文豪の涙

□マフィアの狗
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敦君を探し始めて数十分が経ったが今だ
見つからない。


(どこ行ったのかなー……)



はぁ、とため息をついた瞬間何処かから
誰かの声が聞こえた。


それと同時に、ものすごい血の匂い。



『!?』



急いでその声の元へ向かうと、そこには
血だらけで地面に倒れている潤君とナオミ
ちゃん。

それを見て硬直している敦君と……






ポートマフィアの狗、芥川龍之介がいた。




『あらー……』


来るのが遅かったなぁ……



『と、いうことは……さっきの依頼人は
ポートマフィアの樋口ちゃんか。』



あ〜、なんで早く気づかなかったんだろう……




そぉーっと物陰から事を伺っていたら
突然に黒い獣のようなものがこちらへと
襲いかかってきた。



『っうわ!?』


吃驚して、物陰から飛び出した。
私が立っていた所は抉(えぐ)られたような跡が出来ていた。


背筋に冷たいものが流れ落ちる。




「夕姫さんッ!大丈夫ですか!?」



『あ、うん、大丈夫。』



よく仕事でどっかの人らの恨み買っちゃって
よくやられてるし、慣れてる。


逆に君の方が心配だけどね……



私は倒れている潤君とナオミちゃんの前に
二人を守るように立ち、飄々とした態度の
芥川をちらりと見た。


芥川は、私のことを嬉しそうな目で見ていた。

まるで、大好きなものをみる子供のように。



「夕姫。」



確かめるような声で私の名を呼ぶ芥川。


『久しぶりかな?龍。』


昔からの呼び方で呼ぶと、敦君が驚いたような
表情をした。


まぁ、驚くよね。
今は武装探偵社の専属情報屋だし。



『昔、フリーの情報屋やってた時によく
利用してもらってたんだよ。』


そう言えば納得したように頷いた。



(さて、と。)


まずは倒れてる谷崎兄妹の手当をしないとね。



『色憑き 水ノ色(すいのいろ)』


ぼそりと呟くと、私の髪の色が水色に染まっていく。



これは私の異能の1つ、[色憑き]
色に例えられる力を操れるようになる異能。


今は水色だから、氷を操れる。


私は谷崎兄妹の近くに寄り、怪我をしている
所にそっと触れる。


すると、そこから怪我を覆うように氷が
作られていった。


『よし、こんなものかな。』


怪我を大体覆ったから手を離す。
そして、二人を安全そうな所へ避難させて
寝かせておく。


と、突然大きな絶叫が響いた。

『!?』



驚いて振り返れば敦君の左足が龍の異能
[羅生門]によって黒い獣と化した外套に
喰いちぎられていた。


『!色憑き 黒ノ色!』


今度は水色から黒色に髪の色が変わる。


黒は創造、闇を意味する。


すぐに私は二丁拳銃を創造して、引き金を
引く。



(龍にはこんなの効かないだろうけど。)

私に注意が向けばいい。
そうすれば、敦君が襲われる確率は低くなるはず。


「夕姫、なぜ庇う?」


私からの銃弾を簡単に羅生門で弾きながら
そう問いかけてくる龍。


『いやー、一応武装探偵社の専属情報屋に
なったからね〜。』


だから庇うんだよ、と言って二丁拳銃から
双剣に武器を造り変える。


「僕(やつがれ)は、ずっと探していた。
夕姫とあの人を。」


あの人、ね。


『そっか〜。でも、残念ながら私は龍の
敵なんだよ、ねッ。』


一瞬の隙を突いて、一気に龍の懐に入り込み
肘をくらわせようとした。

が、あえなく失敗。



外套の袖口部分を異能で鞭のようなものに
変えて私の腕に絡めていた。



「ならば、奪い取ってしまおう。探偵社
から。」


そう唐突に言われ、驚いていたらトンっと
首に衝撃。


『っあ……』


一瞬意識が飛びそうになるが、すぐに手に持つ
双剣で手の甲を切って意識を保つ。


けど、体に力が入らずに龍に倒れ込む。












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