喰種の涙

□バイトが増えてる‥‥
1ページ/4ページ




俺は今すこぶる機嫌が悪い。
そりゃあもうものすごく悪い。


原因は俺の部屋の中央にある机の上に
存在している赤い液体の入ったコップ。




これが俺のストレスの原因であり、機嫌の悪さの原因でもある天敵。







そう、人間の血だ。








『無理、コップ一杯なんて飲めるわけねーよ!』





バンッとベッドを思い切り叩くと、部屋の中に
いた亜門さんと真戸さんが溜息をついた。



幸せが逃げるよ二人とも。
溜息の原因俺だけど。





「凜音、お前検査の後2週間寝込んでただろう。
その原因は栄養不足なんだぞ?」



『亜門さん‥‥‥‥栄養不足なのは分かってる。
でもさ、人間の血だよ!?飲めないわ!』




「お前、本当に喰種の血入ってるんだよな?
逆になぜ飲めない。」



『飲めないもんは飲めないの!俺は味覚だけは
人間だから!無理!』





「‥‥亜門君、こうなったらこちらも手段を
選んでる場合ではないね。」



「そうですね、真戸さん。」












やばい、2人ともかなり我慢の限界に来てる。

だってさっきのやり取り10回はやったもん。
そりゃ我慢も限界になるわな。






ということで、






『逃げるが勝ち!』




持ち前の運動能力を駆使して部屋から脱走。
CCGの館内を逃走舞台に俺は全速力で走る。





俺はリゼと会ってから数日後、血液検査やら
いろいろなものを受け、その後ぶっ倒れたらしい。




原因は、さっき亜門さんが言ってた栄養不足。
普段は人間の食べ物だけで何とかなるんだけど
やはり時々人間の血、それか肉を取らないと
駄目らしい。



まぁ、ぶっちゃけ俺1ヶ月人間の食べ物以外
喰ってないからめちゃくちゃ医者に怒られた。



まぁ、そこから2週間寝込んでて、現在に
いたります。




『亜門さん足速ッ!何者!?』



「喰種捜査官だ!それより凜音!いいのか!?
このままだと今日の自由時間無くなるぞ!」




自由時間、その一言に反応し足が止まる。

と、その隙に捕まってしまった。





『自由時間は欲しいです‥‥‥‥』


「はぁ、なら、早く、戻れ‥‥‥‥」


『はぁーい‥‥‥‥亜門さん大丈夫?』


「誰のせいだと思ってるんだ!」



100%俺ですね。
ごめんね、亜門さん。今度ドーナツ奢るから。、












と、いう事で戻ってきました。



目の前には早く飲めと言わんばかりの血の
入ったコップさん。


あああ今すぐにでも捨ててしまいたいが
俺なんかのために用意されたものを捨てるのも
申し訳ない。



と、いう事で頑張ります‥‥‥‥




グッと一気に流し込み、一気に嚥下する。



と、口に広がるのは鉄の味。


それを感じたと同時に、吐き気に襲われる。




『っぐ、ぅ!』




口を押さえて吐き出さないようにする。


と、亜門さんが水を用意してくれたらしく
それを一気に飲み干して何とか吐き出さずに済んだ。





『っうぇぇ‥‥‥‥亜門さん、もう一杯
お水‥‥』



何も言わず水を出してくれる亜門さんの
優しさが身にしみる。



『っはぁ‥‥‥‥あー、辛い。不味い。』



口の中にまだ残っている血の味に不快感を
覚えながら残りの水をごくごくと飲む。




『う゛ー‥‥絶対目赤くなってる‥‥もう嫌だ。』



「目が落ち着いたら外に出ることだね。
そうそう、それと1つ君にお願いだ。」




にっこりと笑身を浮かべた真戸さんに首を傾げる。




「親子の喰種がいたら連絡をしなさい。
この前葬った喰種の番(つがい)を逃がして
しまってね。」




『がってんです。』




悪さをしてるなら、ほうって置けないな。




「凜音、気をつけて行けよ。」



『亜門さん、貴将さんの心配症がうつってるよ。
俺は平気だから、亜門さんこそ気をつけてね。』



へらっと笑えば頭をくしゃくしゃされた。





二人が出ていったあと、俺は着替えて
久し振りのあんていくへと向かった。



もちろん、赤く染まった赫眼を晒さないよう
フードを深くかぶって。















次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ