文豪の涙(BLD)

□少年の噺
1ページ/3ページ




物心がついたとき、俺がいたのはこの世界の
どん底だった。



人が住むための建物は風化し、あちこちから
餓死した人の腐臭が漂う、そんなところだった。



明日が保障できない世界で、俺はアイツと
いた。



そいつは俺より体が弱くて何度死にかけたか
わからないが、まぁなんとか2人で生きてたんだ。



『なぁ?いつか俺らもちゃんとした生活が
できんのかな?』


隣で咳き込むソイツにそう問えば鼻で笑われた。



「そんなこと、僕(やつがれ)がわかるわけ
ないだろう。その前に野垂れ死にするかも
しれぬな。」



『ははっ、だよなぁ。でも、お前は絶対に
そのうち上に上がれると思う。勘だけど。』


んで、俺は置いていかれて死ぬのかねぇと
笑えば阿呆かと叩かれた。



「ならば僕が蓮を助けよう。そして必ず
僕の物にする。」


『物かよ!人間扱いしてくれー。』


「……相変わらずの鈍さだな。」


はぁ、とため息をつかれた。
何なんだ。




「これ以上考えるのはやめろ。熱を出すぞ。」


『俺が馬鹿だって言いたいのか。』


確かに学は無いけども。
読み書きも出来ねぇよ!悪いか!!



……もういいや、疲れた。



『寝るか。』


「寝るのか。」


『だってほかにやることねぇし。』


確かにと頷いたソイツは、俺を抱き枕のように
抱きしめた。



これはこいつの寝る前の癖。
俺にしかやらないけど、こうすると安心するらしい。


前になんで安心するのかって聞いたら、
蓮だからとか言われた。
意味がわからんよな。



まぁ、いいか。



『明日、生きてられるといいな。』



「……蓮、早く休め。」



『ああ、そうだな。』



「よく眠れ。」


『おう。お休み龍之介。』






友人に体を預け、まぶたを閉じた。














.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ