喰種の涙

□悲劇の夜
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全ての始まりは十年前のあの日だった。



その日は俺の誕生日の日で、両親が仕事を
休み、3人でお祝いしようってことになった。



その日は午後から雨が降っていてなんとなく
嫌な感じがしたんだけど、俺は学校から
走って帰った。





早く帰って母さんと父さんに祝ってもらいたかったんだろうな、きっと。




家まで傘を差さずに全力で走って帰り、
ドアを開けた。





『父さん!母さん!ただいま!』




そう家の中にいる両親に向かって叫んだが
返事はなかった。




代わりに聞こえたのは何かの咀嚼音。




『父さーん?母さーん?いないのー?』



そう言いながらリビングへと足を運び
中へ入った。



ここでリビングへ入らなかったら俺は普通の人間
でいられたんだろうな。




なかに広がっていたのは、真っ赤な血の海と
その中に横たわっている両親とその両親を
喰らっているナニカ。







声が出なかった。




あの時は9歳だったから目の前で起こっている
事が分からなかったんだろうね。





ただわかったことは、両親がもういないって
こと。






「あらぁ‥‥‥‥?こどもがいたのねぇ‥‥」






両親を喰っていたモノが俺の方を見た。




逃げなきゃ、そう思ったが既に遅く体に
何かが巻き付いた。






「うふふ‥‥いいの見ィつけた♪あなたを
実験体にもって帰ろうっと。」






実験体、その言葉の意味は分からなかったが
きっとこれから俺に不幸が訪れるんだなとは
遠ざかる意識の中で思った。








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