喰種の涙

□悲しみの連鎖
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瓦礫の山の上でぼうっと揺れる水面を
見ていたら、その波紋が乱れた。





のそりと顔を上げると、そこに立っていたのは
つい最近仲良くなった研だった。




「やっぱり、凛音だ。」



『研……なんでこんな所にいるんだよ。』



濡れるよ、と言えば研も瓦礫の山に登ってきた。



「僕は眠れなかったから散歩に来たんだ。」



『そっか。俺は、何となく脱走。帰ったら
怒られそうだよ。』



あー、そうだ。帰らなきゃ。




『帰んなきゃな……皆に、怒られちゃう。』



「…さっき、鳩を見かけたんだ。」



『まじか。やばいな、早く帰んないと
他の人たち狩られちゃう。』



よっこいせっと、立ち上がると人の足音が
聞こえたきた。


おそらく、2人かな。



多分、橋の下までは見にこないだろう。

静かにしてればやり過ごせる。


「にしても、金髪よくも逃げ出しだよな。」


「俺らにしてはラッキーだけどな。」



「ははっ、言えてる。このまま殺しても
見つかりませんでした、で済むもんな。」




……あはは、帰りたくなくなってきた。




「凛音?」



『……帰りたく、ないなぁ。』



ボソッと、こぼれた何年間分の拒絶の言葉。




CCGは、暁さんとか政道さん、亜門さんが
いて楽しいけどさ。




やっぱり、少しだけだとしても喰種の血が
通ってる俺は、憎まれる対象であって。




『辛いなぁ……』



「なら、帰らなくても、いいんじゃないかな。」




唐突に言われた1言に、目を見開いた。



研は静かに立ち上がると、俺の手を取って
走り出した。




『ええっ!?研!!』



「静かに!バレちゃうよ!」




研に怒られ、俺は口をつぐんだ。




「凛音さ、たまには反抗してみたら?
苦しそうだよ。」



『!…別に苦しくなんか…』



嘘、本当は苦しい。




CCGにいる時に基本的に向けられる殺意や
恨みの言葉。



たまにある、検査。




全部、苦しくて辛い。





「僕は、まだ君のことをよく知らないけど
少しくらい自由になっても罰は当たらないよ。」




罰は当たらないか………




その言葉に、戻らなきゃっていう気持ちが
薄れる。




『いいかな、反抗しても。』




「大丈夫だよ。」




『そっか。』




研が握ってる手にぎゅっと力を込める。




『反抗、しようかな。』









ごめんなさい、亜門さん、暁さん、政道君
什造、篠原さん、貴将さん。






神鳴凛音、反抗期に入らせてもらいます。









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