番外編
□前夜祭
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海馬コーポレーション主催・KCグランプリ・最強デュエリスト決定トーナメントの前夜祭が行われていたその日の夜、もう1人の遊戯とまどかは同じ部屋で気まずそうに視線を逸らしていた。
〜今だけは〜
それは数時間前の事だった。
遊戯たち一行は、モクバに連れられホテルへと招かれていた。
「大会に参加してくれるお礼だ!好きに使ってくれ」
「おーっ!いいのかよ?!」
「ああ!兄様には内緒だけどな!」
スイートルームに招かれた城之内や本田は子どものようにはしゃぎ、その様子を見ていた杏子や御伽は呆れたように溜め息を吐く。
「素敵ね、ダーリン!」
「そうだね」
「杏子たちは隣りの部屋を使うといいぜ!」
「ありがとう、モクバくん!」
「じゃあ、俺は明日の準備があるから」
「また明日ね!」
部屋を出ようとしたモクバだったが、ふとその足を止める。
「あ、遊戯とまどかには別で部屋を用意しといたぜ?」
「「・・・えっ?!」」
モクバの言葉に遊戯とまどかは目を丸くする。
「ん?だって、付き合ってるなら一緒にいるのが普通じゃないのか?だから俺、城之内や杏子たちとは別に部屋を用意したんだけど・・・」
きょとんとした顔で話すモクバに、遊戯とまどかは顔を真っ赤にさせる。
「ぼ、僕は城之内くんたちと一緒でいいよ!」
「わ、私も杏子ちゃんたちと一緒でいいよ!」
モクバに必死に訴える2人に、にんまりと微笑む本田と御伽が近付き、本田が遊戯、そして御伽がまどかの肩をそれぞれ掴んだ。
「遊戯、せっかくモクバが用意してくれたんだぜ?無駄にしちゃー悪いだろ?」
「そ、それはそうだけど・・・」
「そうだよ、まどかちゃん!ぜひ使わせてもらった方がいい!」
「お、御伽くん・・・」
困ったように顔を見合わせる遊戯とまどかの前に、頬を膨らませたレベッカがやって来る。
「ダーリンと同じ部屋だなんて許せない!ダーリン!もう1人の遊戯と代わって!」
「え、えぇっ?!」
「ダーリンとまどかが同じ部屋なのは絶対ダメ!お願い、ダーリン!」
(いいぞ、レベッカ!)
(ナイス、ベッキー!)
レベッカの後ろでは、本田と御伽がグッと親指を立てていた。
「・・・まどかさん、ごめんね」
「えっ?」
遊戯はもう1人の遊戯と入れ代わる。
「ん?あ、相棒!」
突然代わられた事にもう1人の遊戯が驚いていると、本田と御伽が遊戯とまどかの背中を押す。
「さっ、遊戯!まどかちゃんと隣りの部屋でゆっくりしろ」
「ほ、本田くん?!これは一体どういう事なんだ?」
「気にしない気にしない!」
「あ、そうだ!遊戯、まどか!みんなでトランプでも・・・」
「城之内は黙ってろ!」
「城之内くんは黙ってて!」
「な、何なんだよ!」
本田と御伽に静止をかけられた城之内を横目に、遊戯とまどかは強制的に隣りの部屋へと行かされるのだった。