、あのカッコでおでんとか買うのかな。
白ワンピがおでん…………
やべえ、何か良く分かんねえがちょっと笑いそう、また笑いのツボ可笑しいって言われる。


そういや先輩(レジ担当)どこいったんだ。



裏にはいない、な。店内で品出し…もしてない。外には、出た形跡無し。………本気でどこなの。




あ。もしかしたら。


まさかかと思うが…

いたし。 
…トイレかよ。
なにやってんのあの人。店員だろ。
大丈夫かよこの店。


先輩が閉じ籠っているトイレに冷たい視線を向けているとレジからチラチラこっちを見ている人物が、一人。
そう、さっきのイタイ学生である。
何なんだよ…レジに行けっていうのかよ。
嫌だぞ、俺レジ苦手だし第一あなたがブツブツ言ってんのが怖いです。行きたくねえ。

関わりたくないからイタイ学生の視線から逃れるように特に直す必要も無いおにぎりの傾きを直す。
すぐぐちゃぐちゃになるからとても無駄な行為だ。
だが、それを黙々と続ける。
先輩はトイレからまだ出てこねえ。そして相も変わらずイタイ学生はこちらを見てくる。
服装もイタイが視線もイタイ。






だがしかし。






現実とは無情である。
先輩トイレから出てこねえしイタイ学生はしまいにこっちを睨み付けてきた。
すげえ目力である。
そして客も他にこねえ。


…………………ああ、もう。



しょうがねえ、行こう…。
何かすげえ嫌な予感がするな何でだ。

「すみませーん」とにこやか〜にレジへ入り早足で潰れた段ボールを所定の場所に置きレジへと向かいイタイ学生と向き合った。

にこり、と営業スマイルを顔に貼りつけ視線を合わせる。













瞬間。











ゾクリ。



背筋に冷たいものが通った感覚。
目がイってる。
充血した、濁った赤黒い色の瞳をひんむかせている。
良く見たら顔の皮膚が爛れている。
そして、一番はぐにゃりと歪んだく
      「あははっ



ぶすっ。








いたっ。
ん、あれ。なんでオレ倒れてんだよ、ん。
ちょ、え、ん、あ。




「あはははははは!!!!!!神様!!!これで良いよね!これで、これで!!」



腹が熱い。なんかでてる。なんだ。血か。
一周まわってれいせいになってきた。熱い。




「徹や一に英に会えるあはははは!!」



とおる、はじめ、あきら……?
何だそれ。はいきゅーじゃねえかよ。
ん。なんか。よ、くわから、んが。
とり、あえ、ず。








い ら っ と き た





最後の力をふりしぼりカウンターに、手を、ついて足をあげる。いたい。んで、顔面むけて、全力スイング。












イタイ学生改めキチガイ学生の鼻血がオレの今世の最後の映像だったことに後悔した。


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