番外編

□初デート
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「遊戯!次はあれ!」


まるで子どものようにはしゃぐまどかの姿に、遊戯は苦笑いを浮かべる。


(こんなに楽しそうなまどかは、初めて見るな)


普段は凛として、しっかり者のまどか。
しかし今、自分の目の前にいるまどかは・・・


「遊戯、どうしたの?」

「いや・・・」

「あっ!あっちも楽しそうだなぁ」


笑顔のまどかに釣られるように、遊戯も笑みを浮かべる。


「まどか、次はあれなんてどうだ?」

「え?どれ・・・っ?!」


遊戯の指差す方を見たまどかは、身体を硬直させた。


この園内に似つかわしくない、ホラー感漂うエリア。
入り口には“迷宮のラビリンス〜リビングデッドの呼び声〜”と悍ましく書かれていた。


「あ、あそこに入るの?」

「面白そうだろ?行こうぜ」

「待って!遊戯!」


遊戯の後を追い、まどかも迷宮のラビリンスへと足を踏み入れる。


「真っ暗だな」

「・・・」

「・・・まどか?」

「きゃっ!」


遊戯がまどかの手に触れようとした瞬間、まどかは小さな悲鳴と共に身体をビクリと反応させた。


「び、びっくりした・・・」

「・・・まどか、もしかして怖いのか?」

「うっ!こ、怖くないもん!」


遊戯より先に進もうとしたまどかは、目の前に現れたゾンビに驚き、大きな悲鳴をあげた。


「きゃぁぁぁあ!ゾンビ!!」

「グワァァァァァア!」

「嫌ぁぁぁぁぁぁあ!!」


まどかはゾンビから逃げるように遊戯の背中にピタリと引っ付き、ブルブルと震え出す。
そんなまどかの姿を見た遊戯は口元を緩ませ、小さく笑い出す。


「わ、笑わないでよぉ」


ムッと頬を膨らませるまどかに、遊戯は笑いを堪えるように口元を手の甲で覆う。


「苦手なんだな、お化け屋敷・・・どうして言わなかったんだ?」

「だって・・・」

「まどか、左を見てみろ」

「左?」


まどかは言われるがまま、首を左に向けた。
そこには、生首がずらりと並んでいた。


「きゃぁぁぁぁぁあ!!」


まどかは固く目を閉じ、遊戯の背中に顔を埋める。
そんなまどかとは裏腹に、遊戯は肩を上下に揺らし小さく笑う。


「だから遊戯に内緒にしてたのに・・・絶対、意地悪してくると思ったもん」

「そんなつもりはないぜ?」

「・・・嘘つき。」


よっぽど怖かったのか、涙目になりながら俯くまどかに遊戯は困ったように頬を掻く。
そして遊戯は、まどかに向かって左手を差し出した。


「・・・ん」

「え?」

「手を繋いでいれば、俺と離れる心配はないだろ?」

「う、うん」


まどかは遊戯の左手を握り締めると、上目遣いで遊戯を見つめる。


「絶対、離しちゃ嫌だからね」

「っ!」


今にも泣き出しそうなまどかを見た遊戯の胸は、ドキンと音を奏でる。


(その顔は反則だぜ・・・)


繋いだ手と反対の手で遊戯は顔を覆いながら、遊戯とまどかは先へと進んで行く。

迷宮のラビリンスを出るまでの間、まどかの叫び声は続くのだった。
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