文豪の涙(BLD)

□虎探し
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横浜内のある食事処────



俺の隣でガツガツと茶漬けを食う敦と
目の前でにこにこ笑う治さんと理想と書かれた
手帳をめくる国木田さん。



俺はというと国木田さんが頼んでくれた
餡蜜をもぐもぐと食べていた。



『国木田さん、なんか俺まですいません。』


「いや、お前は二年前の事件で助けてもらった
からな。……だが、小僧が俺の金でたらふく
茶漬けを食うという予定は無かった。」



『あ、はは……』


敦はもうしばらくは茶漬けを見たくない!
なんて言ってるもんだから国木田さんの
眉間のシワの数が半端ない。





「所で、お二人はどんな仕事を?」



満足した敦がそんな疑問を二人にぶつける。


「俺達は武装探偵社だ。聞いたことないか?
切った張ったの荒事をしている。」



国木田さんがポケットからチラリと黒く光る
拳銃を見せた。



武装探偵社は警察と同じような権限を持って
いるみたいだから、拳銃を持ってても許されるらしい。



『また危ない依頼ですか?』



「今回は虎探しだよ。」



ほぉ、虎。

こんなとこ出たってしょうが無いだろうになぁ。


そういや、敦のいた孤児院も虎に襲われて
口減らしに追い出されたんだっけ?


少しズレたことを思っていたら敦が突然
椅子から落ちた。




その表情からは、焦りと困惑が見て取れた。



『敦……?』


「ぼ、僕これで失礼します!ご馳走様でした!」



脱兎の如く逃げようとした敦を国木田さんが
捕まえた。



飯代を腕一本と虎に関しての話どっちが
いい、と脅され再び座る敦。



『なぁ、敦さっき言ってた孤児院の話。
お前、口減らしに追い出されたんだよな?』



「う、うん、そうだよ。虎が作物荒らしたから。」



『んで、つい最近土手らへんで見たんだっけ?』



「そう。孤児院の大根食ってりゃいいものを
僕を追いかけてきて……」




なんだか、違和感を覚える。


だっておかしいだろう。




なんで土手にでるんだ?

食料は孤児院の方があるだろうに。





(敦のいる所に虎有り、ってか。)




偶然にしては、出来過ぎだろう。







一人で悶々と考えていると、突然肩を叩かれ
ビクリと跳ねる。




「蓮、君も手伝ってくれるね?」



肩を叩いたのは治さん。

やっべぇ話聞いてなかった。



『何を手伝えって??』




「虎確保。私と敦君と、君で。」













『はぁあああああ!?』








店の迷惑になる、と国木田さんに怒られた
のは言うまでもない。











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