文豪の涙(BLD)

□探偵事務所入社試験
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場所は変わって俺たちは1階の喫茶店にいる。



「すいませンでしたッ!」




バンッという大きな音を立て、潤が敦君に
頭を下げた。



さっきからこんな調子で潤が敦君に謝り続けている。



「谷崎、もう謝るな。」


「そ、そうですよ。谷崎さんは悪くないですから。」



『潤、敦が言ってんだからもういいだろ。
もう終わった噺なんだしさ。』


な?と肩をたたけばようやく頭をあげた。



「えッと……改めて、僕は谷崎潤一郎。
こっちは妹のナオミ。」


気の弱そうな笑顔を浮かべて自己紹介をする
潤。



「ご兄妹なんですか!?」


まぁ、驚くのも無理はないよな。


潤とナオミは驚くほど似てない。

俺も初めてあった時は叫んだ。




「えぇ、何処までも血の通った兄妹ですわ。
この辺の体つきなんてそっくりで…」



そういいながら潤の体を触りだした。


『敦、これ以上追求すんな。俺らも困る。』


「あ、うん…」



『それと、俺の方も改めて綴葉蓮だ。
昨日から探偵社に入社させられたんだ。』



新人同士よろしくな、といえばよろしく!
と言われた。



「これで小僧も探偵社の一員だ。
決して探偵社の看板に泥を塗るような真似は
するなよ。」


国木田さん、かっこいい忠告のとこ悪いんだけど……



『そこで泥塗りまくってる自殺マニアは
放って置いていいの?』



俺が指さした先にいるのは、首吊り自殺の
算段をしている太宰さんが。




「ッ〜!!太宰、やめんか!」



あー、国木田さん怒っちゃった。





『そこの大人は放っといて、別の噺しようぜ。』



「あ、みなさんは前職なんだったんですか?」



敦の疑問に太宰さんがうっすら笑みを浮かべた。



「うふふ、当ててご覧よ。定番なんだ、
先輩たちの前職を当てるの。」



『へー、面白そう!』



でも、俺は太宰さんの前職知ってるんだよな。


チラリと太宰さんを盗み見ると、他の人に
バレないよう、「私のは言わないでね。」
って口パクをされた。



日頃の仕返しに言ってやろうかと思ったが、
その後追加で「黙ってくれたら今度甘味を
御馳走しよう」と言われたので黙った。



だって美味いんだもん、甘味。



『国木田さんは確か数学教師でしたよね?』


「……覚えていたのか。」


『はい。前に教えてもらった時、教え方
上手くて太宰さんに聞いたら教師だって
教えてもらいました。』



すごい解りやすかったんだよ!
学無しの俺でもすんなりわかったし。




「えーと、谷崎さんたちは学生さんですよね?」


敦の問に谷崎兄妹が頷いた。




まぁナオミは制服だしな、分かり易いだろ。




「えーと、蓮は……学生?」



『残念、外れだよ。俺は中学の時に1年くらい
しか学校に通ってないんだ。』


「蓮、お前まさか不良だったわけじゃ
無いよな!?」



ガタッと勢いよく立ち上がった国木田さん。


物凄い形相だ。



『いやいや、違いますって!俺は貧困街育ち
なんですよ。拾ってくれた人達が中学から
通わせてくれたんですけど、体が追いつか
なくて結局やめたんです。』



今思えば、一年だけ通えただけいいと思う。



国木田さんは納得したらしくおとなしく席についた。



「結局、蓮の前職は?」



『あ、俺は定食屋のアルバイト。一昨日まで
やってたんだ。敦が食ったまかないは
そこのやつ。』



そういえば、なるほど!と敦。




「太宰さんは……えーと……」



パッと思いつかないらしく、頭を抱える敦。



まぁ逆にすぐ解ったら怖いな。




「うふふ、ちなみに私の前職を当てられたら
賞金が出るよ。」


賞金の一言に敦の目の色が変わった。



次々に職業を出していくが当たらない。



『太宰さんがサラリーマンだったら
上司は苦労するんだろうなぁ……』


そうポツリと呟きながら国木田さんを見る。



現時点で(太宰さんのせいで)苦労してる人は
彼だと思う。




『敦、諦めろよ。その人の前職当てられる
訳ないって。』



「蓮は知ってるの?」



『まあな。でも内緒〜!』



甘味を食べたいからね!




しばらくみんなと談笑していたら潤の
携帯に電話が入った。



「はい、わかりました。」



潤が通話を切ると全員が何だった?という
視線を向ける。



「依頼だそうです。戻りましょう。」





どうやら初の依頼のようだ。


足引っ張らないように頑張ろう。





立ち上がったみんなに続いて俺も喫茶店を出る。





さぁ、初任務だ!






探偵事務所入社試験、初任務。





(蓮、初任務だね。)
(はい!頑張りますよ!)
(ふふ、頑張り給えよ。私も陰ながら
応援するから。)
(あ、太宰さん甘味忘れないでくださいね!)
(もちろん、二人で行こうね。)





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