喰種の涙

□親子の喰種と悲しみ
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『♪どうか僕を忘れないで
世界に溶けてぼやけて見えなくなる前に
君の手でどうか僕を♪』



歌を口ずさみながら、人気の少ない路地裏を
歩く。




『♪ねぇ 僕は僕が分からないの
誰か 僕を知りませんか 僕の答え
知りませんか 僕を見て月と逆さまの
世界が嗤った♪』




奥へ奥へ進んでいったとき、背後から人の
気配を感じた。




『……?』





なんだろう、と思いながら気配のする方へ
足を進めてみた。




気配のある場所へ近づくほど血の匂いが濃くなっていく。





(もしかして、喰種が人間を……?)





なんとなく嫌な感じがして、俺は地面を
蹴り、走り始める。





そして、着いた先にあったのは、見知った
喰種と、良く知る二人の喰種捜査官。




喰種の方は倒れていて、あたりが真っ赤だ。





もう、こと切れてるだろう。






『ま、真戸さんに、亜門さん……?』




恐る恐る声をかけるとこちらを二人が見た。




真戸さんの手には喰種の赫包から作られた
クインケが。






「ああ、凛音か。今から帰りかな?」



クインケをアタッシュケースにしまう真戸さん。




『あ、はい。あの、二人が配属されるのは
来週のはずじゃ……』




「ああ、それのことか。ここらで例の
喰種が目撃されたみたいでね。」




例の喰種、きっとリョーコさんたちだ。




『そ、うですか……』



どうしよう、きっとその内に殺されてしまう。


芳村さんに言わなければ。




「凛音?」



亜門さんに声をかけられて思考が一瞬
停止する。




「どうした?具合でも悪いか?」



『大丈夫、です。俺、先に帰りますね。』




久々に死体を見た事と、リョーコさんたちが
殺されてしまうかもしれないという不安が
一気にきて気分が悪い。




その場から逃げるように走り出し、俺は
CCGへと帰った。






自分の無力さと、弱さを呪いながら。
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