文豪の涙

□少年の不安
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龍に襲われてから一日が経った。


私はアパートの自室でパソコンと向き合っていた。

なんでも敦君に大金を賭けている輩がいる
みたいだ。



まぁ、賭けた奴はすぐにわかった。
絶対アイツだ。



『はぁ、疲れた。』


パソコンを閉じて伸びをし、冷めきった
珈琲を食道へ流し込む。




昨日の襲撃で、潤君とナオミちゃんは晶子さんの
餌食になったことだろう。(青藍が云ってた。)



敦君はそこまで重症じゃ無かったから今頃は
目覚めているんじゃないだろうか。


『よし、私も出勤しますかね!』


もう大分遅刻だけど、情報屋の仕事してたから
仕方ない。



Tシャツにパーカー、ジーンズとブーツを履いて
(イメージ的にはカゲプロのカノ?的な)
御札とか必需品をウエストポーチに入れて
出る。



と、大量の荷物を持った敦君がいた。


(……家出少年みたいだな。)



ふと気になり、私は声をかけることにした。




『そこの家出少年っぽい敦君。』


「!あ、夕姫さん。」



『やぁ。で、何処に行くのかな?』


「あ、えっと……」


『探偵事務所を辞めようとしてる?』


「!」



やっぱりね。なんとなく思ってたけど。


『龍……芥川に何か言われた?』


「はい……僕は周りに迷惑をかける存在だと……」


ははぁ、だから探偵社に迷惑かけないように
出てきた訳か。



『もう、君は昔の私みたいだな。』


あの頃の自分を見てるみたいで、なんか
逆に親近感沸くよ。


私は敦君の手を引いて空いていたベンチに座った。



そして、敦君の頭を撫でながら優しく
話始めた。



『考え過ぎだよ、君は。迷惑をかけない
人間なんて居るわけ無いでしょうに。』


「でも!僕のせいで谷崎さんが!」


『それは敦君が居ようが居まいがやられていたよ。』



龍は敵を無傷で返すほど優しくないからね。



『そうだなぁ、それでも潤君の事を気に
するのなら、私と約束をしよう。』


「約束ですか?」


『うん、約束。不幸な少年と、化け物との
誰にも知られない約束。』



『これからは、沢山の人を助けるの。 自分が迷惑をかけた分の倍くらいのね。』



これなら、プラマイゼロじゃない?と
笑えば、敦君も笑ってそうですね、と云った。




『それにね、敦君。』

「はい?」




『私は君とまだ出会って間もないけど
とても楽しいよ。だから、君が居なくなってしまう
方が私にとっては迷惑だ。』



生憎、私は退屈な日常と大事な人が居なくなることが
世界で一番嫌いだ。



「っはい。ありがとう、ござい、ます。」



『お礼を言われるような事はして無いよ。』



そう笑って、敦君の目から溢れそうになっている
涙をそっと拭った。
















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