短い涙

□ヴィラン連合の日常
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朝、息苦しさを覚えて目を覚ます。


『ん〜…くるし…』


ゆるゆると目を開けて最初に入ってくるのは黒いシャツとそこから覗く鎖骨だった。


『…あ?』

おかしい、昨日俺は一人で寝たはず。
なのに今目の前にあるのはいつもべったりと離れない子供大人が着ているシャツ。


「ん…紅うるさい…」


俺の混乱の元凶である――死柄木弔はさらに拘束を強め寝ようとしている。

いやいや待て、待ってくれ。


『なんで弔が俺の部屋にいんの、昨日別だったじゃん。』


「耐えられ無くなった。」


『ベッド狭いって言ったのお前だろ…』

仮にも男二人だぞ??それがシングルで寝られるなんて誰が思うよ。


いくらお前が細かろうが!狭いもんは狭いんだ!!


「紅もっと近寄れよ、落ちたら危ないだろ。」


『いや俺起きる…』


「だめだ、紅がいないと俺寝れない。」


『いや起きて黒霧さんの手伝いしないと…って痛い痛い弔、力強い。』


ぎりぎりと手首を離さないと言わんばかりに四本指でつかまれる。


こりゃだめだ、折れるか。


『わかったわかった、寝るから。』


枕元に置いておいたスマホから黒霧さんに朝の手伝いができないことを伝える。


「紅。」


『何、弔。』


「狭い。」


『だから言ったじゃん、二人でシングルは厳しいよって。』


「ダブル買うか…」


『やめろ部屋が狭くなる。』


つうかその金は資金分に回そうよ。


弔が腕を俺の背に回してさっきよりも体をぴったり密着させる。


相変わらず心配になるくらい細い。



『弔、苦しい。どこにも行かないから少し力緩めて。』


「やだ。」


さっきからこいつは駄々っ子か、いやいつものことなんだけどさ。



弔は俺の髪に顔をうずめるとぐりぐりと押してきた。痛い痛い。


なんだこいつ、寝るんじゃなかったのか。


仕方ないので背中をポンポンとしばらくたたいていたら上から寝息が聞こえてきた。



『デカい子供だなぁ…』


そう言って苦笑し、俺も目を閉じる。










結局俺たちはそのあと黒霧さんがたたき起こしに来るまで全く起きなかった。





















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