涙の池

□逆転裁判!
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高級マンション内のある1室。
室内は全てカーテンが閉められ、薄暗い。

そんな室内で、ソファで眠る人物が一人。
スヤスヤと気持ちよさげに眠っていたが、それは電子音によって妨げられることとなる。



ピリリリリ…ピリリリリ…


ピッ
『はい…雛里…』


電子音で起こされた人物ーーー雛里岭は
寝起き特有のかすれた声で相手に答えた。


《ちょっとリョウ?あなたまさか今起きたの?》


『ん…?あー、千尋さんか…そう。』


《また遅くまで仕事?》


『いや…うん、そうかな。この前の事件目撃者のカウセリングして、帰ってきて…本読んでた。』


《本読む前に寝なさいよ。今日は暇?》


『あー、うん。はい、なんも講義入ってない。』


《今からうちに来てくれる?その…
依頼人がすごく取り乱してて…》



『なるほど…了解です、じゃあすぐ行く支度するよ。』


電話を切り、身支度を始めるリョウ。


白衣を羽織り、最低限の荷物をバックに
詰め、メガネと手袋をつける。



『さて、と。行きますか。』



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



場所は変わって、綾里法律事務所。


「うわあああ!!俺、死刑かな!?なぁ
助けてくれよナルホド!!」


「や、ヤハリ…落ち着けって…お前はやってないんだろ?」


「やってないけどよぉ!!向こうが勝ったら
俺有罪だろぉ!?」


(どんだけ僕は信用されてないんだよ!)



この法律事務所に所属する新米弁護士ーー成歩堂龍一は、依頼人である幼馴染みの矢張政志に困っていた。



依頼を受けたものはいいが、この通り死刑だ、有罪だと騒ぎ話どころじゃない。


「ち、千尋さん…!」


助けてくれ、とナルホドが目を向けたのは
上司である綾里千尋。


千尋はニコリと笑うと、

「大丈夫、もうすぐで来るわ。」


と言った。



「来る…?」


誰が、と問う前に若い女の声が事務所に
響いた。



『千尋さーん??』


「リョウ、いらっしゃい。ごめんね急に。」


『いや、これが仕事だから。』


洗われたのはどう見ても20入ってない女子。


「えっと…??」


「あぁ、ナルホドくんは初めてよね。
彼女は雛里岭、この年で犯罪心理学者をやってるわ。」


『どうも、はじめまして。』


頭を下げるリョウに対し、ナルホドも頭を下げ、
自己紹介をする。


「な、成歩堂龍一です。その、よろしくお願いします…?」


『そっちの方が歳上なので敬語とかいいです。
千尋さん、あそこの男の人?』


ふいっとナルホドからすぐに目をそらし、
千尋に仕事を聞くリョウ。



(えっ、対応の差がすごくないか!?)


リョウはそれからすぐにヤハリの傍へ行き、
話を始める。


「ごめんねナルホドくん。あの子、初対面の
人には結構冷たいの。特に、弁護士とか
検事ってなると。」


「けど、千尋さんとは親しそうでしたよ。」


「あぁ、ここまでようやく来たって感じよ。
出会った時は私もあんな感じだったし。」


「はぁ…」


妹を見るような優しい目つきでリョウを
見る千尋と、複雑そうなナルホド。


(…あれ、そういえばヤハリが静かだな。)


先程までうるさかったヤハリが静かに
なっている。


『千尋さん、もう大丈夫。ヤハリさん
落ち着きましたよ。』


「あら、早いわね。」


「こういう人、多いから。殴りかかって
来ないから優しいよ。」


行きましょ、と言われナルホドと千尋が
2人の側へ行くと、ヤハリは泣いていた。


「うぅっ…ありがとなぁ、リョウちゃん…」


『いえ、礼には及びませんよ。』


「こんなに優しいカウンセラー、受けたこと
ねぇよ…!」


『他にもいますって。ただ、あなたは
犯罪を犯すような人物ではないだろうなと思っただけですので。』


そうリョウは言うと、立ち上がった。


「あら、どうかした?」


『いや、この人の裁判今日なんでしょ?
行ければ行きたいなと。』


「珍しいじゃない、依頼のないやつに出るなんて。」

『いや、話なんとなく聞いたから。
それに、千尋さんの部下の初舞台らしいし、面白いものが見れるかなって。』


(それはあれか、僕が負けるってことか。)


『別にあなたが負ける所を見るわけじゃないです。』


「えっ!」


『とにかく、一旦帰りますね。また法廷で。』


「えぇ、ありがとう。」


白衣を翻し、帰っていったリョウを見て
ナルホドはため息を吐いた。


(なんなんだ、あの子は…)










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