記念夢小説
□守りたいもの
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「ミラ、行ってくるぜ」
「気をつけてね、アテム」
アテムの右手を両手で優しく握り締めていたミラは、名残惜しそうに手を離した。
〜拐われた光の姫〜
エジプトの地を治める王であるアテム。
神官たちを引き連れ、アテムは街へと向かって馬を走らせる。
「では、光の姫・・・我らは王宮内で待つとしましょう」
「シモン様、アテムたちは大丈夫でしょうか?」
シモンと共に王宮の留守を任されたミラは、心配そうにシモンに問いかける。
「マハードやセトが言ってました・・・最近、街に盗賊が頻繁に出ている、と」
その為、街の警護も踏まえて今日はアテムも向かったのだ。
(アテムは盗賊を捕まえる気満々だったけど)
もし、アテムや神官たちの身に何かあったら・・・と、ミラは不安げにシモンを見つめる。
そんなミラを落ち着かせるように、シモンは優しく微笑んだ。
「なーに、心配はいりませんぞ。きっと皆、無事に帰ってきます・・・姫様はいつものように、皆を信じてあげて下され」
「シモン様・・・はい」
シモンの笑顔に、ミラはようやく安堵の表情を浮かべた。
(どうか、みんなが無事に帰って来ますように)
ミラは心からそう願うのだった。
「あれ?扉が開いてる・・・」
王宮内の一角にある宝物庫の扉が開いているのに気付いたミラは、不思議そうに首を傾げた。
(いつも門番の人がいて、扉も閉まっているのに)
そう思いながら、ミラは宝物庫の中を覗き込んだ。
「・・・っ!?」
中にいたのは、怪しげな3人の男たち。
宝物庫の中を漁り、目ぼしいものは袋に詰めていた。
入り口には、気絶させられたであろう門番が倒れていた。
(まさかこの人たちが、最近出没している盗賊なんじゃ・・・!)
“誰か呼ばないと”と思ったミラは、王宮に戻ろうと踵を返した。
「誰だ?!」
「お前は・・・光の姫!」
「!!」
盗賊に見つかってしまったミラは足を止め、盗賊たちと向き合う。
「貴方たちが最近街を騒がせていた盗賊ね?!」
「ご名答・・・街で盗みを繰り返したのは、ファラオや神官供を街へとおびき寄せる為だったけどな!」
「なんですって?!」
「狙いは初めから、ここのお宝よぉ」
「警備が手薄の王宮に入り込むのは簡単だからなぁ!」
「くっ・・・!」
なんて計画的な奴らなのだろう。
確かに今、アテムと神官たちはここにはいない。
まさか、無防備になった王宮を狙うとは。
「光の姫に見つかったのは誤算だが・・・」
すると、盗賊たちはニヤリと笑った。
「“白い肌”ってのは、いい金になるんだぜぇ?」
「!?」
ミラは逃げようと思い、盗賊たちに背を向けた。
「・・・っ!」
鈍い痛みを感じたと思ったら、段々遠のいていく意識。
(アテ・・・ム)
ミラは、パタリとその場に倒れるのだった。