文豪の涙

□少年の不安
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*敦side*


僕は夕姫さんと一緒にベンチに座って
話をしていた。


その時、言われた言葉



゙君が居なくなってしまう方が私にとっては
迷惑だ゙


とても強引な言葉だったけど、必要として
くれているように聞こえて。



とても嬉しかった。
今まで僕はこの世界に必要ない存在だと
思っていたから。





『敦君?どうかしたの?』


「あ!なんでもないです!」


『もしかして、僕はこの世界には必要ない存在
とか考えてる?』




「え!?」


『あはは、図星だ。』



この人は人の心が読めるのかな……



思い切って聞いてみることにした。


「夕姫さんは、どうして僕が考えていることが
解るんですか?」


夕姫さんはきょとんとしてから、苦笑した。


『いや、敦君の考えてる事が解るんじゃ
ないよ。だって今君が考えてること解んないもん。』


「え、でもさっき……」


『あぁ、それはね。昔の私が考えてたこと
を云ったんだよ。』


「昔の……?」


『そう。昔の私もね、君と同じような
人間だったの。こんな世界無くなっちゃえって
思った事も何度もあった。』



そう話をする夕姫さんは、とても悲しそうに
笑っていた。





「夕姫さんは、昔……」


何があったんですか、と聞こうとした時だった。



爆音が響き、何かが割る音が耳に届いた。



「『!?』」



音を発したであろう場所にある建物は、
我らが所属探偵事務所だった。




『敦君、行くよ!君の心配が杞憂だって
事を決定づけてくれる事が起きてる!』



夕姫さんが嬉しそうに僕の手を引いて
走り出す。




その時には僕の夕姫さんへの質問はあの硝子が割る音と
共に砕けてしまっていた。









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