遊戯王DM
□かけがえのない君へ
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先代ファラオ、アクナムカノンが亡くなり、その意志は息子のアテムに引き継がれた・・・
〜特別な人〜
ある日、中庭にいたアテムは金色の腕輪をぼんやりと見つめていた。
アテムが手にしていた金色の腕輪は、父であるアクナムカノンから貰ったものだった。
『お前にとって特別な者が出来た時、この腕輪を渡すのだ』
亡き父である言葉を思い出すアテムだが、自分にとっての特別な人が誰だか分からないでいた。
「ファラオ」
「ーーー・・・マハード」
「どうしたのです?何か考え事でも?」
壁にもたれるように座り込むアテムの前で、マハードは膝を着き様子を伺う。
「父上の言葉の意味が分からないんだ」
「アクナムカノン王の言葉?」
アテムはマハードに金色の腕輪を見せながら、事情を説明する。
するとマハードは、口元に笑みを浮かべる。
「ファラオは気付いておられないのですね」
「・・・?」
(無意識のうちなのか・・・それとも)
ファラオであるアテムと光の姫であるミラが恋仲である事は、この王宮では周知の事実だ。
しかし、アテムとミラが想いを伝え合ったわけではない。
ただ2人にとっては、それが当たり前な事だった。
アテムにはミラが必要で、また、ミラにもアテムが必要で・・・
「マハードにはいるのか?」
「私・・・ですか?」
「ああ!」
アテムはマハードに食い入るように、身体を前のめりにする。
「・・・私にとっての特別な人は、ファラオと姫様です」
「俺と・・・ミラ?」
「もちろん、この国の民も大切です。しかし、私にとってファラオと姫様は何よりも大切な人なのです。この命に代えても守りたいほどに・・・」
「マハード・・・」
「ファラオ、いずれ貴方にも分かる日は来るでしょう。心からそう思える相手・・・それが特別な人だと私は思います」
マハードの言葉にアテムはキラリと光る腕輪を見つめる。
(いつか、俺にも・・・)
「ーーー・・・ひ、姫様!危ないです!」
「「!!」」
少し離れた場所から聞こえるマナの声。
マナはオロオロしながら木を見上げていた。
「あれは、姫様!」
「あんな所で何を!?」
マナの視線を追い、アテムとマハードも木を見上げると、光の姫であるミラが木の枝の上に四つん這いになっていた。
「大丈夫だよ、マナ!」
「大丈夫じゃないです!早く降りて来て下さい!」
「もう・・・マナは段々マハードに似てきたわ」
頬をぷくりと膨らませたミラは、木から降りようと枝に足を掛ける。
すると次の瞬間、ミラが足を置いた木の枝がパキリと折れた。
「危ない!!」
マナの叫び声を聞いたアテムとマハードは直ぐにマナたちの元へと走った。
「ミラ!!」
アテムの言葉も虚しく、ミラはそのまま地面へと身体を打ち付けた。
「ひめさ・・・ま」
マナは目の前で起きた状況にただただ唖然とし、力が抜けたようにその場に座り込む。
「ミラ!しっかりしろ!」
アテムがミラの身体を抱き上げ声をかけるが、意識を失っていたミラは、その声に反応する事はなかった。