喰種の涙

□あんていく
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着替え終わると、ガチャと音を立てて
部屋のドアが開いた。



そこにいたのは痩せこけた長身の男性。


彼は真戸呉緒という、喰種捜査官通称【ハト】で
上等捜査官。



よくここに来ては色々な事を教えてくれる。
俺にとっては教師であり、父のような存在。



真戸さんも俺を可愛がってくれてい
る。
本当なら復讐の対象になる筈なのに、真戸さんは
「君は喰種たちの被害者だ、殺すなんて
しないさ。」と言ってくれた。




「おや、今から出かけるのかな?」


『はい。そろそろ新しい本も欲しいなって
思ってたんで。』


「そうかそうか。じゃあ今日の夜また来よう。」


『あ、もしかして用事でした?』


なら今日は出かけるの辞めようかなぁ〜。



「いや、亜門君の訓練相手をして欲しかったんだ。
君は身軽で足の早いからね。でも出かけるなら
夜にでも付き合ってくれ。」



亜門こと、亜門鋼太郎は一等捜査官で
とても熱心な男性だ。


喰種を強く憎んでいて、多分一番喰種捜査官に
向いてる人。



最初は憎まれていたんだけど、今は仲がいい
人の一人。


普段からよく訓練に付き合うんだけど、
その誘いだったらしい。



『じゃあ夜にやります。夕食前にでも
声かけに行きますよ。』



「ああ、頼むよ。あと、髪がボサボサだ。
そこに座りなさい。」



部屋に置いてある椅子にかけるように言われ、
おとなしく座ると部屋の隅においてある
雑貨類の入ってる棚から櫛とリボンを出した
真戸さんが俺の髪をとかし始めた。




「全く、君も暁と同じ女性なんだから少しは
身だしなみに気をつけたらどうかな?」


『んー‥‥でも俺一応外じゃ男って風に
してるんで別に。』


女ってバレると面倒くさいし、なめられるし。

まぁ、実際弱いんだけど。




「ほら、これでいいだろう。」



真戸さんが手を離すと俺の金髪が高い位置で
くくられていた。



『ありがとうございます。じゃあ、俺行ってきます!』



にっと笑って挨拶すると気をつけなさい、
と外していた手袋を付ける真戸さんに見送られ
外へと出た。


















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