涙の池

□夢幻蝶
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「……しろ、真白?」



ゆさゆさと揺すられ意識を夢から現へと
浮上させる少女。



それを揺すりを起こした男がほっとした
顔で見た。



「良かった、うなされていたからつい起こして
しまったけど……体調は?」


『…うん、大丈夫。もうしわけないね、
森医師(せんせい)。』


のそりと医療用ベッドから体を起こした
藍色の髪を持った少女、神崎真白は森鴎外に
微笑みかけた。



「首領も君に無茶をさせるね。ここ数日
休んでないだろう?」


顔色が悪いよ、と真白の白い肌へ指を滑らす森。



『うん、ちょっといそがしいかな。でも、
ねえさんも広津さんもおなじだからわたしも
よわねは、はいてられないの。』


連日の仕事のせいで傷だらけでぼろぼろな
真白は困ったようにそう答え、ベッドから
飛び降りた。



「どこへ行くんだい?まだ大人しくして
ないと駄目だよ!」


慌てて止める森をひらひらりと避け、
ほうこくしょをだしてくるだけ!と叫び
闇の中へ消えていった。




「全く、あの子は……まだ9歳だっていうのに
無理をして。」















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